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55話 あ、忘れてましたけど結構重要な日常回です

今日は早めに出来ていたので、早めに投稿ですトゾー。



「あいたたたた…………」


 カミラは頭上を右手で押さえながら、現状把握を急いだ。

 まず左手は、ユリシーヌと手錠で繋がっている。


「やはり――――愛、ね!」


「どっからその結論だした馬鹿カミラッ!?」


 カミラと違い、でも同じく手を顔に持って行くユリシーヌ。


(あらあら、そんなに眉間をぐりぐりして、何か悩みでも抱えているのかしら?)


 見事な棚上げをしながら、続いてサロンを見渡す。

 ええー、と難しい顔をして立ち尽くすアメリと。 

 呆れた表情のセーラ。

 これは即ち――――。


「――――、そう。……裏切ったのねアメリ」


 先ほどはすわ反抗期だと思ったが、まさか裏切っていたとは非常に残念である。

 他人から見れば、残念でもないし当然の事だが、カミラ様ルールでは完全にアウト。


「これは、お仕置き…………いえ、アメリは悪くないわ、きっと私が悪いのだから……」


「カミラ様…………、わかってくれたんですねっ!」


「…………いや、本当にわかっているか? この馬鹿女」


 感動して喜び近づくアメリに、カミラの言動は明後日の方向へ向かう。


「ええ、良く解ったわ。アメリ……私が不甲斐ない所為で……」


「カミラ様……!」


「もう安心してアメリ…………、貴女をセーラの魔の手から救ってみせる!」


「解っていないじゃないですかカミラ様っ! って!? え、ええ!? なに腕掴んでるんですか? 放して下さい!?」


「ごめんなさいアメリ……、そんなに人肌に飢えていたなんて……、よりにもよってセーラに食べられて、体も心も籠絡されてしまうなんて……ううっ……私は自分が情けないっ!」


「的外れにも程がありますよカミラ様! いやいやいやいやいや!? その手は何ですか!? お尻揉まないでください――――っていうか見てないで助けろや糞童貞女装男! ヘタレーヌ様の女でしょうコイツ!?」


「だれが糞童貞だヘタレだッ!? カミラもいい加減にしろッ! 手錠で俺も繋がっているんだから後にしろ後にッ!」


「後で一人とか、それ本格的にヤバイやつじゃないですかっ!? ――こうなったら逃がしませんよヘタレーヌ様!」




「大丈夫よ、あの女に何をされたか解らないけど、男と女、二人同時は初めてだけど、――――どろどろのぐちゃぐちゃになるまで、可愛がってあ・げ・る」




 その慈愛で澱み過ぎて、澄み切った瞳に二人は戦慄した。


「助けろセーラッ! こいつ目がマジだッ!」


「元はと言えば、あんたの入れ知恵じゃないですかっ!? お腹抱えて笑ってないで助けろマジでっ!」


「ふはははははははっ、ひひひひひひひっ! あははははははっ! ほっ、程々にしとき……くくっ、くすくすくすっ……、しときなさい若作り婆ァ」


 笑いすぎて涙まで出てきたセーラに、カミラは胸を張る。



「大丈夫、私は貴女に教えて貰ったわ――――同性なら浮気はセーフ。さあいらっしゃい、四人で愉しみましょうか?」



 その言葉に、セーラの笑いがピタっと止まる。


「――マジか」


「ええ、マジよマジ」


 セーラとカミラの視線が真っ直ぐに交わり、セーラは少し考えた。

 この中で唯一カミラの事情を把握している故に、言葉の真意を読みとり、その顔が驚愕に満ちる。


「…………もっかい聞くけど、マジ?」


「ええ、だって貴女から誘ってきたじゃない?」


「マジか……、マジかー。……ああ、うん。ごめん二人とも、アタシは助けられないわ」


「良く解らないけど諦めないでよセーラっ!」


「くそッ! 何となく解ったぞッ! カミラがこんなんなのはお前の責任だろう多分ッ!」


「ふふっ、セーラ様を責めないの二人とも。私はただ、教えて貰っただけだから――愛し方というのを」


 見事な責任転嫁である。

 実際のところは、馬鹿に刃物を与えてしまったレベルなので、セーラに責任は…………やっぱり責任問題だ。


 かつての宿敵を自分が育ててしまった事実に気づいたセーラは、アメリをカミラから解放すると。

 ユリシーヌを引き連れたまま、大急ぎで部屋の隅に向かう。


「ヘタレーヌ、ちょっと耳塞ぐわね」


「おいッ!? 何を言う気だ――――むぐっ!? むぐぐぐぐぐッ!?」


 セーラはユリシーヌの耳を両手で塞ぐと、そのまま顔をカミラの胸に押しつけ口も塞ぐ。

 これで聞かれる心配もないし、男の夢に埋もれているのだ、文句もないだろう。


「――きゃん。もうユリシーヌ様ったら、生憎とまだ出せませんが、あとで思う存分、沢山吸わせてあげますから」


「いや、そういうの良いから精神年齢糞ババア。アタシとアンタについて、ちょっと話しなさい」


「あら、アメリに聞かせられない話?」


「もうちょっと、配慮してあげなさいよ。自分の主人がバイで、自分も狙われてるとか悪夢でしょう!?」


「大丈夫よ。私は美しいし、あの子をそっちに目覚めさせればいいから」


「最悪だコイツ…………」


 カミラとしては冗談だったのだが、真に受けたセーラはげっそりと頬をこけさせる。


「あー、もう……。アメリは兎も角、“何回目”でどんな時に“そう”なったのよ?」


「あら、あっさり見捨てるのね。ゲームでは唯一無二の大親友だったのに」


「ここは思い通りにいかない現実だって、突きつけたのはアンタだし、今のあの子はアンタのモノでしょう――それより、はよ、はよ」


 急かすセーラに、カミラは遠い記憶を手繰り寄せながら答えた。


「ええっと…………あれは確か…………まだ初期の頃で、私が貴女の取り巻きしてた頃ね」


「……アンタがアタシの取り巻き!? うっそぉ……、想像付かないわ」


「あの頃の私は、まだ未熟だったわ…………懐かしい……」


「いや、懐かしがってないで続き話せ」


「せっかちね……ま、いいわ。別にそう特殊な話でもないわよ? 貴女にも心当たりあるでしょう? 自分がGLもイケる人間だって」


「確かに美味しく食べられるけど、あくまでそれは二次元の話で……」


「私に完全敗北するまで、自分の事を主人公と言っていた貴女が? それによく考えてもみなさい、その時の私は貴女の下についていたのよ。しかも心酔してた。現実とゲームの認識がごっちゃになっている状態で、貴女、自分を慕う子に遊び半分で手を出さないと思える?」


「……………………………………あー」


 気まずそうな顔をしたセーラは、カタコトで確認を取る。


「……アタシ、オマエ、マルゴトイタダキ?」


「付け加えるなら、○○○○ではなくて、更に○○、そして――――」


「わかった! わかったから、もうやめろください!」


 あがー、とユリシーヌより見事な失意体前屈をし始めたセーラに、カミラが無慈悲な止め。


「私、初めてよ? 二次元的嗜好を、三次元にこうも見事に押しつけたの」


「くううううううううう、いっそ殺せえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」


「自業自得なのだろうが…………哀れな」


 セーラの束縛が無くなっても、実は暫くカミラの胸の中から動けなかったスケベ童貞は、無自覚にも埋まったままセーラを哀れみ。

 そしてその姿を、アメリに哀れまれていた。


「ユリシーヌ様……お可愛そうに……、カミラ様に目を付けられたばっかりに、ご自分の置かれた状況も理解できなくなるなんて…………なんて哀れなのでしょう……」


 静かになったサロンに、カミラは困惑の声を漏らす。


「これは…………いったい?」


 セーラが沈黙し、アメリも何故かユリシーヌを憐れみの目で見ている。

 愛しいユリシーヌと言えば、彼もまたセーラを哀れんでいる――――カミラの胸をクッションにしながら。


「――――はっ!? つまり、私の勝利ねっ!」


 非情に残念ではあるが、正にその通り。

 だがカミラはまだ知らない……、手首の手錠の意味を。

 自らを待ち受ける“災難”を――――!



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