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亡霊騒ぎ 転

「地震じゃないよね、ポルターガイスト?」


「こりゃ鍵の前に揺れの原因調査だな」


「えっいやっ……ただの地震よきっと、わざわざ調べる必要なんて……」


「怖いんすか?」


「いやいや怖くは……」


「私は怖いなー! 頼れる誰かに調べて欲しいなー!」


「怖くないなんてすごいなー!」


「え、ま……んもぉーしょうがないわねぇ! だらしない小心者は後ろをついてきなさい!」



 という会話をしたのち、地下まで降りてきた、レア先頭で。



「何コレぇ……なんでこんな雰囲気たっぷりに作ったのぉ……?」


 が、地下室への階段を降り終えた時点で彼女のお調子者スイッチはOFFしてしまった、あまりに様相がテンプレすぎる。

 土台はおそらくコンクリート製なのだが、本当にわざとそれっぽくしたのだろう、通路は石材積み上げ、火を灯せる燭台は数えるほどしか無い。すぐにでも不気味な笑い声が聞こえてきそうなそれにレアはさっそく怯え出し、ランタンを持ったシズの先導に切り替わる。


「あとの2人は…? 連れてこないの…?」


「今のフェルトはちょっとした物音でパニクってこっちを攻撃してくる可能性あり」


「それにレア、あなたは閉所でのスナイパーがどれほど役に立たない存在かを理解していない」


 普通であればただ怯えてるだけのゆるふわ幼女、しかし結構な戦闘力がある。仮にこの狭っ苦しい場所で暴走されたら全滅まで4秒といったところか。ヒナは真逆、スコープずらせば近距離対応可とはいえ長い銃身は屋内で振り回せばガッてなるし連射もできない。そういう時のための装備がサブマシンガンであるものの、射程200mの4.6mm弾を装弾数15は屋内戦闘の必要性能を満たしているとは言えない。なおフェルトも同じサブマシンガンを持っているが、あちらは状況に応じて40発の大型弾倉も使用する。


「……何もいないな、いやいたら困るが」


 その後、シオンがぽつりと呟いたのみでしばらく沈黙が続く。暇なので、ふと思いついてシズの隣に行ってみた。


「城主は不在だとか、でも他の使用人とかは?」


「いません、残っているのは私だけです」


 奥へ奥へと進むシズは淡々とした口調で答える。ただ、少し悲しげな表情になった気がした。


「それと不在、と先程は言いましたが、行方知れずと言った方が正しいかもしれません」


「城主が?」


「不明なのです、テレジア様が今、どこにいるのか」


 出かけた者が帰ってこない、時代が時代なら大事件だったろうが、AI兵器が跋扈するようになってからというもの、そんな話は珍しくもない。死体が見つかればいい方だ、大方の場合、もしかしたら、という僅かな希望だけを残して諦める事になる。


「という事は、つまりその……帰ってくるかもわからない主人のために、ここで? 1人で?」


「わかっています」


 シオンにそう返しながら彼は立ち止まった、この先は突き当たり。


「わかっているのです」


 最奥部はワインセラーになっていた、ヘリコプター1機くらいなら入りそうな大きさの部屋にワインのボトルや樽が所狭しと並べられている。よくわからないがワインとはデリケートな飲み物らしい、温度、湿度はもちろん輸送時の振動、何なら人の声ですら劣化の原因となるらしい。んなバカな、とは思ったが、「嘘じゃないらぁ〜〜」というのがティー(へべれけ)の言い分。


「……何か異常は?」


「特には何も……おっと」


 何かが暴れている訳でもないし、柱が崩れかけている訳でもなかった。しかし揺れは継続している、たくさんのワインボトルが一斉に音を出し、レアの悲鳴が後を追う。一度は収まったものの、間を置かずガシャン、ガシャンと何度も続き、止まりそうにないのでシオンがシズを押し、メルがレアを引いて後退していく。震源は真下のようだ、地下室はまずい。


『シオンちゃん』


「フェルト? 復活したのか?」


『シールドマシンの掘削音、何かがすぐ下で穴を掘ってる』


 たぶんパニック状態に陥りながらゴーグルを着けたのだろう、相手が機械とわかればこっちのものとばかりフェルトの声は澄んでいる。足を早めて階段へ、メルと一緒にライフルを構え、その背後でレアがグレネードランチャーを待機させる。


 中へ入るには正門を通るしかないとさっき言ったが、なるほど、地下からがあったか。


「ぐ……!」


 などと感心している場合ではない、

 上階からヒナとフェルトの足音が聞こえてきた直後、石畳を突き破ってそれは現れた。

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