0530
工場西2500m 山の中腹
308部隊"サーティエイト"
シオン
突然だが説明しよう、ただの製造工場だと思っていたらサイクロプスが改装を受けに来た。
「最悪の増援だ」
「何着けてる? レールガンの根元にガイドレール?」
「あ、あーっ! あ゛ーっ! あの野郎とうとうやりやがった!」
工場の端、完成品を並べておくスペースを活用しクレーンに吊られた4脚三角錐、作業ロボットに取り囲まれて12.7mm重機関銃を追加装備されつつあった。機体の上側にポン付けしないのはダメージコントロールの関係だろうか、射界が前方30度に限定されるのは相変わらずながら、これで本格的な対人戦闘能力を持つ事になる。1500m先の人間を真っ二つにした実績を持つ12.7mmだ、射界に捉えられた時点で死ぬと思っていい。
今までのような戦い方はこれで不可能となった、奴を視界に入れながら走り回るなどもってのほか、閉所での待ち伏せのみが勝機となる。
「ティー、ティーおい中隊長、撃つなら今だ、対戦車ミサイルをここに」
『工場の迎撃システムが今すぐダウンするなら要請してもいいけど?』
「クソが……」
『いいけどーー?』
「わかったわかった……」
そんな分の悪い勝負はしたくない、サイクロプスは少なくとも今この瞬間には戦闘行動不能な状態にあるのだから、ミサイルなり砲弾なり叩き込んで動き出す前に潰してしまえばいいのだ。が、元々弾数が少ない上、工場の四角い敷地にはそれぞれの隅に監視塔があり、頂上に20mmガトリングガンが配備されていた。CIWSとかバルカンファランクスとか呼ばれる近接防御システムだ、有効射程1.5kmの範囲内に侵入したミサイルをかなりの確率で撃ち落とす。
それだけではない、中央に鎮座するのは戦術レーザータレットである。実弾ではなくレーザーを迎撃に使用し、5kmまでなら命中率100%、恐ろしいことにミサイルどころか砲弾まで迎撃してくる。
あれらを無力化しない限りこちらはあらゆる対装甲兵器を使用できない。
『既に3部隊を展開してる、キミたちが加わればファランクス1基につき1部隊だ』
「小隊集合」
『できれば4基同時、なおかつそれを総攻撃開始の合図にしたい。少ない人数で気付かれずに肉薄するんだ、そう、5人くらいで』
「集合……5人って?」
「説明いりますかね?」
シオンと同じく今の通信を命令と受け取ったレアが9人集めるも、続きを聞いてぽかんとしてしまった彼女を立たせ、他3人にもジェスチャーを出す。
単純な算数である、レア小隊は全13人、そのうちレア派の4人をいちいち反応が面倒臭いという理由でレーダーの防衛に残してきており、この場にいるのは4人ずつの2個分隊と小隊長、4+4+1で9人だ。ここから5人になる組み合わせを考えろ、という話。
「隊長なのに……」
「前線指揮っすよ、そうでなくともあんたのバ火力を後ろに置いとくのは惜しすぎる」
「え、そ、そう?」
「そうそう」
中隊長代理のボロクソぶりの反動か、まんざらでもない顔をするレアをちやほやしてお調子者スイッチONしつつ、4人一斉に初弾装填による金属音を鳴らす。さらにメルがハーフトラックからロケットランチャーを持ち出し、発射器を自分が、予備弾薬をヒナが背負った。
口径83mm、ダムで使ったものより大型で高威力、その代わり重い。緑色の筒にスコープとトリガー、グリップの付く、"バズーカ"の一言で説明可能な外観で、使い捨てにするのは後ろ半分のキャニスター部のみ。射程500m、重たそうにメルの背負う発射器には多目的榴弾が装填済み、軽々と、ただ背中が痛そうなヒナは対戦車HEAT弾2発。
『15分後からほんのちょっとずつジャミングを強めてくよ、最大になるのは今から1時間半後、2時間後に虎の子の攻撃ヘリが現れる』
「それまでにすべての対空兵器を潰せって事だな」
『そう、ジャミングの電力供給もある、正午までに勝敗がつかなければ後退する』
「あいよ」
火力よし、機動力が犠牲になるが、サイクロプスに追われる可能性を考えると仕方ない。
「ちなみに攻撃ヘリとやらは誰の?」
『フェイ』
「……え?」
で
さて行くか、といったところで、ティーから衝撃の事実。
『本部からの推薦』




