表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/141

08話 繰り返す、至急プランAを発動せよ!


「では、昨日学院の食堂において、無用な諍いを起こした罰ですが――生徒会の仕事を手伝って貰います。いいですねカミラ様」


「あら酷いわユリシーヌ様。私は被害者だと言うのに……」


「どの口が言うのです魔女よ、大方貴女が彼女を挑発した結果ではないのですか」


「まあ残念なことに、私との会話の中でセーラ様の癇に障った言葉でもあったのでしょう。私の不徳の致す所ですわ。甘んじて罰を受け入れましょう」


「顔が笑っていますわよカミラ様。貴女ときたらまったくもう……」


 朝食の後、例によってアメリをセーラに派遣した直後の思わぬ来客を、カミラは喜んで向かい入れていた。


「それで? 何時から、何処で何をすればいいのでしょう? 勿論、生徒会に入っていない私にも、滞りなく手伝える様に、何方かが一緒にいてくれるのですわね」


「……はぁ。ヴァネッサ様からでもお聞きしましたか。ええそうです。今日は私と共に手伝って頂きます」


「ふふっ、嬉しいわ。他ならぬユリシーヌ様とご一緒出来るのですもの。私、頑張りますわ」


「――っ、そう、ですか……」


 先日の出来事など、何も無かったかの如く振る舞うカミラに、ユリシーヌは困惑と安堵を覚えていた。

 男であることがバレた事も、告白された事も、面と向かって今一度蒸し返されたら、どう返事をしていいかわからない。


(ふふっ、苦悩してらっしゃるわね。物憂げに瞳を伏せる美貌の女装少年……いいわぁ)


 ともあれ、このままユリシーヌを堪能していてもいいが、それでは色々と勿体ない。


「それでユリシーヌ様、今日はどの様な事をするのです? 何か特別な準備とかは要りますか?」


「……え、ええ。大丈夫ですわカミラ様。先ずは本校舎の生徒会室に参りましょう。そこで必要な書類を持ったら、各部活動を回ります。もう直ぐ『魔法体育祭』でしょう。部活動参加種目の各種調整が間に合っていないのですわ。それから、余裕があれば備品のチェックも」


 魔法体育祭、それは普通の学園乙女ゲーでの体育祭イベントである。

 魔法が存在するこの世界において、先人達は別段、体育祭と分けて実施する必要がないと考えたのか、ごたまぜである。

 ――結果。体育祭というよりか、何でもありの学院最強決定戦。というイベントになっているのだが。


 閑話休題。


「成る程、ヤりがいがありそうですわね」


 カミラは内心、べろりと舌なめずりした。

 これは公然とユリシーヌと物理的にくっつける大チャンスである。


(そう言えば、魔法体育祭にも色々仕込みはして置いたわね。無駄にならなくてよかったわ)


 無駄になった方が、ユリシーヌやアメリの心身にはいいのだが、そこはそれ。

 もっと言えば、今回の様な事態も想定して、色々とハプニングを起こせる手筈は整えている。

 後はアメリに魔法で念話を送って、人員配置を始めさせれば――。


(アメリ! アメリ! 貴女の敬愛するご主人様のお願いよ、至急! 学内デートラブトラップ計画A案を発動するのよ! 繰り返す――)


「……? どうしましたカミラ様、置いていきますよ?」


「あ、ごめんなさいユリシーヌ様、少し考え事をしていたのよ。すぐ行くわ」

(頼んだわよアメリ!)


 いきなり無茶言わないでください、と帰ってくる念話を無視して、カミラは先を歩くユリシーヌへ走り出しだ。


「ふふっ、ふふふっ……!」


「随分楽しそうですねカミラ様、今度は何を企んでいらっしゃるので?」


「内緒よユリシーヌ・さ・ま! えいっ!」


「カ、カミラ様、近いです、暑いです、くっつかないで下さい」


「いいじゃない偶には、『女』同士の何でもない触れ合いなのに、今まで一回もさせてくれた事ないでしょう?」


 むぎゅっと、胸をユリシーヌの腕に押しつけて歩き、カミラはご満悦である。

 見た目には、美しい少女が二人、戯れながら歩く姿が。

 実際には、女装少年と彼をからかう妖しげな少女の構図が。


「ああっ! これから二人でお仕事なんて……楽しい、愉しいわぁ」


「ぐっ! こういう手で来るのですか貴女は……。やはり魔女という名は貴女にこそ相応しい」


 ――魔女。

 それだけ聞くと、誤解されがちではあるが。

 そ若くして魔法を極めたカミラに、ユリシーヌが送った賞賛の愛称であった。

 今では学院内に、畏怖と災厄の意味で広まっているが。


「ふふっ、ユリシーヌ様は『女の子』ですもの、私の様な魔女で恐縮ですけど、いつか伴侶が出来たときの予行練習ですわ」


「…………本当に貴女はぬけぬけと、減らない口ですわね」


 女装のことを持ち出されては、拒否するわけにもいかず、ユリシーヌは渋々諦め、カミラのなすがままになる。


 ユリシーヌという偽りの姿で、カミラとは仮初めの親友であった。

 出自故に疑われる訳にもいかず、結果として他の生徒から壁を作っていた。

 孤高で誰も触れられない『白銀』、そうでいなければならないし、それでいいと思っていた。

 カミラがその壁を壊すまでは。


「……私達の魔女カミラ。貴女が何故、何時から本当の私を知っていたのかは今は聞きません。あの不可解な魔法の事も。……怒ってますもの、戸惑っていますもの。だから、あの時の返事も返しません。でも――」


 隣にいなければ聞き逃してしまうような小声に、カミラはただ耳を傾けた。


「――貴女には、感謝しているのです」


「では、今までと変わらず、お近くにいても?」


「出会った頃は拒否していたのに、それでも無遠慮に近づいてきたのは貴女でしょう。今更言うまでもないですわ」


 思わぬ言葉に感極まったカミラは、愛を告げようとし、ぐぐっと自重した。

 だが我慢した分、暴走した想いが言葉となって溢れる。



「――では、では。ユリシーヌが花を摘みに行きなさる時も、お召し物を変える時も、就寝なさる時も、側にいていいのですね!」



「貴女はいつも、私との会話の裏でこのような事を考えていたのですか!?」


「恋する乙女と言うものは、そういうモノですわ」


「この世の全ての恋する乙女に謝って下さいッ! 今すぐにッ!」


「あらあら、こんな事も解らないなんて、ユリシーヌ様は本当に『乙女』ですの? これは後でじっくりねっとり調べなければ、ハァハァハァハァ」


 後どころか、今まさにユリシーヌの体をまさぐり始めたカミラに、怒りの拳骨を落とす。


「――ふぎゃっ!」


「この世の『乙女』に代わって天罰です。調子に乗る人とは、もう喋りません」


 つんと、ユリシーヌは可愛いらしくそっぽを向いた。


「もう、ユリシーヌ様っていけずなんだから……」

(この人、本当に男なのかしら? いやいや男よね、服の下は以外と逞し――)


「何か不埒な事を考えましたね、今日はカミラ様一人でお仕事をしたいようで」


 ゴゴゴと怒気を孕ませた言葉に、カミラは反射的に腕を解きビシっと敬礼する。

 無視が一番辛いのだ、狂ってしまう。


「はっ! 申し訳ありませんですわ白銀のユリシーヌ様! このセレンディア家令嬢カミラ、粉骨粉砕の精神で頑張らせて頂きます!」


 なので、カミラはこの後、真面目にお仕事した。


日に日に、読んでくださる方やブックマークしてくれる方が増えています、本当有難う御座います!

評価を下さった方も、有難う御座います!


まだまだ序盤ですが、最後までお付き合いお願いします!


……だから、もっと感想とかポイントとか入れてくれていいのよ?(/ω・\)チラッ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ