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67話 カミラ様もユリウスもラブラブしたい!

あ、投稿時間が実験的に、一週間ほど不規則になります。



 ――――教室は、シュガー地獄絵図だった。


「うふふっ、ユ・リ・ウ・ス」


「何だいカ・ミ・ラ」


「読んでみた、だ~けっ!」


「お茶目だなお前は、このぅ」


 あはは、うふふ、あはは、うふふ。

 始業前の教室に、ユリウスとカミラ甘ったるい会話が響きわたる。

 その光景に、クラスメイトでもあるアメリとセーラ、以下の生徒達は口から砂糖がドバドバものだ。



「ああああああああああああああああああああああっ! もうっ! いい加減にしてくださいカミラ様! ユリウス様!」



「あらアメリ、どうしたの? そんな大声をだして、はしたないわ」


「うん、何か悩みでもあるのか? アメリ嬢」


 アメリ達の様子など、気にも止めてなかった二人は仲良く首を傾げる。

 なお今は、ユリウスの膝の上に、カミラがごろにゃんと横抱きに座っている状態であり、それだけでもう甘ったるい。

 ――だが、物事には限度と言うものがあるのだ。



「いいですかっ! お二人とも! ようやくまともに結ばれたお二人ですっ! わたしだって祝福してますっ!」



「ふふっ、あらためて言われると照れくさいわね…………ありがとう、アメリ」


「君にはいつも、助けられていた気がする。ありがとうアメリ嬢」


「あ、はい。いやぁ、そう言われるとこっちも照れちゃいますねぇ…………っじゃ! なああああああああああああああああああい!」


 全クラスメイトの無言の総意を受け、アメリは立ち向かう。

 この、バカップルに立ち向かうのだ! 



「ユリシーヌ様が、ユリウス様になったので、カミラ様のいるウチのクラスに来たことは、まだいいですっ!」



「ああ、受け入れてくれたのは感謝につきないよ」



「だから、ちっがーーーーーーうっ!」



 くっついてから、とんと察しの悪くなった二人に、アメリは叫ぶ。

 頑張れアメリ、全クラスメイトどころか、実は全生徒の総意なのだ。



「今日は一段とうるさいわね、貴女。何か悪いものでも拾い食いでもした?」



「今まで一度もした事ないじゃないですか! この色惚けカミラ様っ! わたしが言いたいのはですねっ!」



「わかったわっ! お腹が空いたのねっ! それなら今、おやつでも――――」



「だから違いますううううううううううううううう! そいやっ!」



「あいたっ!?」



「何故俺までッ!?」



 ガサゴソとスカートのポケットを探るカミラに、アメリはハリセンを虚空から魔法で呼び出し一線。

 ついでにユリウスの頭まではたいたのはご愛敬である。



「あれから半月ですよっ! 最初の一週間は多めにみましたけど、そろそろ教室内でラブラブするのは止めてくださいっ! 定期試験も近いんですからっ! はっきり言って――――」




「――――迷 惑 で す !」




「なっ…………!?」


「馬鹿、なッ――――!?」


 ぴしゃりと言い切ったアメリに賞賛の拍手が送られ、ユリウスとカミラは雷鳴に打たれたかの如く硬直する。



「あえて言いましょう――――カミラ様、貴女には失望しました」



「アメリっ!? そ、そんなっ!? ――――――はうん」



 指さすアメリに、カミラはよろよろとユリウスの膝から降り、ガクッと倒れ伏す。



「か、カミラッ! しっかりしろッ! 傷は深いぞッ!」



「ゆ、ユリウス…………、わたしはもう駄目よ…………、アメリに失望……、失望…………はうん」



「カミラああああああああああああああッ!」



 アメリに失望されたショックは、存外に大きい。

 致命傷の一撃に死にかけるカミラを、必死に抱きしめるユリウス。

 だが、そんなユリウスにもアメリの口撃が飛ぶ。



「はいそこふざけないーー。そしてユリウス様にも、ゼロス殿下からお言葉を預かっておりまーーす!」



「ハァッ! ゼロス殿下からッ!?」



 驚くユリウスに、アメリは低い声でゼロスの声真似をし告げる。




「――――避妊はするんだぞ、ユリウス」



「ガハァッ――――――! ま、まだ俺は……

……がくぅ」



 想定すらしていなかった言葉に、ユリウスも倒れ伏す。

 余談だが、ユリウスはまだ清い体であった、このヘタレが。



「そろそろお二人とも、真人間に戻ってしゃんとするべきですっ! それに今日は新しい担任教師と転校生が来るんですよっ! せめて外面だけは整えてくださいバカップル」



「うぐぅ。仕方ないわね……」

「面目ない…………確かに、キチンとすべきだな」



 顔を見合わせて、名残惜しそうにたった一歩の距離を取る二人に、アメリは取りあえずはこんなもの、とため息。

 そんな彼女に、お疲れさまとセーラが声をかける。


「んでアメリぃー、別に新しい担任と生徒が来るだけっしょ? 確かにコイツらのバカップルぶりはうざかったけど、今すぐ説教する程だった?」


 その疑問には、他のクラスメイトも同意する様な視線をアメリに投げる。


 前の担任教師は、セーラの起こした数々の騒動に胃痛を発病、病院送りになった先で医者と結婚退職した。

 替わりの担任も、そこそこの地位で教員免許を持つ貴族。


 転入生というのも、他の校からやってきた親が中レベルの富豪の令息。

 何か騒ぎ立てる程でも、取り繕う程の事でもない。


「ちっちっちっ……甘いですね皆さん」


「何よ、ニヤニヤ笑っちゃって、どうせ直ぐ解るんだから言っちゃいなさい」


 アメリは、こほんと前置きして端的に。



「――――新しい担任はイケメンで、転校生は美少年です」



 瞬間、クラスの女子が色めきだち、男子の殆どががっくり項垂れた。

 ざわめく生徒達を余所に、セーラは闘志に燃え上がる。



「成る程! アタシのイケメンハーレム再びっ!」



「貴女がそうだから、止めるためにカミラ様達の復帰が必要なんでしょーーがっ! ちっとは自重しなさいっ!」



「ふんっ! このアタシ、セーラ様! 妙な力で男を誑かす事はもうしないがっ! 男にコナかけないとは言ってない!」



「結果的に男で痛い目みたのに、まだ懲りないんですかバカ女!」



「あ、ひどいしアメリ!」



 ぐぅ、と躊躇いを見せたセーラに、アメリは追撃を放つ。



「知ってますよぉ……貴女今、校内で怪しい集まり作って活動してるでしょう……、特に怪しい動きはしてないみたいですけど、今度、殿下にかけあっって査問にかけちゃいますよぉ…………」



「ま、待って! お慈悲! お慈悲をアメリ様!」



「うわっ! こらっ! 縋りついかないでください暑苦しい鬱陶しい!」



「アンタが、諦めるまで! アタシは! 諦めない!」


 顔を青くしながら、セーラは長い赤毛をアメリの全身に絡ませる勢いで、アメリの我が儘な胸へダイブ。

 話の内容は兎も角、麗しい美少女二人の姿に、一部の男子生徒の熱い拍手が送られた。


「あっ、こらっ! 拍手したの誰ですかっ! 後でカミラ様にお仕置きしてもらいますよ!」


「ふははは! お前等もっと見たいなら、惜しみない声援を送るのだ!」


「ちょっ! 何で拍手が大きくなっているんですかっ! ――――ええい、そこの男子共に誰か成敗を!」


 良いとこのボンボンの癖に礼儀も忘れ、鼻の下をのばした一部の男子生徒に、女子達の鉄槌が下され。

 セーラを足蹴に、拘束を解いたアメリも加わる。


「あいたたたたぁ…………ふっ、あんまりイケメンじゃない男子生徒よ、君たちのお陰でアタシ達の活動は守られた…………」


 セーラの言う活動、それは所謂一つの。


 ――――BLサークル


 であった。

 カミラ達の色惚けを良いことに、地道に布教を続け、今ではそれなりの数の参加者がいる。


(ふははははは! このままで行けば、そう遠くない未来に即売会だって――――)


 セーラが文字通り薔薇色の未来に、想いを馳せていた時――――。



 ――――プァアアアアアアアアアアアン。


 と、管楽器のけたたましい音が鳴り響いた。


「うわぁっ! 何事です!」


「へ、ラッパ? 誰よこんな始業前に…………怒られてもしらないわよ?」


 等と、クラス全員が手を取め、幾人かが発生源を確かめようと、廊下へ繋がるドアを開けようと――――。



「――――ま、待つんだッ! 開けるんじゃないッ!」



 ユリウスの大声が教室に響いた。

 側にいたカミラは、急に冷や汗を流し始めたユリウスに首を傾げる。


「あら、どうしたのユリウス?」


 だがユリウスは、真逆、聞いていない、と繰り返すばかりで答えない。

 そればかりか、カミラの手を取り――――。


「逃げるぞカミ――――」


 だが、時は既に遅し。

 全てを言い切る前に、勢いよく教室の扉が開かれ。

 一人の男が姿を現した。




「――――我が愛しい妹、もとい弟よッ! 新しく担任はこの大天才考古学者のエドガー・エインズワースの俺が来たッ!」




「何でいるんだよお兄様ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 久しぶりに女口調の戻ったユリウスの叫び声が、教室どころか、校舎の隅々まで伝わった。



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いつものカミラ様です。

新キャラも交えてお楽しみください!

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