0 序話
半年ほど前に書いた未発表の作品を、横書きで読みやすいように調整したものです。
一話当たりの長さはバラバラですが、本編はこの話も含めて全10話となっています。
この序話はあらすじとほぼ同じなので読み飛ばしても問題ないです。
不老不死。
現実においても創作の世界においても、ありとあらゆる人類が追い求めるもの。しかし、本当に死なない事が幸せなのだろうか。そもそも生物とは、「生まれ、成長し、子孫を残し、老い、死んでいく」のが当たり前のことなのだから、そこに真の幸せがあると考えるのは寧ろ自然であるはずである。あるいは感情を持たない原始生物ならば「不老不死」は至高かもしれないが、感情豊かな高等生物である人間が耐えられるとは到底思えない。
東條マリユスは生まれつきの不老不死だった。
何故なら、彼の父親は吸血鬼なのである。母親は純粋な人間であったが、であることは、不老不死(成長はするが老化・寿命は無く、心臓に銀でできた杭か弾丸を撃ち込まれない限り死なないこと)の条件としては充分すぎた。
彼が不幸なのは、不老不死以外は身心共にどこまでも人間であったことだ。
突然こんな話をされて、ファンタジーの世界に放り込まれたような気分の方も多いと思うが、「火のない所に煙は立たぬ」という言葉があるように、妖魔や邪鬼の類は存在しているのである。
絶対数が少ないため知られていないだけで――。