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0702

 工場西端部

 308部隊"サーティエイト"

 フェルト




『緑のフレアを確認、無差別ジャミングを終了する、が……速すぎないか? 突入部隊は報告しろ』


『作戦司令部! こちらティー中隊レア小隊308部隊! 入ったのは1人だけだ! 残りはまだ外!』


 内部は敵だらけ、という訳ではなかった、工場周辺で行われた一連の戦闘で敵戦力の半分以上を既に下している。これが戦国時代の攻城戦とするなら本丸に乗り込んだ状態だ、抵抗の有無はあれ勝敗は決したと言っていい。

 ただ唯一、工場中央のレーザータレットだけは未だ驚異である、今はジャミングで機能のほとんどを封じているが、最優先で完全停止するべきだ。


『フェルト! 狙うのは発電機だ! 電気が無けりゃレーザー照射器なんてレンズでしかないからな!』


「はいよぉー!」


 弾速が光と同じ、きちんと照準できれば命中率100%、しかし威力が上がれば上がるほど砲単体での機能の完結が難しくなる。すなわち実弾砲なら砲身と薬室と撃発機構さえ残ってればとりあえず射撃が可能なところを、レーザーは外部からの電力供給が途絶えれば砲が無傷でも撃てないのである。だからフェルトが向かうべきは地下、そびえ立つ鉄塔の頂上ではない。


『サイクロプスも叩いておくべきじゃない!? わからないけど! 初対面だからわからないけれど!』


『小隊長! 命令すんだったらもっとズバッと!』


『あぁと……今のうちに残りのロケット弾を撃ち込んできて頂戴!』


 後ろの騒ぎを尻目にフェルトは前進、最も大きな建物を目指す。途中で作業用のユニバーサルドールが慌てて掴んできたらしい鉄パイプを振り回してきたが慌てず斬り刻み、しかし次に出てきたバトルドールはアサルトライフルを携えていたので直進ルートを一度外れた。


『1発目結果! サイクロプス右側面装甲へ着弾! ミサイルランチャーを破壊するもダウンに至らず緊急起動を許す! サーティエイトから全隊へ! サイクロプスが戦闘行動を開始! 現在工場内西部を北へ向かって移動ちゅあ゛ぁぁぁぁぁぁぁっ!!』


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


 なんて、ロケット弾の着弾する音と同時にメルが珍しい焦り声と叫び声を上げ、聞き慣れたレールガンの射出音がすればシオンとレアもそれに続く。作戦司令部の戦闘部隊総隊長が『気が抜けるなあの部隊……』なんて若干感化され出した呟きを残す中、まず被害確認、騒いだ割には特になし。


『いい加減にしやがれ!! 肝臓ってマジで痛いんだからな虫野郎め!!』


『それダムん時の話!? 別作品にゲスト出演した時の話!?』


『両方!!』


 続いて急接近するハイピッチの4脚走行音、こちらも聞き慣れている。咄嗟に振り返り、その際建物壁際のパイプとバルブが目に入った。近くの入口ドアには何も書かれていなかったが、妙に気温が高く、ちょろっと中を覗けば強烈な熱気と鉄の匂いが顔に当たる、内部に鉄鋼材を溶かして加工する炉か何かがあるのだろう。


 かくしてバルブを捻ってみれば天然ガスが吹き出してきた。


「ねぇ! 鋳造設備のひとつくらい爆発しても大丈夫だよねぇ!」


『へ……』


「やるんだったら鍛造だよねぇ!」


『おい待てフェルト! そのセリフは不吉すぎる!』


 サイクロプスの走行音が迫る、フェルトは腰から手榴弾を取り出す。手榴弾といえば普通は破片(フラグ)グレネードを指すものだが、フェルトが所持していたのはほぼ爆圧のみで攻撃するタイプである。破片手榴弾はまたの名を防御手榴弾とも言い、半径数十mに殺傷力のある破片を撒き散らすため、使用者や味方兵士は壁や塹壕など遮蔽物に隠れていなければならない。それじゃ使い勝手が悪いと開発されたのが攻撃手榴弾だ、破片をほぼ飛ばさないので殺傷範囲は10m以下、このような閉所での戦闘では非常に重宝する。


 と、まぁ長ったらしく書いたが、実際問題そんな些細な違いはどうでもいい。


 ぽーい、と、安全ピンの抜かれた手榴弾が空中に放たれた直後、サイクロプスはフェルトの視界に現れた。レールガンの側面には追加装備された重機関銃、機体右側には大きな破口があり対戦車ミサイルの半分を喪失している。逃げる前に撃たれるか、と思ったのだが、その瞬間のフェルトの行動を見て明らかに怯んだ。曲がり角から出てくるや急停止、ずざずざざと後ずさり。

 何考えてんだテメエ気は確かか、みたいな目をされた気もする。


「どわっ!」


 まず手榴弾が爆発、バルブ開けっ放しのパイプから漏れるガスに引火して大きく火炎を上げ、その後噴き出し口付近のみに一時的に収束した。それも束の間、爆圧と熱で破損したパイプは急速に噴射速度を速め、まもなく崩壊、炎はパイプを遡っていく。



 地面が噴火した。



『『だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』』


 いや別にいいだろう、時代はセラミックやレアメタルを使った複合装甲だ、鋼鉄100%なんて時代遅れも甚だしい。だから大丈夫、鋳造施設が一瞬にして地上から消え失せても工場設備の奪取という最終目的は失われていない。

 ずどどどどどどどどどどどど!なんていって地面が割れていく、よっぽど大規模な地下施設があったらしく、地盤沈下が如く崩壊、400mトラックがすっぽり入るくらいの大穴が開いた。


『レアー、シオーン、主に総隊長からあらゆるクレームが来てる。お前らはここを更地にする気か、壊しゃいいって訳じゃねーんだぞ、つーかうるせえ、もっと女性らしく』


『黙りやがれ!! オマエだって銭湯での鼻歌クソうるせえだろバーカ!!』


『常に半音ズレてるのよバーーカ!!』


『おいやめて差し上げろ!!』


 爆音は収まったが通信は未だ騒がしい、シオンとティーと、この一連の作戦ですっかり染まってしまったレアがぎゃあぎゃあやる中、いつのまにか倒れ伏していたフェルトは立ち上がる。1人だけ穴の反対側に孤立してしまったが、まぁいい、サイクロプスは退いた。

 地下への入口も生まれている。


『とにかくフェルト! 目標に変更無し! 発電機を探せ!』

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