30話 縛りプレイでも、魔王は魔王
タイトル変えたら、ガッポガッポだと聞かされていましたが
そうでなかったみたいなので、タイトル戻します。
……もっともっと、皆に読んでほすぃーーーー!
「まずいな……」
「ええ、皆、心が折れてしまってます」
ゼロス王子と、ユリシーヌが深刻そうに顔を付き合わせている。
綱引きが終わった後の白組は、目も当てられない有様であった。
「力を使い切ったとか、服が酷く汚れた程度なら、幾らでも何とかなるが、あの状態では……」
「こちらも、カミラ様の脅威を下に見過ぎていました……あれは、天災です」
競技に参加した生徒を見れば、濡れた体操着を乾かそうともせず、ぐったりと座り、うなだれているのが大半だ。
ヴァネッサ以下、他のメンバーがケアに当たっているが、彼らが心を取り戻すのに、今しばらく時間がかかるだろう。
「あちらは勝利に沸き立っているから、大惨事になっていないものの、これが続けばワンサイドゲームで色々と問題が起こりかねない」
ユリシーヌが紅組の陣営を見ると、勝利に喜んではいるが、浮き足立っていない。
カミラがよく統率しているのだろう。
(だが、あの纏まり具合はそれだけではない。……演説で言っていた生徒達に出回っている“噂”とやらも気になる。……装備の面では既に手を打ってある。――後一つ、向こうの結束を緩める事が出来れば――――)
恐らく、カミラへのカウンターとなれるのは、自分だけだろう。
ユリシーヌはそう決意すると、ゼロス王子へ奏上する。
「…………ゼロス王子、私に一つ案があります」
「良い手でも思いついたか? 言ってみろ」
「では耳を」
王子の耳に口を寄せると、ユリシーヌは逆転の一手を打ち明ける。
「――――しましょう。それでその間に――――」
「……なっ!? …………ふむ。真正面からでは無いのが残念だが、それにかけるしかあるまい。――ただし“あれ”の原因がお前の想像通りでないのならば、策は中止せよ」
「ええ、偽りを暴くなら兎も角、陥れる様な事はしたくありませんから」
「…………、影失格だぞユリシーヌ」
「殿下こそ、王を継ぐものとして冷酷さが足りないのではないでしょうか」
お互いに笑いあい、ゼロスとユリシーヌは拳を合わせた。
「白組に勝利を」
「あの魔女めを打ち倒す栄光を」
白組の反撃が、始まろうとしていた――――!
□
「――と、いう次第ですカミラ様。残念ながら肝心の策の内容までは、手に入りませんでした。申し訳ありません」
所変わって、紅組陣営。
カミラは白組の鉢巻きを手にした“紅組”の女生徒から報告を受けていた。
「ありがとう。確か貴女は一年のミリアだったわね。汚れ仕事をさせてすまないわ」
「――――、カミラ先輩! 私の事をご存じだったのですね……嬉しいです!」
名前を呼ばれた女生徒は、飛び上がらんばかりに歓喜した。
なお実際の所は、ゲームで名前だけ出ていたモブがいたから、偶々使っただけの模様。
慕われているのに、この女は酷いものである。
「大切な後輩ですもの……、名前くらいはね」
「カミラ先輩……いえ、カミラお姉さま……」
瞳をうるうるさせたミリアの姿に、カミラは十二分に自尊心を満たし、更なる尊敬を得ようと口を滑らす。
「白組が何を企んでいようが、私達はそれを打ち破る矛と盾を持っている。それに――大丈夫、私もついているわ」
にっこりと微笑み、ミリアの頭を撫でるカミラ。
実際の所は全くのノープラン。出たとこ勝負である。
そんなカミラの頭の中も知らず、うっかり納得してしまったミリアは、絶対なる信頼をカミラへ。
「ええ、ええそうでした。カミラお姉さまのハンデという事で、私達平均以下の学生が集められましたが、そんな私達でもやりかた次第で互角に戦えるって、さっき証明して貰えましたもんね」
「そうよ、貴女達は決して落第生じゃない。やり方次第で上と互角に戦える。それで勝利に足りなければ私が背中を押して上げるわ。――さ、行きましょう。次の玉入れが待っているわ」
「はいっ! カミラお姉さま!」
アメリがいたら絶対阻止しそうな、百合の花を咲かせながら、カミラはミリアを引き連れ校庭へと向かった。
□
(不味いわね……、これはもしかすると、もしかするかもしれないわ)
玉入れのスタート前。
カミラの前には、臆することなく静かな戦意を燃やす白組の生徒達。
不味いと感じている割には、カミラの表情は楽しげだ。
否、本当に楽しんでいるのだ。
「さぁーて、先程の綱引きの時に水浸しになったグラウンドを直すのに、少しお待たせしてしまいましたがっ!」
「まも……なく。始まり……です……」
アメリとエミールの放送が入る。
「さて、エミール様。こちらはまたカミラ様が出場しますが、ご勝算の程はいかに?」
「…………あえて、いいましょう」
遠目からでも、エミールがにやりと笑うのがカミラには見えた。
やはり、何か手を打ってきたのだろう。
それをこの場で言うとは、どんな策なのか。
(ふふっ、聞かせて? どうやって対抗するのかしら? ふふふっ)
「な、な、なーーんとっ! あのカミラ様に対抗する策があるのですかっ! 言っちゃうのですか!? この場で!?」
紅組にがやがやと動揺が走る中、エミールは告げた。
「……この玉入れ、白組、の……負け……」
「いきなりの敗北宣言んんんんん! これはいったいどうした事かあああああっ!」
「アメリ嬢……うる、さい……」
「おっと、これは失礼をば。――それで、その心は?」
「今回……は、勝ちを、譲ろう……、だが、覚えておくが、いい……。これは“布石”……、後の勝利の為の……“布石”」
それを聞いた途端、不安そうにミリアがアメリを呼ぶ。
「カミラお姉さま……、これはいったい……」
「落ち着きなさいミリア――――、皆も聞きなさいっ!」
カミラは声を張り上げた。
「今、貴方達の心は不安に満ちているでしょう……、しかし、それこそが白組の狙い! そして、心しなさい! 同時に彼らは勝利を捨てて、私達の消耗を狙っている、激しい妨害が予想されるわ」
「では、どうすればいいのですかカミラ様!」
紅組の誰かが声を上げた。
カミラは紅組の生徒達から背を向け、大声で叫んだ。
「――――戦いなさいっ!」
白組に立ち向かう背中を見せつけて。
「貴方達の総てを使って! 貴方達の命を削って!」
紅組の旗を魔法で呼び寄せ、高らかに掲げる。
「貴方達は強い! このカミラ・セレンディアが保証するわ! 私が出るまで持ちこたえろなんて言わない――命令は一つ! 勝利を!」
「――勝利を!」
「――勝利を!」
「――勝利を!」
特に実のあることは言っていないのだが、そこはカミラのカリスマと作り上げられた雰囲気。
仕込んでおいた手の者が、続いて叫んだことにより、紅組全員が、競技に参加していない者まで叫び始める。
全員がドンドンと足踏みし、勝利、勝利と叫ぶ。
空気に飲まれ、白組の戦意が揺らいだ瞬間。
カミラは合図を出し、皆を止める。
次の瞬間、はっと我に返ったアメリが、開戦を告げる。
「――――玉入れ開始いいいいいいいい!」
魔法の花火が上がり爆音を轟かし、カミラは旗を振り下ろし叫んだ。
「――――蹂躙せよっ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」
「「「「させるかよおおおおおおおおおおおっ!」」」」
約束された混戦が、今始まった。
明日も夕方七時にアクセス!
そうで無くても、読み返してもええのんで?
私はGWでむしろ忙しくなりますが、お前らちょっと、私に休みを譲れ
さもなくば、感想とかレビューとかブクマとか評価を選ぶがよい!
夢でカミラ様に蹂躙される権利をやろう!




