境遇の相似、生存の選択
これが普通なのだとずっと教えられてきた。
レンガや石材を材料に組み上げられた家屋が長い時間をかけて植物に浸食され森の下に埋もれた、そんな村だった。天気が快晴であっても陽の光は届かず、辛うじて空が開けた場所に作った僅かな畑と、命がけで狩ってきた野生動物で生き繋いでいるだけの場所である。死にたくないという願いだけが皆の胸を支配していた、ただそれだけの思いを抱いて生きる日々。
そうまでして生き延びる意味とは何だと何度も浮かび、心底からの恐怖がその都度、問いをかき消していく。
意思を持って生まれたからには何か理由がなければならないのだ、喜ぶために、幸せになるために、いつか同じ目に遭うすべての人々の中から悲しみを消し去るために。でなければ絶望してしまう、諦観が死の恐怖を優ってしまう。
何故だ、と聞いても答えは返ってこない、ソレは殺すことしか知らない、止まることを知らない。何故殺すのか、何故まだ飽き足らないのか、何故止まらないのか、何故、何故、何故…!
ああ、もういい。どうせ答えが出ないのなら、この終わった世界に僅かな意味さえ残っていないなら、ここまででいい、次がなくてもいい。
もうたくさんだ、休ませてくれ。
もう
「終わらせてたまるか!! 目ぇ開けろぉぉ!!」
「っ……?」
真っ黒だった視界が急に開ける、世界が光を取り戻す。
洪水に飲まれた筈だ、土砂に埋まった筈だ、それがどうして、光が見える。
簡単な話だ、掘り起こした物好きがいた。
「何考えてんのかよくわかるぞ!! 今のオマエは昔の私そのものだ!! 始めてもないものを諦めるな!! 無意味なんて言葉を容易く使うな!! 無いなら作れ!! 作れないなら私が作ってやる!!」
「ちょ…バカ! そんな大声出すな!」
銀色の髪の、悲しそうな顔をする少女だった。上に覆い被さり、別の少女の制止を振り切ってなお叫ぶ。
心の底から悲しそうな顔をしていた。今、自分が目覚めなければ彼女も戻ってはこれない、まるでそんな。
こんな顔すらできなくなったのは、いつからだったろう。
「オマエが生きてるだけで救われる奴がいるんだってわかれぇぇぇぇぇぇッ!!」
仕方ない。
そうだ、仕方ないから起きよう。
こんな顔をさせてはいられない。
「ぁ……」
ほんの少し動かしただけで激痛が走る、だが、表情はたちまち塗り変わった。
「来た来た来やがったぞ! 生存0取り消して負傷者1!」
「負傷者はアンタもだよ!!」
騒がしい、すごく。
だが、それでいい、それがいい。
それだけで笑顔になれるなら。
「ありがとう……生きててくれて……」
きっとそれが。