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終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答  作者: 春ノ嶺
4-フランケンシュタインの怪物に一握の温もりを
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私は人ではありません

「どうやって見つけたの」


「ヒナちゃん余計な疑問持たないで、聞くな、おいバカ、聞くな!」


 分類上は牢屋、という事になるだろうか、入っているのが人間なら。

 ショッピングモールの跡地だ、それぞれの店舗入口に柵が設けられ、キメラと人間が1人ずつ入れられている。メルが停止コードを"生成"している間に監視カメラをじっと見ていたが、閉じ込められている事を異常と判断できていそうな、頭を抱えてすすり泣いているのは1人しかいなかった。物心つく頃にはここにいたのだろう、これ以外の生き方を知らないので、逃げ出す素振りも無い。


「……開けられるとこ、ぜんぶ開けちゃって?」


「あ…うん、じゃあキメラ以外は解放しちゃおう」


 何に怯えているのか知らないが、なんかヒナの口を塞ごうとすったもんだするメルに言う、どうせすぐにすべて開けるのだ、待つ必要もなかろう。既に牢獄の全コントロールは彼女の手中にあり、タブレットを数度タッチすれば電子ロックが解除、柵は横にスライドする、確認をするべくフェルトは管制室を出た。ショッピングモールは2階建て、2階に6人の人間と、1階に7体のキメラがおり、キメラの形状はトラ、イノシシ、サイ、ゴリラ等。管制室は2階の隅、誰にも姿を晒せないというのは、いやもう1人に晒しているが、ともかく彼らにもできれば見られたくないので、避難誘導はメルが掌握したこの牢獄内すべてのディスプレイというディスプレイが行う。


「停止コード生成終わり、今から発信を始める。すぐ騒ぎになるから、排除しないといけないのが集まってくるまでキャンプに一時退避しよう」


「騒ぎになるって何?」


「まぁまぁ、聞けばわかる。いくよ、ベートーベン交響曲第九番第四楽章、"歓喜の歌"」


 発信、といっても電波である、何が起きたか感じる事はできないし、スタートボタンを押した次の瞬間には終わっている。しかしメルのそれはとにかく派手な演出を伴っていた、牢獄中のスピーカーがハイテンポなオーケストラの演奏と合唱をかき鳴らし、ディスプレイにポップな避難指示が躍る。


「ちょ…うるさい…! 何やってんの!」


「騒ぎを起こしてる!」


 ヘッドギアの電源を落とし耳栓代わりにしたくなるほどの大音量だ、このド深夜にこんなコンサートを始められてはたまったものではない、既に周囲の家屋には明かりが灯り出している。眉を寄せて思わずヘッドギアに手を当てるフェルトとヒナを見てメルは満足げに笑みを浮かべ、残ったすべての牢屋を開放、「さあ行こう!」とコンソールを離れた。


 が


「ぁ……」


 トラのキメラが猛然と吹き抜けに飛び出してきたのは直後である、息は荒く、涎を垂れ流している。奴は1階にいるが、2階の進行方向上には突然の出来事に立ち尽くす少年がおり、それを認めた瞬間、フェルトは床を蹴る。


「ア゛ァァァァァァァァァァ!!」


 決して小さくない高低差を跳び越えてきた、目は血走っていて、前しか見ていない。手すりを破壊しつつ2階に着地したソレは少年に襲い掛かろうとするも、それより前に頭と首の間に槍が突き刺さってすべての行動を停止する。

 前回のような無駄な傷は付けなかった、一撃で破壊したのは脳幹だ。生物である以上、ここを失うと瞬時に絶命してしまう。


「何!?」


 電池が切れたが如くピクリとも動かなくなったトラから目を離し、ヒナとメルが慌てて戦闘態勢を取る中、フェルトは腰を抜かす少年へ背を向け額のゴーグルを下げる。

 キメラは残り6体、いずれも同じ様子だ、呻き叫びながら目に入ったものへ手当たり次第に攻撃を加えている、ように見える。吹き抜けを一思いに飛び降りればなにをしているのかわかった、あれは苦しんでいるのだ。


「イダイ! イダイィィィィィィ!」


 考えが浅はか過ぎたかもしれない。

 肉体があれだけの変異を起こしているのだ、苦痛を伴わない訳が無い。それを抑えつけるのもナノマシンの役割だった、それは間違いない、が、鎮痛剤を投与し続けていた訳でもなさそうである。


「モゥ! イ……! ァァァァァァァァ!」


 脳と体を分離していただけだ、操られている間、意識も苦痛もずっとあった筈。


「ゴロジデェェェェェェェェ!」


 思考を切り替える。

 目的を生存から殲滅へ変更する。


『あぁ、あれ外に出しちゃいけないやつだ』


『仕方ない……止めるわよ!』


 槍が起動、キメラへ向け疾駆すれば緑色の残光が引かれ出す。同時に2階からの発砲が始まった、未だ大音量で流れ続ける"歓喜の歌"でかなり阻害されてはいるものの、銃声があたり一帯に撒き散らされる。これで完全試合は不可能となった、が、まだ大丈夫だ、サーティエイトの来訪を知る人間は少ないし、それらはすべてこれから消すべきリストに入っている。完封試合を狙えばいいだけ。


「ア゛ァァ!!」


 フェルトの眼前に躍り出たのは非常に太い前腕を持つゴリラ形状のキメラである、既に右腕を振り上げている。鉄の塊を叩き潰す相手だ、モロに受ければミンチは避けられなかろう。だが、怯まない、怯めない。ここで苦戦などしてみろ、この怪物の有用性を認める事になる。


 できれば1分1秒でも長く生きていて欲しかった、だがそれのすべてをのたうち回るだけに費やすなら、本当に苦痛を増すだけなら。


「アッ……」


 緑の閃光が二度舞えば右腕と首が落ちる、ごしゃりと崩れたそれを視界から外し、突っ込んでくるイノシシへ。

 かなり機敏である、横に走ってもホーミングしてくる。なので止まって、タイミングを見計らい2歩前進、3歩目で跳び上がった。イノシシはフェルトの真下を駆け抜け、回転しながら一閃、鼻面から背中までを裂く。

 その頃にはヒナとメルも3体を撃破していた、残り1体、他とは違って分厚い皮膚を持つサイ形状で、背中に刺さる銃弾をものともしていない。

 だが無関係だ、苦戦できないと言った。


「つあっ!!」


 口を一突き、一切の行動を許さなかった。刃どころか柄の半分までが口内へ消え、トラと同じく脳幹を断つ。地響きを立てて倒れたそれから槍を抜き、ゴーグルを上げ、全体を一瞥する。


「…………」


 残っていない、すべて絶命した。

 ここ以外に残っていても殺さなければならない。


『クリア、撤収する。フェルト』


「ん……」


 であれば。

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