33話 行くぞラブイベント三連星だ……!
何か普通のラブコメを久々に書いた気がする……気の所為かな?
「さあさあっ! やあ~ってまいりました! 午前の部最後の種目っ! ――二人三脚障害借り物競走おおおおおお!」
「……まぜ、すぎ……です。いったい……誰が……」
「それが不思議なんですよねぇ~。誰も知らない間にいつの間にか変化していって、それが通っちゃってましたし」
「……不思議」
大嘘である。
カミラとユリシーヌの仲の進展を計ったアメリが、ヴァネッサの助力により、強引に、かつ秘密裏に押し進め。
ゼロス王子の、面白そうだしいいんじゃね? の一言で決まった事だ。
「これに勝つには、二人の息を合わせっ!」
「力……合わせて、ラブ? 障害を……乗り越え……ラブ障害……ってなんだ?」
「最後に待ち受ける、ドキドキ借り物パニックを乗り越えた者にこそっ! ベストカップル賞を送りたいと思いますっ!」
「え? ……初耳、何、……だけど?」
エミールと同じく、何それ状態の男子と違って、事情を密かに知らされていた女子は、テンションが最高潮だ。
「ねっ、私たちの仲を見せつけて、義父様に認めて貰いましょう!」
「事情はよく解らないが、ハニーの為にも全力を尽くそう!」
「ダーリン!」「ハニー!」
「お、お姉さま……、勝ったら私と……」
「バカね、私のミーシャ、……可愛い子。一緒にでるって決めたときからそのつもりよ」
「お姉さま!」「ミーシャ!」
同じスタートラインに並ぶ選手の声に耳を傾けると、ラブが漂っている。
第二走者走者以降も、同じようにお熱い雰囲気だ、
「……この中で、走るのですか」
「いきなりで私も驚きましたが、ユリシーヌ様はやっぱりお嫌ですか……?」
体操服の袖をちょこんと掴み、不安そうに上目づかいをするカミラ。
ユリシーヌは苦笑しながら、その頭をやや乱暴に撫でる。
「わ、きゃっ!」
「貴女も案外、そういう所は他の人と変わらないんですね……、可愛い人」
「か、かわっ…………!!」
顔を真っ赤にして、ぷしゅー、とエンスト寸前のカミラを余所に、アメリ達のアナウンスは続く。
「残念ながら魔法は禁止で、得点にもカウントされませんがっ!」
「ユリシーヌ様……と、カミラ様、……も……出場」
「白組はリベンジの、紅組は下克上のチャンスですねっ!」
それを聞いた生徒達全員が沸き立つ。
「うおおおおおおおおお! 俺たちは折れぬ! レミリィ様! 私の女神! 共に勝利を掴もうではありませんか!」
「ええ、いつも助けられているカミラ様へ、わたくしの力をお見せして、カミラ様が一人で奮闘しなくても大丈夫だと、お伝えするのです!」
「やるぞ!」「いきますよ!」
「ふっふっふ。情報通りでしたね、貴女と組むのは正直今も気が進みませんが、そんな事言ってる場合ではありません事よ!」
「ええ! 私はカミラ様に! 貴女はユリシーヌ様に! 必ずや優勝出きるタイムを叩き出し、アピールするのです! 女同士なら私達にもチャンスが!!」
(うわぁ、何か凄いことになってるぞ……)
ユリシーヌは冷や汗を流しながら、手を動かし続けた。
「ゆ、ゆりしーぬ様? その、嬉しいのですが……。何時まで頭を撫でているのですか?」
カミラは耳まで真っ赤になって俯き、されるがままだ。
「あら、ごめんなさいねカミラ様。貴女の髪が心地よくて、つい」
物は言いようである。
確かにそれもあったが、何時になくしおらしい様子に、ユリシーヌはつい続けてしまっていた。
カミラのそんな様子を見ていると、心の奥で何かが沸いてくる。
(決して不快ではなくて、寧ろ心地よいような、脳が痺れるようなこれはいったい……)
心が覗けたならば、誰しもが一言で答える“それ”に気づかず、ユリシーヌはカミラを撫で続けた。
「さあ、さあ、さあ、さあ! 準備は出来ましたか皆さん!」
「ペアの……方の足と、……足が……」
「赤い運命の糸で結ばれている事は確認しましたね!」
「「「いええええええええええええい!」」」
「この期に及んで、いちゃいちゃしてるカミラ様達も大丈夫ですね!?」
「何余裕こいてるのよっ!」
「先輩方の絆に、私達も負けません!」
「尊き魔女よ! 我らも強いのだ!」
「ユリシーヌ様は」「カミラ様は」
「渡しません!」
やいのやいの、がやがやと、一斉にざわつくスタート前。
アメリは今が好機と、合図係に指示を飛ばす。
「うおおおおおおおお! それでは皆! ラブパワーを見せつける時が来たぞおおおおお!」
「第一、走者……、レディ……」
「「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
会場が一体となって叫ばれた開始の合図に、選手が一斉にスタートした。
勿論、カミラ達も一瞬で気を引き締めて、見事なスタートダッシュを決めて――――。
「――あうぅっ!」「――あだっ!」
「ああっーーーーーとぉっ! カミラ様とユリシーヌ様! 開始早々こけたああああああああああ!」
――決めていなかった。
足を踏み出した直後、びたーんと音を立てて仲良く地面に激突。
敗因? 練習も打ち合わせもしてないからだよ。
「好機! カミラ様達が転倒したようよっ!」
「油断するな! アレは罠かもしれない!」
「今は距離を稼げ! 何せユリシーヌ様とカミラ様だぞ、何を企んでいるかわかりゃしねぇ!」
観客が騒ぐ中、二人は苦戦しながら立ち上がり――また転けた。
「あちゃー、駄目ですねぇ、どう見ますエミール様?」
「……あの二人には、……ハンデで、内容はギリギリまで、伝えてません……当然かと」
「ですよねー。頑張れカミラ様ー! ユリシーヌ様ー!」
「ぐぬぬ……これが目的だったのねアメリっ!」
「違うと思いますわカミラ様、では左足から行きましょう」
「「せーの!」」
びたーんと再び転倒。
「左足からって言ったじゃないですかユリシーヌ様!」
「結んである足の事を言ったのですッ! 解ってくださいなッ!」
焦れば焦るほど事態は悪化する。
カミラが慌てて立ち上がろうして、その勢いでユリシーヌが倒れ、連鎖的にカミラも倒れる。
「カミラ様ペア、未だスタート出来ない! これは最下位かーーーー!」
「ポテンシャルは……高い、けど……発揮できなければ……意味、無い」
「くっ、好き勝手言って、後で覚えてなさいアメリっ!」
「今は立ち上がる事に集中してくださいカミラ様ッ!」
漸く立ち上がると前には、他の五組が既に最初のハードルを終えようとしている。
「くっ、意外と難しいですね! いちに、いちに、で結んである足から行きますよカミラ様!」
「はいっ! ユリシーヌ様!」
「いっちに」「いっちに」
最初はゆっくりと、だが次第に速度を上げて二人は進む。
「さあカミラ様ユリシーヌ様は最初の障害! ハードルに到達! 先頭はバルーンはさみで苦戦しているぞ! まだ一位のチャンスは残っているか――――!?」
「というかっ! 二人三脚でハードルなんて飛べるんですのっ!?」
「倒して進んでもいいみたいですわッ! だがそうすると時間をロスが多くなりますッ!」
カミラとユリシーヌは一瞬のアイコンタクトで、意志疎通を完了する。
迫り来るハードルに、二人は結ばれた足で強く踏み込んだ――!
「ならっ――」「飛びますッ!」
「と、飛んだあああああああ! 殆どのぺアが最初から諦めたり、途中から倒して進んでいるハードルを、軽やかに飛んですすんでいる――――!」
やっ、はっ、とっ、とスピードを落とさず次々にハードルを越えていく二人
他の組の半分以下のタイムで、難なく突破する。
「次はネットですわっ!」
「これは仕方ありませんッ! 正攻法で行きますッ!」
「了解しましたわっ!」
「ユリシーヌ様達が猛スピードで追い上げているぞおおおお、これはもしかすると、もしかするのか!」
「皆……頑張って……」
二人は、いちに、いちに、ともっと速度を上げて、いちにさんで、ネットの手前からスライディング。
その勢いのまま三分の一までくぐる。
「私がネットをっ!」
「では次が貴女がッ!」
カミラがネットを持ち上げ、先にユリシーヌが匍匐先進の準備をする。
次いで直ぐ様、カミラも準備した。
「いちに」「いちに」
「おおっと! ネットでも早い! 早いぞカミラ様!」
「やはり……事前に、知らせなくて……正解。……二人の……独壇場……なってた」
アナウンスを余所に、カミラ達はひたすらに這い進む。
前の組は、平均台にて
その前の二組はバルーン挟みで。
先頭を争う二組は、スプーン卵で苦戦。
「後は追い上げるだけねっ!」
「ああ、行きますわよカミラ様!」
ネットを抜けた二人は、平均台へと駆けだした。
「楽しいですわねユリシーヌ様!」
「ええ、楽しいですわカミラ!」
二人は笑い会った後、獰猛な笑みを浮かべた。
目指すは一位、そして測定タイムによる優勝である。
明日から提督諸氏はイベントですね。
私も提督ですが、大丈夫! イベント中も毎日更新ですよ!
問題があるとすれば、私の備蓄状況だ……!




