41話 カミラ様tueeeeeeeeeeeeeeeeeee!
今日はジャンル別ランキングに乗ってました!
皆様のご愛顧の御蔭です! 有難うございます!
「ふふっ、動けない淑女を取り囲むなど、野蛮な事――――!」
「――ぬかせ! カミラ嬢!」
四方八方から同時に切りつける敵に対し。
魔動馬が壊れ動けないカミラは、左手の剣。
光の刃を、自身を取り囲む様に円状にし対処。
良く訓練された連携であるが故に、タイミングは読みやすい。
空いた右の剣の刃を鞭のようにしならせ、先ずは囲む四人、返す刃でその外円にいるもう四人を狙う。
――だが。
「そう来ると思っていたぞおおおおおおおお!」
「ウィルソン様は、戦いの場となると、いっそう喧しいのですね」
外円に居た最後の一人、ウィルソンにだけは防がれる。
それどころか、鞭状にした事を逆手に取られ、右の剣を絡め取られてしまう。
だがカミラも慌てる事無く、刃を消す事で対処。
「はっはっはっ! どうするカミラ嬢! また同じ事を繰り返すか!」
「あら、流石にこれは次の手を考えなければね」
ウィルソンの獰猛な笑みに、同じく獰猛な笑みで返すカミラ。
敵もさるもの、先の一瞬の攻防の間に倒れた穴を補充。
再び同じ配置で、振り出しに戻る。
(――いえ、同じでは無いわね)
カミラは見逃さなかった。
四方八方からにじり寄る生徒達の剣は、防御の魔法や結界を重ねてある。
同じようにすれば、一人目で対処されてしまうだろう。
「その首! 俺が頂くっ!」
「いやいや俺だねっ!」
「カミラ様を討ち取る栄光は私に――!」
今度こそ、討ち取られてしまうのか。
ウィルソン達や観客達が勝利を予感した刹那、カミラは動いた。
「――――最後まで、気を抜くのは未熟と言うものよ」
「見事、なり…………」
取り囲む敵兵が動きを止め、一瞬の空白の後、全員がどうっと倒れ込む。
「は!? ええっ! 何が起こったかわかりませんが! 学園一の怪力ウィルソン率いる主力部隊が! 今! 一斉に脱落したああああああああああ!」
「……見えな、かった」
「恐ろしい女だ、カミラ嬢は。真逆、槍を捨てた事すら意味があったなんて……」
「見えたのですか!? 陛下!」
「ああ、あの一瞬。カミラ嬢は周囲からの攻撃を先程と同じように防ぐと同時に、円状に変えた刃を更に変形させ、鉢巻を狙う刃を出現させた……」
「では、槍の意味は?」
「あれは槍を捨てたと見せかけて、槍による攻撃はないと意識の外へその存在を追い出した」
「だけど……実際は、遠隔操作……いつでも、攻撃出来る状態に……」
「ああ、そうしてウィルソンの隙を付き、見事鉢巻を斬って見せたのだ」
「うおおおおおおおおおおっ! カミラ様っ! 貴女は何処までその強さをわたしに見せてくれるのかあああああああああ!?」
「アメリ嬢……、連合軍も……、応援、して……」
ジッド王の評価をまた一つ上げながら、カミラは次なる手に移る。
暢気に実況を聞いている場合では無い。
「ふふっ、可愛らしい事。効かぬと解っていて魔法による攻撃を再開するとは――」
だが目眩ましにはなるし、そしてカミラにとって福音となる魔法攻撃だった。
(魔法による絨毯爆撃のお陰で、退避しそこねた魔動馬がそこら中にあるわ。なら――――!)
カミラは右手の光剣に込める魔力を調整。
スタングレネード代わりに投擲――――。
「――ぐぁっ! 何が起こっている!?」
「目がぁっ! 目がぁっ!」
「狼狽えるなっ! カミラ様が来るぞおおおおおおおおお!」
「待てっ! 狙いは馬だっ! 空いてる馬を破壊しろっ!」
音と閃光により数人が脱落、動けない者は、効果範囲から逃れたものが後ろに下がらせ。
ゼロス王子の命により、魔動馬の破壊が始まる。
「ふふっ。ユリシーヌ様ね、きっと――――」
カミラは確信した。
カミラの事だけを考え、カミラの行動を予測し続けていたユリシーヌだけが、魔動馬の事まで読み切っていたに違いない。
「――正しく、愛だわっ!」
溢れ出る愛の衝動に身を任せ、カミラは跳躍した。
もはや策も何もない。
その愛を以て、蹂躙するのみだ。
「そ、そんなっ! 壊れた馬を足場にっ!」
「打ち落とすんだっ! 魔法急げっ!」
「無理です、効果ありま――――ぐあぁっ!」
例えるならば、それは八艘跳び。
前世で言うところの源義経の如く、鎧や重石を意に介さず跳躍。
更には残る剣を投擲し、鉢巻を切り裂くと同時に落馬させ、次なる足場を作る。
「凄いっ! 凄すぎますカミラ様あああああああああああああ! 最早カミラ様に魔動馬など必要ないのかああああああああ!」
「ふむ、跳躍からの、素手で鉢巻をむしり取った上に、ついでに剣や槍まで奪うか……」
「それより……、真似されると、危ないから……、来年から、禁止の……方向で……」
「あ、異議なしです」
「当然だな」
実況が変な方向へ行く中、カミラの快進撃は続く。
千切っては投げ、刺しては跳躍。
かと思えば奪った魔動馬でランスチャージの直後には、魔動馬をフラッシュグレネード代わりに爆発。
凄まじい蹂躙っぷりに、虐殺ショーと勘違いした観客がカミラを応援し始める。
「いいぞカミラ様ーーーーー! もっとやっちまえええええええ!」
「もっと派手なの見せてくれよっ!」
「ふふふふふふふふふっ! あははははははははははっ! いいわよっ! 今日は特別に見せて上げるっ! ――――大・爆・殺・ランスアタアアアアアアアアアアック!」
テンションの上がったカミラは、適当な技名を叫びながら、魔力を込めすぎた槍を跳躍からの投擲。
音の壁を越えた衝撃と、爆発の二つの衝撃が連合軍を襲い。
その全戦力は脱落したかに思えた――――。
「決まったああああああああああああああ! カミラ様の止めの一撃いいいいいいいいいい!」
「――いや、まだだアメリ嬢!」
「煙で……よく、見えない……」
流石は将来国を背負って立つ人物達と言うべきか。
爆発の煙が晴れた先に居たのは、ゼロス、ヴァネッサ、ユリシーヌの三人だけだった。
「ああ、そういえばヴァネッサ様は結界魔法がお得意でしたわね――でも、もう限界でしょう」
観客が固唾を飲む中、先ずヴァネッサが魔力を使い果たして気絶、脱落である。
「これは凄いっ! カミラ様の猛攻に耐え残った者は、我らがゼロス王子とユリシーヌ様だあああああああああ!」
「ヴァネッサ様……、お見事、でした……」
「ほう、ゼロスは良い嫁を貰ったのう……」
「陛下、陛下。結婚はまだですよ」
「おっと、うっかりしてたわい。しかしこれなら王家は安泰じゃの」
「それは、いい……ですが、まだ決着が……」
エミールが指し示した先に、気絶したヴァネッサを大切そうに抱き抱えたゼロス。
そのお伽噺の様な光景に、観客が沸き立つ。
(ええ、折角の決着ですもの。前座に花くらい持たせて上げましょう)
自国の王子を前座扱いしながら、カミラは待った。
さほど時間がかからず、駆け寄ってきた保険医にヴァネッサを任せると、王子は槍を取ってカミラと相対する。
「あら、ゼロス殿下が先なのね」
「ああ、後を託せる奴がいるからな」
ちらりと後ろを向き、ゼロスがユリシーヌへ頷く。
まだ、何か策があるのだろうか。
カミラは背筋をゾクゾクさせながら、うっとりとユリシーヌを見つめた。
「おいおい、俺を相手によそ見か? 随分とつれないなカミラ嬢」
「あら、申し訳ありませんわ殿下。――では、潔く散る覚悟はよろしくて?」
カミラは視線を戻し、拾っていた突撃槍を構える。
対し、ゼロス王子も突撃槍を構えた。
「ああ、覚悟はできてるさ。――お前に後悔させる覚悟をなっ! うおおおおおおおおおおおおお!」
「はあああああああああああああああああああ!」
両者、最大速力で激突。
勝者は――――。
「カミラ様! ゼロス殿下に勝ち星いいいいいいいいいいいいい! 後はユリシーヌ様だけだあああああああああああ!」
「――ああ、楽しかった。だが次は……伝説に勝てるかな? カミラ嬢」
「ゼロス殿下?」
その言葉の意味を問いただす前に、ゼロス王子の鉢巻が落ち、同時に気絶により脱落。
そして、最後の一人。
ユリシーヌがカミラの前に立ちはだかった。
ユリシーヌとの決着と勝負の行方は、明日の予定。
では、また明日の夕方七時に会いましょう!




