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私の妹がこんなに生臭い訳がない

『そうあれ妹、私の』


「うわ生臭そう」


『なんで?』


「魚に喰われた後内側から捌いて脱出したんでしょ?」


『マジか……姉やめようかな……』


 大きめな岩の影に全員隠れて、メルを含む数人が頂上付近を覗いてみる。人類側の呼び名はジャック・ザ・リッパー、正式名はナイトメアと同じくリベレーターだが、型番がちょっと違う、BD-3SR。

 黒衣の短髪少女がミサイルランチャーの前で棒立ちしていた、両手に直刀を引っさげ周囲を警戒中。今のところ一行は見つかっていないものの、仮に見つかれば突進してくると思われる。前回は接近戦、刃物しか持たない相手の得意距離での戦闘だった、銃口の動きを読まれ弾がまったく当たらず、フェルトも拮抗するので手一杯。今回はどうだろう、450mの距離があり、先に相手を発見して、彼女の姉を自称する味方がいる。


『面制圧が一番手っ取り早い、この場に罠を仕掛けて挑発、誘い込んだのちありったけの火力を叩き込む』


「いいのぉ? 妹さん」


『惜しいのなら残骸からメインデータを抜き取って別に移せばいい、我々にとって体なんぞその程度のものなのだ』


 フェルトの問いにはそう返答、どのみちタブレットに押し込まれているナイトメアは何をするにもメルの許可がいるのだが、とりあえずこちらへの協力に抵抗は無いようである。ヒナはジト目だが、まぁそれだけ。


「バトルドール1体にそれだけの弾薬は使えないわ、まだ前哨戦なんだから」


「いやしかし、私らだけじゃたぶん勝てない、素で弾を避けるようなバケモンですよ?」


「停止を勧告できないかしら、姉妹なんでしょ?」


 と、レアがナイトメアに聞いてみる。『まぁやってみるくらいの価値は……』なんて1度は呟くも、その後すぐに言い淀んだ。


『やめておけ、話がこじれる』


「どんな感じに?」


『奴は私の姉妹機ではあるが、私ほどバグってはいない、ほぼ無感情だ。それでもなお私の事は姉と認識している、声をかければ無条件で信用するだろう』


「だったら……」


『まぁ聞け。単独行動が基本の奴にとって信用すべき味方というのは非常に少ない、命令してばかりの管理者を除けばほぼ私のみだったと言っていいだろう。その結果どうなっているか、というと……ちょうどぴったりな単語が人類の言葉にあった、"やんでれ"だ』


 なんか今、突拍子もない言葉が飛び出した気がした。終始じっとりしていたヒナを含む全員が「はぃ…?」などと声を漏らし、そして全員で耳に手を当てタブレットに顔を寄せる。


『特定の相手を妄信し本人の意思を顧みずストーカーしたりスプラッタしたりするクレイジー女を人類はヤンデレと言うのだろう?』


「まぁ……」


『なら奴はヤンデレだ』


「…………仮に、あなたが彼女へ呼びかけたら?」


『姉様だ!→姉様が降伏勧告してる!→姉様が捕らわれて心にもない言葉を言わされてる!→姉様が苦しんでる!→全員皆殺しにして助ける!!』


 ナイトメア、意外と苦労人であったか、ずっと鉱山に引きこもっていたのも今になって考えると理由が曲解されてくる。

 ともかく彼女の説得は望めない、あくまで正面から撃破しなければならないらしい。しかし分隊レベルの戦闘力でジャック・ザ・リッパーを捉えるのはほぼ不可能だ、もっと人数が、増援が。


 と、困り果てたところで通信が入った。


『やはりリッパーか、いつ攻撃する? 私も協働する』


「ティー」


『私が現場に着いたのは3日前! 周辺地形図の差異修正をしている際に奴に出会った。奴は何故だかランチャーの前から動きたくないらしい』


 満を持して現れた中隊長に全員がにまりと笑う。無言のまま全員立ち上がり、フェルトはその場で待機、ヒナは単独で後退、シオンは這うように横移動、メルはシオンを追従。


『なんだこの茶番?』


「私に聞かないで」


 なんか2人言ってるがこっちに聞くなよ、聞かれても困るぞー?

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