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78話 約束された奇跡

話の区切り上、今日はちょっと短めですん。



 その声は届いた。


 確かに届いた。

 届いて、しまった――――。



「カミラ?」



「カミラ様お戻りに…………って、いないじゃないですか? 幻聴ですかユリウス様?」



 東屋修復の手を止め、辺りを険しい顔で見渡し始めたユリウスに、アメリもまた手を止めて怪訝な顔をする。

 だが、直感的に何かを確信したユリウスは、アメリの手を取ってその時を待った。



「うぇっ!? ユリウス様!? わたしはカミラ様ではありませんよ!?」



「――そうか、君には聞こえなかったのか。ならば“これ”のお陰だな」



 静かに落ち着き、カミラ達が去った方向へ顔を向けるユリウスの手元には、胸元から延びた“鎖”が。



「それは確か、カミラ様と魂の契約している魔法ですか? ――――はっ!? 真逆、カミラ様が助けを求めて!?」



 ユリウスが驚く程、正確に事態を把握したアメリの姿に、頼もしさを覚えながら警告する。



「しっかり掴まっていろ。この魔法は恐らく――――空間を飛ぶ」



「はい、カミラ様の下までひとっ飛びという事ですね! 離れた相手を空間転移させるなんて、流石はカミラ様!」



 目をキラキラさせてカミラを褒めたアメリに、ユリウスは苦笑する。

 人間の空間転移。

 言うのは容易いが“現実不可能”とされているモノの一つだ。

 だが――――。



(アイツなら、鼻歌交じりにやってもおかしくはないな…………)



 公表すれば、時代が変わりかねない魔法。

 失敗すれば、命の保証がない魔法。

 それでもユリウスは“必ず成功する”という確信をもって、その時を待った。



「もう一度――――もう一度名前を呼べカミラッ!」



 瞬間、じゃらりと心臓から繋がる“鎖”が実体化したと思うと。

 足下に大きな魔法陣が出現、中身を読みとる間もなく眩く発光する。




『――――助けて、ユリウス!』




 声は届いた。

 確かに届いた。

 ユリウスに助けを求めるカミラの声は、確かにユリウス“達”の耳に届いた。



「今行くぞッ――――」



「このアメリが今お側にっ!」



 ユリウス達が叫んだ刹那、鎖と魔法陣が一際輝いて。

 その姿を消した。

 今この時、ユリウスとアメリは人類史上初、生きた人間の“空間転移”の成功者となったのだ――――!




 本来、カミラが行った“魂の従属”は、極めて科学的な魔法。

 原理は簡単だ、科学の世界では人間は脳から送られる電気信号で動いている。

 それを利用して、ユリウスが“鎖”を通じて送った命令をカミラの脳が解釈、そしてカミラ自身の体と魔力を以て“それ”を遂行。

 というモノである。


 カミラの死がユリウスの死に繋がるのは、それを利用したモノであり。

 勿論の事、輪廻転生とか戯言に過ぎない。


 だがここで幾つかの偶然により、奇跡が起きていた。


 一つは、カミラは語るまでもなくユリウスも、常人からしてみれば、膨大な魔力を有していた事。


 一つは、カミラとユリウスの精神的結びつきが(比重はカミラに偏ってはいるが)非常に深かった事。


 そして、元来“魔法”が使えぬカミラのとある“素質”と、魔法という物理法則に干渉する法則が、複雑に絡み合い。

 生きた人間の“空間転移”を可能としていた――――。



「――――来る」



 全てを理解出来ずとも、自らに起こった事を大まかには把握していたカミラは、確信を以てその時に備える。



「どうしたのだ愛しいカミラ。――はっ! 真逆、余の想いを受け入れ――――」



「ふふっ、寝言は寝てから言いなさい元魔王ドゥーガルド」



 カミラの口調に不穏なモノを感じたガルドは、すぐ様立ち上がって距離を取る。



「――――そなた、何をした? この結界はそうそう破れるものでは無いし、外への連絡も遮断出来ている筈だ」



「ドゥーガルド、貴男は少し思い違いをしている様ね。貴男が考えるより私は――――“魔王”よ」



「魔王?」



 ガルドが詳しい事を聞き出そうとする前に、カミラは右腕を高らかに掲げる。

 その腕には、胸から“鎖”が巻き尽き、その先は虚空へと消えていた。





「来なさいっ! 私の愛しいユリウス――――!」




 言い放つや否や、カミラの鎖の先に、それこそ倉庫外にまで広がる魔法陣が現れる。

 そして――――次の一瞬。


 バチンと音がして、ガルドの結界が無理矢理消失する。


 倉庫が屋根から半壊すると同時に、雷鳴の様な音が辺り一帯に轟く。



 続いて、白い光が天から真っ直ぐ延びて――――。




「――――来たぞカミラ」




「カミラ様のお呼びとあらば、即参上! 世界一の忠信アメリが只今推参致しましたっ!」



 ドゥーガルドが目を見開いて驚愕する中。

 愛おしい恋人と、唯一無二の相棒がカミラの下に駆けつけた。



しばらく、妖怪少女では無く。

カミラ様を更新です!

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