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50話 マジ負けないで糞童貞女装少年ユリウス!

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あ、BLネタ注意です。

そっちの趣味の方、笑って流してください。

この話はフィクションでファンタジーです。

また、乏しめる意図もありません。



「――ふっ、あの変な仮面のコンビ。順当に勝ち残っているわね」


「ああ、もし彼らと当たるとしたら決勝か、油断するんじゃないぞカミラ」


 ユリウスとカミラは今、出場者用の観客席で今大会随一のダークホースの戦いを見ていた。


 タッグトーナメントも終盤。

 順調に勝ち進んだ二人は、後は決勝を残すのみ。

 現在見ているのは準決勝で、それが終われば出番である。


 何食わぬ顔をしている二人だが。

 カミラはアメリに三十分以上、本気で説教され凹み中。

 ユリウスは一言、玉無し糞童貞と冷たすぎる目で蔑まれ致命傷を負った。


 故に二人は、先ほどの痴態には何も触れず。

 決戦相手候補の分析をしていた。


「しかし、ハナーコ&ゴンーベーだったか。随分変な名前だな。響きからして極東の島国という噂があるが、カミラはどう思う?」


「…………十中八九、偽名でしょうね。そういう名前にして攪乱を狙っている、と見るべきだわ」 


「“攪乱”? 何のために……」


 ユリウスの疑問に、カミラは口を噤んだ。

 それは、あまりにも不確定だったからだ。


(原作では、聖女であるセーラを狙って魔族がトーナメントに紛れ込み、決戦で本性を現す。これがセーラが聖女である、と世に知らしめるイベントであり。好感度が高いキャラのルートに入る切っ掛けでもあるわ)


 しかしゲームの詳しい知識など、ユリウスの事以外は遠い記憶の彼方だ。

 正直、原作にいたからと断言されると、信じてしまいそうなくらい“あやふや”である。


「…………私から言えるのは一つだけ」


「何だ?」


「“聖剣”を手放さないで、必要になるかもしれない」


「聖剣がッ!? どういう事だカミラ!? お前は何を知っているんだ……」


 ユリウスの鋭い視線に、カミラは困ったように微笑んだ。

 本当に解らないのだ。


 原作では、魔王の指示により引き起こされるイベント。

 しかし、その前魔王はカミラによって殺され。

 肝心のセーラも、幽閉されている。


 カミラとて全知全能ではない。

 セーラが魔族と繋がりを持ってしまった事を、知る由がないので“解らない”と言う他無いのだ。


「私にだって、解らないことはあるわ。それより――――」


 彼らの戦い方を分析し対策を、と続けようとした所。

 二人っきりの観戦室に、アメリが入ってきた。


「お二人とも、ちょっと。…………ふんふん、何もやましい事はしてませんね?」


 入るなり、カミラとユリウスの匂いを嗅ぎ始めたアメリに、二人は気まずい顔をする。


「アメリ……。その、さっきは全面的に私が悪かったから、やめて頂戴、うう……」


「今度から直ぐに逃げるから、ええ、頼むからそんな、面倒くさ過ぎるカップルを見る目をしないでくれ……」


「ええ~、本当ですか~」


「今度からキチンと、時と場合と場所を考えるわ」


 胸を張るカミラに、二人の呆れた視線が突き刺さる。


「そこはせめて、襲わないっていえよバカオンナッ!?」


「相手の気持ちも考えてあげてください、カミラ様……」


「大丈夫よ、最終的に合意だったって心の底から言わせる自信があるわ」


「駄目じゃねぇかあああああああああああああ!」


「…………ご愁傷様ですユリウス様。式には出席するので、頑張って下さいて」


「まだ、まだ俺はこんな女の事、好きじゃないから……」


「声、震えてますよユリウス様」


 思わず失意体前屈を披露したユリウスに、アメリはぽんぽんと肩を叩く。


「くそう……、きっとまだ、普通の青春を遅れる筈だから……」


「ええ、ええ、現実逃避も程々にしてくださいね童貞女装男さん」


「……………………お前まで言うのかよ」


 力尽き、とうとうその場に寝そべり始めたユリウスに、アメリは同情の念を送り。

 カミラはふへへ、とニヤケるばかりだ。


「無駄な努力だと思いますが、強く、強く生きてください…………って、ああっ!? 起きて下さいユリウス様! カミラ様も変な顔してないで、聞いて下さい! 緊急事態なんですっ!」


 我に返って急に騒ぎ出したアメリに、カミラもユリウスも、流石に我に返った。


「――緊急事態って何? 私達に出来る事は?」


「ええっと、今の所はまだお力を借りる場面では無いのですが…………その、セーラが懲罰房から居なくなったっていう報告が……」


「セーラ嬢の脱走か……、でもそれを俺達に報告のは何故だ? ただの脱走だったら後でもいい筈だ」


 服の埃を落としながら立ち上がり、ユリウスは冷静に言った。

 カミラも、それに同意する。


「そうね、であるならば――――“魔族”」


「関わっていると思うか?」


「でなければ此方に話が回ってきませんし、何よりセーラは『聖女』です。先日の魔族の様に侵入し、トーナメントの為に手薄になった懲罰房の警備を掻い潜ったのでしょう。――違うかしら? アメリ」


「はぁ……、いつもそう真面目でいてくれると、わたしとしても助かるのですが……。ええ、はい。調査した者が言うには、その可能性が一番高いと。――それから」


 アメリは疲れた顔を引き戻し、続いて戸惑いながら数枚の紙をカミラ達に差し出した。


「これは、その……、懲罰房のセーラの部屋から見つかった品で、カミラ様なら、何か、その、多分……ここから、手がかりを見つけられるのではないか、と……」


「何ですの? 妙に歯切れが悪いですわね。どれどれ――――!?」


「どうしたカミラ、何が書いてあるん――――ッ!? はあああああああああああああああああああああ!?」


 カミラが絶句し。

 観戦室に、ユリウスの叫びが木霊した。


「これは…………“愛”だわ……」


「なッ! 何なんだッこれはッ!? こここここここ、こんなッ! 男と男が、はだッ! 裸でッ!? こういう事は男女でするものでは無いのかッ!? そもそもこれは一体何なんだあああああああああああああッ!?」


「ええ、本当に。一枚の紙の中に、様々なポーズで絵画が描かれており、更には未知の言語でメモの様なモノが残されております……これは、何なのでしょう? わたし的には、禄でもない感じしかしないのですが…………」


「あの女……、この状況でナマモノのBL同人描くとか、どんな精神してるのよ……」



 そう、アメリの持ってきた紙は――――BL漫画の原稿であった。



「落ち着きなさいユリウス……、これは只の紙よ」


 ただし、腐った愛と澱んだ情念の詰まった紙であったが。

 ぱっと見ただけでも解る細かな描写等から、BLは趣味ではないカミラでも、思わず引き込まれる執念すら感じられる。


「そのご様子、カミラ様は解るんですね……あまり聞きたくありませんが、これは?」


「BL漫画よ。今、貴方達にも解るようにしてあげるわ」


 カミラは翻訳魔法を即興で組み立てると、二人にかける。

 これで恒久的に日本語を読める様になった筈だ。


「うわっ、本当に読める様になってる…………うわー、うわぁーー……」


「な、何なんだカミラ……、BL漫画とは……いやいい、言わなくて……聞くのが怖い……何なんだセーラ怖い……、女は、お前も俺とゼロスをこんな目で見ていたのか……?」


 一枚一枚見ては、恐怖に股間を押さえるユリウス。

 然もあらん。

 このナマモノBLは、女装したユリウス、もといユリシーヌがゼロス王子を“掘る”という内容だ。

 なおユリウスとは反対に、アメリは興味津々に読んでいる。


「落ち着いてユリウス様。この様な事を妄想するのは、女性の中でも特異な趣味をした者だけよ」


 というか、女性社会にいた筈のユリウスが男色の存在を知らないなど、ジッド王の過保護っぷりが伺える。


「は~。はは~~…………ユリウス様の童貞が、ゼロス殿下でご卒業されていますねぇ……ぐっちゃぐっちゃのどろっどろですねぇ……、はぁ~~」


「そんな怖い事、しみじみ言わないでくれぇッ!」


「はいはい、大丈夫ですわユリウス様。何を間違おうが、私がこの漫画の様な事は許しませんから」


「うう、カミラぁ…………」


「よしよし、よしよし、怖くありませんわ~~」


 思わずカミラに縋るユリウスに、カミラは母性をきゅんきゅんさせて抱きしめる。

 思わぬ役得だが、ユリウスの精神を傷つけた落とし前は付けなくてはならない。


(しかし、腐女子だったのねセーラ。長い付き合いだけど初めて知ったわ……。あの三人衆を侍らせていた所を見ると、ノマカプもイケるみたいですけれど……)


 形はどうであれ、きっとセーラの思いは本物。

 そしてきっとこれは彼女にとって大切な思いの結晶だ。

 それに、漫画という概念が無くなった今の時代であるならば、これで一儲けできるし、布教して同士も作れる。

 そんな大切な原稿を残していった意味は――――。


(宣戦布告だわ、きっと。あの子も私が前世でオタクだった事を知っているわ。……だから、私達にしか解らない“共通言語”で、闘志を示したのだわ)


 ならば、ならばもしや――――?

 カミラは、はっ、と顔を上げ舞台を見る。

 そこには、戦いに勝利し、誇らしげに腕を上げる謎の仮面戦士、ハナコの姿が。


「――――真逆」


「どうしたんですカミラ様。怖い顔して?」


「カミラ、何に気付いた?」


 問いかけに答えず、カミラは思考した。


(ハナコの背の高さは…………ええ、多分セーラと同じくらいだわ。でも、だとすると隣は? 共犯者だとしても、それは誰? 仮に魔族だとして、ディジーグリーは、ディン学園長としてさっきからコロシアムの席に居るわ……)


 カミラが言葉を選んで、疑念を伝えようとした矢先に、係員が決勝戦へのスタンバイを伝えにくる。



「――行きましょうユリウス、アメリ。全ての答えは決勝戦の舞台にあるわ」



 カミラの真剣な表情に、二人は頷く。

 そしてアメリは実況席へ、ユリウスとカミラは舞台へと歩き出した。



現実では二次創作でも、その中に入ってしまえばナマモノになる、不思議!


明日から二話くらいはシリアスです、きっと、多分。

ではでは。

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