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弐 自覚
それから数年がたった。
マリユスの成長は十代中盤から後半で止まっていた。純血の日本人よりは大柄とはいえ、それはあくまでも十代との比較である。
「お前は変わらないな」
薄々自覚していたとはいえ、彼に確信させたのは、久しぶりに会った賢徳のこの一言だった。昔は見下ろしていた相手を見上げることになれば、嫌でも気が付くというものだ。
実は若干気にしていたマリユスだったが、悪意など微塵もない賢徳に対しては、苦笑を返すことが精一杯だった。
彼は両親に相談した。その回答はこうだ。
父曰く、「吸血衝動を起こさないから、完全に人間に生まれたと思っていたのだが、どうやら少なくとも不老不死の力は持っているみたいだな」と。
母曰く、「言われてみれば、幼い頃から病気や怪我の治りが早かったわね」と。
無知な彼は純粋に喜んだ。もう少し成長してからならばより良かったともこぼしたが、些細なことだ。
しかし、彼は直後に一抹の不安を覚えた。昔のままの見た目の父と、四十代のの母が、どこかアンバランスだったからだろう。