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77話 因果



「面倒いけど因果応報よね、さ、取りあえず役割分担と準備をしましょう」



 作業に入る前の打ち合わせにて、開口一番セーラが仕切った。



「それはいいけれど、セーラが仕切るのですの?」



「というより、こんなのカミラ様が魔法でちゃちゃっと片づけられるんじゃないですか? ね、そうしましょうよカミラ様!」



 アメリの言葉に、カミラもそれもそうだと頷く。

 確かに魔法で元に戻したほうが手っ取り早い。

 何より、空いた時間でユリウスといちゃいちゃ出来るではないか。



「じゃあ――――」



「――――ちょっと待ちなさいよ年齢詐称ババァ」



「失礼なっ! どこからどう見ても十六歳です私は!」



 例によって、常人には困難な魔法の即興作成を始めたカミラに、制止の声がかかる。



「はいはい、十六歳十六歳。アンタの年齢なんてどうでもいいけどねぇ。この東屋修復は罰なのよ? それなのに魔法で一瞬でカタつけたら、罰の意味がないでしょう」



 セーラの呆れた口調の意見に、ユリウスとガルドも同意した。



「……ああ、それもそうだな。お前は何でも魔法やアメリに任せ過ぎている。偶には自分の手でやるのもいいんじゃないか? 俺も一緒に手伝うからさ」



「魔法で修復するのは楽だが、それは生命への冒涜にならないか? 小さきか弱き花々の命とはいえ、命。自ら苦労してこそ、ではないか」



「思った以上に正論ですよカミラ様!? わたしも耳が痛いですっ!」



「…………ぐぅ」



 アメリ以外から集中砲火を浴び、カミラはぐうの音で呻いた。



(でもまぁ、セーラ達の言うとおりかもしれないわね…………)



 今まで幾度、大切なモノを踏みつけにしてきたのだろう。

 それにより、どんな大切なモノを無くしてきたのか。

 全ては遠い時の中、喪った事実すら“無かった事”になったが――――。



(ええ、ええ。……そうね。ふふっ、駄目だわ私、命の大切さなんて、何より私が解っていた筈なのにね)



 カミラはそっと瞼を閉じ深呼吸。

 そしてずばっと目を開けて、アメリに語りかけた。



「因果応報。そして罪には罰を。……皆の言うとおり、自分の手でやらなければ、この代々の生徒が作り上げた庭園を汚した罪は、濯がれないわアメリ」



「――――はい、カミラ様。いつも正しき美しいカミラ様。貴女に着いていくと決めた時から、貴女の罪はわたしの罪。共に罪を濯ぎましょう」



 キラキラとした瞳で見つめ合う主従は、ガバっと抱き合い百合百合しい雰囲気を作り出す。 



「…………ふむ、女同士という光景も麗しいが。いいのかユリウス?」



「時折、俺よりアメリ嬢の方が大切なんじゃないかと思うときがあるが――――アレは飽くまで純粋な主従関係だからな、平気さ」



「本気で言ってる顔ねソレ。アンタもあの女に染まって来たわねぇ…………はい! そこまでっ! 百合ってんじゃないわよアンタら。取りあえず園芸部の倉庫から用具取りに行く人と、東屋自体を修復する人に分かれるわよー」



 セーラの言葉に、カミラ以下が辺りを見渡す。



「成る程、庭園部分は一から手作業で。少し焦げて欠けた東屋は魔法で修理、という訳かしら」



「下は兎も角、上物の大部分が土魔法で建築されてる筈だから、魔法を使うしかない。……という事でいいかセーラ嬢?」



「ま、そんなとこね」



 何をするか解った所で、ガルドが次へ進める。



「ならば次は班分けか。何か考えがあるのかセーラ。余は土いじりがしたいぞ!」



「はいはい、ならアンタと、元凶の一人のカミラは土いじり班ね。園芸部のアタシもそっちに行くわ」



「という事は、わたしとユリウス様は建物の修復ですかね」



「皆、異存は無いな? では取りかかろう」



 即座に東屋の被害箇所を調べ始めたユリウス、アメリのペアを横目に。

 残る三人は、園芸部の倉庫へ道具を取りに行く事となった。

 その道すがらカミラは、素朴な疑問をセーラへぶつける。



「しかしまた、何で園芸部なんて入ってるの? 貴女って土いじりするキャラじゃないでしょう?」



「キャラじゃないって……、相変わらずはっきり言うわねアンタ」



「あ、それは余も気になった。存分に話すがよい」



「ガルド、アンタもアンタで。クラスにとけ込みたいならそのデカい態度止めなさいよ。まぁいいわ。理由なんてだいたいカミラの想像通りよ」



 セーラが園芸部にいる理由。

 それは原作セーラが、園芸部に所属していた――なんという事実は無い。



「どうせ、花を育てる姿を見せて、男子へのアピールしてただけでしょ」



「それだけじゃ、理由の“半分”って所ね」



 半分。

 その響きに、哀愁が漂っていた事をカミラもガルドも見逃さなかった。

 だが二人の内、セーラという存在を正しく理解しているカミラだけが、皮肉気に突き放す。



「――覚えのない追憶は楽しい?」



「ちぇっ、やっぱ“そう”なんだ。ムカつくわ、ワザワザ教えてくれるアンタも、世界樹とやらも」



「……む? 二人とも何を言っているのだ? 余にも解るように話せ」



 首を傾げるドゥーガルドに、カミラとセーラは顔を見合わせてくすくすと笑った。



「貴男の力をもってして、解らないのであれば。そのままでいいわ。――だってこれはセーラの問題だもの」



「ま、そうね。もしアンタが――――いや、やっぱ何でもないわ」



「ふぅむ。そなたらがそう言うなら、気にはしないが…………」



 腑に落ちなさそうな表情をするガルドを横目に、カミラはセーラの違和感に感づいていた。



(珍しく言い淀んだわね。いったい何を――――?)



 それは強いて言うなら乙女の感というやつだったが、それを突き詰めて考える前に、園芸部の倉庫へたどり着いてしまう。



「お、鍵は開いてるのか。少々不用心ではないか?」



「馬鹿ね、前もって開けておいて貰ったに決まってるでしょ。必要なのは大きなシャベルと軍手、その辺にあるから勝手に探していいわよ」



 ガルドに続いて、暗くてかび臭い倉庫の中に入りながらカミラはセーラに質問した。



「花の種や肥料はどうするの? というか仮にも園芸部員というなら、貴女が場所を教えなさいよ」



「こっちは被害者、アンタらは加害者。探すのもそっち主導でやって。それに耕運機みたいなモンでも無い限り、今日中にはそこまで行かないわよ。――――さあ“しっかり”ね」



「ああ、余に期待しておけ」



 カミラがセーラの様子を問いつめる前に、瞬間、キィと扉が閉められ、ガチャンと施錠される。

 そして止めとばかりに、無詠唱魔法で結界までが。

 園芸部倉庫は今、完全に密室となった。



(――――しまった! 完全に閉じこめられた!?)



 その事実を認識すると、カミラは目の前のガルドから距離を取ろうと――――。



「――――逃がさないぞ、愛しいカミラ」



「くっ、この手を離しなさいドゥーガルド・アーオン!」



 だが、振り向いたガルドによって、その手をがっちり捕まれて動けない。



(いったい目的は何? 倉庫ごと結界を強引に破壊して――、ああ駄目よ。外にいるセーラまで巻き込みかねない)



 事態打開の手段を模索するカミラを前に、ガルドはすぐさま目的を話し始めた。



「こういった手を使ってすまないカミラ。だがそうでもないと、そなたと二人きりになれなかったのでな」



「……すまない、と言う割にはちっとも謝罪の気持ちが伝わってこないけれど? それに、私は貴男と密室で二人になる趣味はありません。今すぐに解放なさい」



 怒気すら孕むカミラの言葉を、ガルドはそよ風を受けた様に流す。



「つれないことを言うな、愛おしいカミラよ。余の用件は一つ。それが聞き入れられたら解放しよう」



「まず手を離して。そしたら話だけは聞くわ」



「うむ、まずはそれでよい」



 あっけなく手を離したガルドの様子に、カミラは酷く警戒しながら、いつでも動けるように魔力を練り始め――――。




「単刀直入に言う、――――余の伴侶となれ」




「………………………………は?」




 言葉の意味が理解できずに、全ての行動が停止する。



(は? へ? 今、この男はなんて言ったの? は、は、はん、りょ? は、んりょって何だったかしら?)



 真逆、真逆、真逆そんな。

 あの時言った言葉は、本気だったというのだろうか?

 混乱するカミラに、艶っぽく笑ったガルドはその場で膝をつき、カミラの右手を優しく取る。



「ずっと、ずっとそなたを見てきたのだ……。どうか余の愛を受け入れて欲しい――――」



 そして、その右手に軽い口付けを落とす。



(うええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!? どうしろって言うのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 助けてユリウスううううううううううううううううううううううううううううううううううう!)



 カミラはガルドの唇の感触に、寒気を走らせながら必死に断りの言葉を考えた。



明日、明後日は数日前に言ってた例の作品を投稿予定です。

なのでこの続きは土曜日ですん


※7/15(土曜日)追記

誠に申し訳ありませんが、カミラ様が、用意した次話プロットに不満足なようなので。

次話は少々お待ち下さい。

楽しみに待ってる方は

リアルの都合上、早ければ日曜、遅くとも水曜夜とみてください。


では、カミラ様万歳!

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