表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/159

0747

 工場上空 地表高度200m

 YAH-10 "コンストリクター" 攻撃ヘリコプター

 フェイ




 それはまさしく巨人だった。

 地を踏みしめる脚、武器を握る腕、敵を認識する機能は頭部に集約され、バイザータイプの可視光カメラがフェイを見据える。

 砂漠色のそのアサルトギアはコンストリクターを1番の標的としたらしい、左肩に背負った長砲身の大砲はひとまずそのまま、右腕を持ち上げ突きつけてきた。そこにどんな武器があるかはわからなかったものの、咄嗟に操縦桿を押し倒し、ラダーペダルを踏み潰す事で左緊急回避を行い、直後、右のガンポッドが衝撃音を鳴らす。


「パージ!」


 誘爆が始まる前に20mmガトリングガンは機体から切り離され落ちていく。それを目で追う事は許されず、敵機右側面へ回り込む機動で連射から逃れた。


「ヘルファイアダブル!」


「ロンチ!」


 回避機動は継続しつつ、左右ウエポンベイから1発ずつ、計2発のミサイルを反撃に撃ち込む。すぐに2発とも命中し、巨人は爆煙に包まれ、右腕からの射撃も中断。


『やったか!?』


『そういうの言うな!』


『やってない!? やってなくなくない!?』


「だーだー言ってないで効果確認!!」


『はい少々お待ちくださいませ!!!!』


 地上にいるらしいサーティエイトを怒鳴りつけて、フェイは弧を描く左横滑り機動を継続する。ごく一部のバカ騒ぎ集団を除けば攻撃部隊は大混乱だ、予想を上回る敵の出現に作戦司令部は即座に後退を指示、蜘蛛の子を散らすように歩兵が工場を離れていく。急げ急げと総隊長は言い続けており、目を向ける余裕は無いが、工場から見える位置にある陣地も撤収を始めているだろう。


『サーティエイトからフェイへ! 敵機を視認! 損傷度合いは不明ながらとにかく健在! 敵機は健在!』


「チ……」


『コンストリクター、作戦司令部だ、すまないが陸上部隊が後退する時間を稼』


「もうやってるって見てわからんかーーッ!!」


『おぉっ…すま……え…誰……?』


『もう下手なこと言うな! 口調が変わり始めた!』


 機体を傾けて増速、背後へ回り込もうとする。先程のミサイル発射地点から反対側に来たあたりで機首を振り回し、反転と減速を行う。そのうち爆煙は晴れ始め、変わらず突きつけられたままの右腕がまず目に入った。


「畜生!」


 ガァン!という衝撃が機体底部で起こると同時、コンソールパネルの半分から光が消えた。ラダーペダルは完全に応答を失い、操縦桿も右へ動かない。キャノピーの向こうも煙が漂い始め、すぐにエンジンも異音を発する。


「キャノピー開放!」


「はい!」


 スロットルレバーにあった左手を辛うじて生きている火器管制システムへ、2〜3操作を行って操縦桿のトリガーを押し潰せば残りのミサイルがすべて放出された。

 しかし着弾を見届ける時間は無い、古今東西墜落ヘリのお決まり通り高速横回転へ入り始めたコンストリクターはコクピットを覆う樹脂防護板を開けて、強烈な風を招き入れる。大丈夫だ、パラシュートは最初から背負っている。


「脱出!」


「らっしゃーーッ!!」


 シートベルトを外し、最後にコンソールを1発殴りつけ、

 フェイはクーを伴って空中へ身を投げ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ