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生き物=ゴハンという短絡思考

『グリムリーパー撃破』


「よーし、ゴライアスもたった今動かなくなった、人形どもはあらかた退いたらしい』


 体高4m、簡単なカメラと12.7mm機関銃、70mmロケット弾ポッドを装備した2脚ロボットである。腕は無く、本体左右に武器を取り付けていて、脚がやたらと長い、というか脚に武器が付いてるといっても問題ない。移動速度は急いでいない自転車程度、火力は高いが目が弱く、後ろからこっそり近付けば一撃で沈む。実際、1発も撃たないままフェルトに両方斬り落とされ、頭にナイフを突き立てれば立ったまま沈黙してしまう。


「中隊長殿、左岸側は片付きましたぞよ」


『うむ苦しゅうない、戻ってくるがよい』


 ゴライアスのカメラからナイフを引き抜きシオンは肩から飛び降りる。フェルトと短くハイタッチ、別行動していたヒナメルにも撤収指示を出す。

 湖の周りはまだ断続的な銃声に包まれている、他の区画から敵が逃げてくる可能性もあるので警戒は解かず、水辺から50m以内の位置まで出て、そこからダムを目指して歩く。


「なんか飛んでるねぇ」


「んー?」


 フェルトがゴーグルを着けた目を上へ向けた、見てみれば確かに湖面30mほどの高さを何かが飛んでいる。クアッドローターの飛行ドローンを大きくしたような機械だ、武器は積んでいないようだが、代わりにカメラをたくさん積んでいる。偵察機だろう、戦域全体を飛び回って情報を集めているのだ。


「おっと…ヒナ先生、湖中央、撃てますか?」


『ちょっと時間かかる』


 今は低空で静止しているものの、そう経たずに飛んでいってしまうと思われる。じゃあ仕方ない自分で撃とう、木の幹に寄りかかりつつ両足で踏ん張って体を固定、落ち着いてゆっくりと照準を合わせ。


「あ」


 そして湖から魚が飛び出してきた。


「『どぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?』」


 30mの位置まで垂直に跳び上がり、それでもなお全身が水中から露出しない魚である。頭部と各種ヒレは濃い茶色、胴体は白地だがウロコの一部だけが茶色いため粒状模様をしている。大きく開いた口にはヒゲがあり、目はつぶら。口が閉じた時には偵察ドローンの姿は空中から消えており、巨大魚も盛大な津波を残して水中へ消えていく。


「マゴイだったねぇ」


「こっ…かっ…鯉!? いやフェルト冷静すぎね!? サイズ見た!?」


「40メートルくらいかなぁー」


「体長40メートルの魚を鯉と呼んでいいのか!?鯉なのかアレは!?」


『いや、いやシオン! 落ち着け! 黙りんさい! アレが何なのかはどうでもいい! 今重要なのは…!』


 あまりに衝撃的すぎて落ち着きを失ったシオンだったが、一足先に冷静になったティーからの割り込みと、来襲した津波によって叫ぶのをやめた。咄嗟に登った木の上で水面近くを泳ぐコイに似た何かを改めて見、そしてシオンもそこで思い立って。


『アレは…美味いのか…?』


 ほんの少し、その場を静寂が包み込んだ。


『ちょっと待って、すごく嫌な予感するんだけどどうやって持ち帰るつもりなの』


 コイといえば鑑賞用のイメージが強いが魚は魚である、普通に食べられる。味噌汁に入れるのが最もポピュラー、臭み抜きをすれば刺身にもなる。ヘリコプター所有者が危惧する中シオンはメルに爆薬所有量を問い、アレをダイナマイト漁するには展開部隊全員のC4が必要と返答される。ならば山分けかと舌打ち、指揮をティーに任せ、とにかくダムまで戻ろうとする。


 が


「シオンちゃん」


「どした?」


「下流の方からクロちゃんの走行音パターンが」


「うげ……」


 クロちゃん、というのはサイクロプスの事だ、ヒナとメルも奴をクロと呼ぶ。愛称を付けねばならない程の腐れ縁なのである、取り逃がす度に学習していった結果なので、初見で倒せなかったせいというか、むしろ逆に奴は私が育てたというか。とにかくフェルトの多機能ゴーグルが4脚走行音を捉えたようだ、路面状況を問わず80km/hで走れる機動力は今のところサイクロプスしか確認されていない、判別はかなり用意だ、ハイピッチでがしょがしょ言うのが聞こえたら奴と認定していい。

 程なくして無線交信も騒がしくなり出す、早足に切り替えてダムまで戻り、コンクリートの巨大な壁から身を乗り出してみる。

 余裕でいた、レールガンを抱いた4脚の三角錐、渓谷左右にある山のうち左側斜面を登ってこちらに来ようとしている。


『フゥーハハハ愚か者め! 最初から居るとわかってれば対策の取りようなぞいくらでもあるわーーっ!! でぇーーい!!』


 とか、しかめっ面でそれを見ていたところ、なんか世紀末の荒野に響く拳法家の笑い声みたいなのがシオンの通信機に届いた。悩みようもなくティーである、何やってんだと思った直後、サイクロプスが走っていた斜面が地崩れを起こす。

 ボボボン!という爆薬の爆発から始まった、地面そのものが滑り落ちるような地崩れだ、咄嗟の姿勢制御により転倒だけは免れたものの谷底まで突き落とされた。続く射撃号令によりシオンとフェルトを含む全員が四方八方から集中射撃を行い、耐えかねたサイクロプスは後退していく。


『そこなロリよ、上流側のレーダー反応を教えておくれ。多い?少ない? ……多い。厳しい話になってきたな…ワンエイティ応答しろ、ワンエイティ……おーい?…クソ……』


「ティー? トラブルですか?」


『右岸側担当の応答が途絶えた、すぐ行って安否を確認してくれ。あんまり期待してないけど』


「死んでた場合は?」


『言うに及ばず』


「了解」


 ちょうどヒナとメルも合流した、予定に無いが仕方ない。

 ダムを突っ切って右岸側へ向かう。

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