39話 ファンタジーの騎馬戦は、きっとファンタジー
GW最後でも通業営業!
騎馬戦というと、一般的には下に三人、上に一人。
そして頭の鉢巻を奪い合う。
そういう競技である――――カミラの前世では。
では今はどうなのか。
カミラも、この学院に入学するまで知らなかったが。
騎馬戦とは、魔法具――所謂マジックアイテムを組み合わせた特殊な馬型の魔法機械。魔動馬に跨がり。
頭の鉢巻を狙いあう競技である。
元々は、軍の実践演習で使われる方式だったが、貴族出身が多い学校だ。
将来を見据えて取り入れた、という訳である。
無論、競技様の剣と槍、楯等で武装し、魔法の使用が許可された。
最早立派な模擬戦だ。
カミラは用意された、軍用の鎧の一部。
胸当てや籠手、足甲などを体操服の上から付けて魔動馬に騎乗する。
(下に着るものが体操着でなければ、様になってのでしょうが……)
格好良いのか、男のフェチズムを刺激するのか。
はたまた、ただのダサい格好か。
カミラには判断出来なかったが、ともあれ準備は出来た。
魔動馬のエンジンに火を入れ、指定の位置へと向かう。
広大なグラウンドを二分。
方や三百人を超す――その姿、白の軍団。
対するは一人。
ただ一人、紅を背負った女が一人。
普通なら、見せしめや制裁を思わせる戦力差。
だが両者の顔には、油断も満身も伺えない。
寧ろ、たった一人を相手にする白組には、恐れ、怯えといった表情まである。
「さあさあ、本日最後の種目! 皆お待ちかね! 騎馬戦だああああああああ!」
「今回……は、特殊……ルール」
「カミラ様VS紅組白組連合! いったいどうしてこうなっているんだあああああああああああああ!?」
「おち、ついて……アメリ嬢……」
「うむ、気持ちは判るが落ち着くがよいアメリ嬢」
「……ぐぅ。取り乱しました済みません。――おほん。今回は特別ゲストとして、我らがジッド王陛下を解説にお迎えして、実況をお届けしたいと思います!」
「僭越……ながら、陛下。何故、この様な場に?」
「はっはっはっ! 何やら我が国一番の魔法使いと、将来を担う若者達の大激戦が見れると言うではないか! ただ座ってみるより、こうした方が面白い。そうであろう?」
カミラは魔力で強化された視力にて、連合陣営の奥でゼロスが頭を抱えたのを見て笑った。
この国の王族は、フットワークが軽い。
「えー、まぁ。こちらとしても盛り上がるのなら大歓迎ですが。では、今回は大幅ルール変更が行われた事もあります」
「ルール……説明を、行い……ます」
「どれ、それは儂がやろう……おっほん!」
ジッド王は立ち上がり、手元の原稿を読み上げる。
「基本的なルールに関しては、いつもと同じである」
「一つ、各種武装の使用、魔法の使用が可能である。但し、人体や精神に重大な影響、欠損を与える魔法の使用は厳禁。もし使用が認められた場合、その陣営の反則負けとする」
「一つ、頭に着けた鉢巻を斬られたら脱落とする」
「一つ、指定の時刻まで生き残り、より多くの鉢巻を斬った陣営の勝ちである。――――以上!」
「えー、補足しますと。今回は一人対三百人の特殊ルールなので引き分けは無し。また鉢巻は自動カウントです」
「また……、カミラ様が、鉢巻を……落とされてた時点で……競技、終了」
「更に言えば、戦力差を鑑みて、カミラ嬢には魔法禁止を申し渡してある。――――油断するなよ連合軍の者達よ。いくら魔法が使えぬといっても、我が国一の魔法使い。魔力の扱いだけで勝利を勝ち得ているのは、前の数々の競技で身に染みているだろう?」
ジッド王の言葉に、白組生徒が怖じ気付く。
しかしそれを、紅組生徒が励まし奮起させるという光景が、しばらくの間、各所で見られた。
「なお、使用する剣と槍は実体刃では無く。布だけを切り裂く特殊な魔法光の刃ですので、ご安心を!」
「体操服……は、特殊な素材で……、出来ているので、残念ながら破れません。……ご安心を!」
「いやぁ……、昔は体操服も一緒に切れてなぁ……色々と眼福だったものよ! はっはっはっ!」
「セクハラですよジッド王、後でそこで睨んでいるお后様に叱られてください。頷いたOBの方々も同罪です、それぞれの奥方に怒られてくださいね!」
「ぬあああっ! ご、誤解なんじゃ我が后よっ!」
「……ご愁傷様です、我が王」
慌てふためくジッド王と、壮年以上の貴族の男性にエミールは合掌。
迂闊にも羨ましいと漏らした男子生徒が、女生徒から足蹴にされる中。
アメリは高らかに宣言する。
「それでは――――各自位置について…………、スタート!」
魔法の花火が一段と大きく音を鳴らし、開始の合図を告げた。
□
「さあて、どこから攻めましょうか……」
カミラは舌なめずりしながら、槍を起動。
先端に光の刃を出現させる。
待機出力の魔動馬に魔力を注ぎ、戦闘速度をいつでも出せるように準備。
眼前に相対する連合軍は、その隙を見逃さずカミラを包囲。
実体楯と魔法による障壁を併用し、カミラの活動範囲を狭めた。
「おおっと! カミラ様いきなり包囲されてしまったーー! これはどうした事か!?」
「……連合軍の、動きについて、いけなかった?」
「いや、これは余裕の現れ。先手を譲ったという所じゃろう……」
実況の言葉を裏付ける様に、悠然と佇むカミラ。
「一番隊! かかれーーーっ!」
「おう!」
「任された!」
「カミラ様お覚悟――――!」
ゼロス王子の号令により、先ずは十人が突撃。
四方八方から、カミラに向かってランスチャージ。
「うおおおおおおお!」
「いかに貴方とて――!」
「この人数では勝てまい――!」
だが、槍の穂先が迫り来る届中、カミラは自分の槍の間合いの外にも関わらず、一振り。
誰もが、その意味を計りかねたその瞬間。
「ば、馬鹿な」
「届く筈がないのにっ!」
「どうして、どうして――――!?」
突撃してきた生徒、その十人全ての魔動馬の首が落ちると共に、鉢巻が切れて落ちる。
「一糸乱れぬ同時攻撃、けれど残念ね。――――まだまだ、練度が足りない」
「ああっとおおおおおおおお! これはどうした事かあああああああ! カミラ様の槍が届いた様子も無いのに、魔動馬ごと一刀両断だああああああああ!」
「……凄い、早業……」
「あれは魔力を操作して透明な刃を作り出しただけでなく、それを長く延ばしたのだ。呪文の詠唱無く、魔法陣も無く、ただの感覚でやっけのけるとは……誠、天才としか例えようが無いのう」
「では残された二百九十人は、あの槍をどう攻略するかが、勝利の鍵という事ですか?」
アメリの言葉に、カミラはニヤリと笑った。
また、カミラの動作を全て見切る事の出来たジッド王は、アメリの言葉を訂正する。
「そうか……、アメリ嬢には見えなかったか」
「え、それはどういう――――」
それを聞き返す前に、異変は訪れる。
「そ、そんな事って――――」
「何が起きているんだいったい!」
「審判! 審判! これは反則じゃないのか!?」
次の瞬間、誰もが目を疑った。
カミラを包囲していた五十人。
そして、その後ろで魔法を使っていた四十人。
その全て、悉くが――――。
「――――な、な、な、何が起こったああああああああああああああああああああああああ!?」
「審判判定……来ました……」
「魔法を使用した形跡無し……やはりか。」
ジッド王がやや呆れた顔で。
エミールが驚愕し。
アメリはその事実に、狂喜乱舞した。
「――――先ずは百人。頂きましたわ」
開始早々、たった一振りで連合軍百人が脱落。
その事実に、会場中が沸き立った。
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