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29話 何故こんなヒロインになってしまったんだ……(最初からです)

毎度、ブクマや評価ありがとうございます!

俺ツエー―書いてると、脳汁ドバドバ出ませんか?



 それは、異様な光景だった。

 方や、ファンタジーに似つかわしくない体操着にゼッケン。

 対するは、重装備にゼッケンのファンタジー? な集団。


「さあっ! 始まりますは第一種目、綱引き! 司会はわたしっ、カミラ様の忠実なる第一の配下!アメリ・アキシアと!」


「……エミール・イローネン。よろ……しく……」


 アメリは兎も角、何故口が上手くないエミールが起用されたのか。

 全生徒の心が一致したのだが、それはあれ。

 婚約者のフランチェスカの、浮気に対するペナルティだ。

 彼女のはすはすしている姿を見て、事情を知る者はエミールに同情の視線を向け、知らない者も同情を視線を向ける。

 この学院は禄な女がいない。


「カミラ様見てますか聞いてますかーー! ばっちり応援するので、ご活躍を期待しておりますっ!」


「……公、私。混同は……よくない……」


「あははっ! めんごめんご。じゃあルールの説明しますよー!」


「見ての……通り、巨大な……縄を、引っ張る……」


「魔法使用は許可、妨害ありの何でもあり。制限時間内に真ん中の布を自陣に引き寄せた方が勝ち」


「命や、精神に……、関わる、危険行為、は……禁止」


「勿論、目印の布に直接、間接的に何かするのはダメですよー!」


 元気な声と、静かな声が交互の響く中。

 紅組と白組は、火花を散らしあう。

 正確に言えば、紅組が一方的に睨みつけ。

 白組は開始前なのに萎縮しきっている。

 然もあらん。


「で、どうですか。どっちが勝つと思いますかエミール様?」


「それは……、愚問、かと。アメリ嬢……」


「お、強気な発言ですねー。やはり、ご自分の白組が有利と?」


「本気……で、言ってます? 紅組は……、遣りすぎ……」


 エミールが何時も異常にどんよりした視線を向けた先には、待ちきれずに足を踏みならす紅組の生徒の姿が。

 その先頭には、仁王立ちしたカミラが怖いほど綺麗な微笑みを浮かべている。


「おいおいおい、あいつらガチじゃねぇか……馬鹿なんじゃねえの?」


「んだな、こんな子供のお遊びにムキになっちゃって……」


「ちょっと男子ー! アンタら足も声も手すら震えてるじゃん! しっかりしなさいよ!」


「……いや無理だって、あいつ等俺達より成績下の集団って話だけど、あそこまでされたら無理だって……だいたい何で、女子達はそんなにやる気なの?」


 原作のカミラぐらいモブな白組生徒が会話する。

 男子の士気はだだ下がりだが、一部の女子は奮起している様だ。


「何でって、アンタら知らないの? この魔法体育祭、勝ったら好きな人に何でも一つだけ命令できるって話だよ!」


「は? 何それ初耳なんだけど!?」


「あー、それなら俺もちらっと聞いた。ユリシーヌ様からキスして貰えるって話だろ?」


「それでアイツ等マジなのか……。でも無理じゃね? 見てみろよ……、というか、どっから持ってきたんだあの鎧……」


「くそっ……。そういう事情なら、綱引きは棄てるしかないな。でも……」


「ああ……、次の種目は……」


 紅組と戦う前から敗北を確信している中、白組首脳部――ゼロス王子の一味は、わりと冷静に作戦会議をしていた。


「申し訳ありません殿下、ボクが居ながら情報戦でも後手に回ってしまいました。――もうちょっと早く気づけたら、装備くらいは隠せたのですが……」


「愛しい私のリーベイきゅん……、貴方の所為では無いわ。勝負を持ちかけられて一時間もしないのに、あそこまで本気で準備するとは……」


「きゅん、って付けないでエリカ……」


「いやん拗ねてるエミールも可愛いっ!」


 いちゃつくカップルは放って、ユリシーヌは話を進める。


「いいえ、罪というなら彼女に勝負を挑んだ私が悪いのです。ですが今は、次からの挽回を考えましょう」


「ああ、このままではカミラ嬢に、総てを蹂躙されかねないからな……」


「カミラ様、敵に回すとこんなに恐ろしいなんて……」


 いったい誰が予見しただろうか?

 たかが魔法体育祭で、軍の装備を持ち出すなどと。


「ハンデとして、成績が平均以下の生徒をカミラ様につけたのは失敗でしたね。やるなら、カミラ様一人を紅組とするべきでした」


「いやはやユリシーヌ嬢、敵に不足なしではないかっ! こうなるのなら俺も綱引きでるんだったなっ! はっはっはーっ!」


「はいはい、脳味噌まで筋肉詰まってるウィルソン様は黙ってましょうね」


 ぴしっと鞭でウィルソンを叩くグヴィーネと、それをはうん、と喜んでいるウィルソン。

 大切な配下が、アブノーマルな方向に行っている事実から目を背けながら、ゼロス王子はユリシーヌ達に案を求めた。


「この綱引きは捨てるとして、次の徒競走からどうする?」


「不幸中の幸いですが、カミラ様には出場制限がかかっています。そこを付けば何とかなるのでは?」


「確か、団体競技と個人競技は一つのみでしたわね?」


「はいヴァネッサ様。ボクの情報では個人競技は借り物競走のみだったと」


「ふむ……、ならば、その方向でいこう。はっはっは。何だ、意外といけそうではないか!?」


「おお、そうですな殿下! このウィルソン、カミラ様と戦えぬのは残念ですが、紅組を蹴散らしてみせましょうぞっ!」


「…………本当に、そう上手くいくのでしょうか」


 一抹の不安を捨てきれないユリシーヌは、ウインクを寄越すカミラに、ぷいっと横を向いて見せながら、白組生徒を武装する算段を整えていた。



「はいはーい! そこっ! まだ魔法は使っちゃダメですからねー!」


「白組……、せめて、死な、ないで……」


 様々な思惑がある中、競技開始のカウントダウンが始まる。



「では行きますよーー3!」



「……2」



「1っ!」

「始め……!」



 ドーンと魔法で作りだした花火が上がり、同時に両陣営は綱を強く持ち、引っ張り始める。



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」



 オーエス、オーエスという掛け声と共に、引っ張り合いが始まる。

 カミラはまだ仁王立ちのままだ。


「急げっ! ハンデでカミラ様が持つまでの三十秒で勝負をつけるぞっ!」


「させるなっ! 自力ではあちらの方が上だっ! 妨害隊前へっ!」


 カミラの参加までの三十秒、それは紅組も考慮済みだ。

 その為の筋力増加の魔法薬である。

 拮抗どころか、開始直後から大幅なリードを勝ち取っている本隊。

 それに負けじと、フルプレートに身を包んだ妨害隊がヌルヌル魔法を詠唱しながら突撃。

 ――だが当然、相手もむざむざ見過ごしたりはしない。


「なめるなよ! エミール様によっておまえ達の作戦はお見通しだっ! ――白組妨害隊っ! 雷撃準備! 相手は抗魔法の鎧だっ! 遠慮はいらねぇぶちかませっ――――!」


 ヌルヌル魔法が白組本隊に降りかかる。

 可愛い女生徒が体操服ごとヌルヌルになる光景に、客席どころか、紅組にも手を止めてしまうものが出たが、そこはご愛敬。

 次の瞬間、雷鳴が轟き紅組の防衛隊がバタバタと倒れ出す。

 幾ら強い装備に身を包んでも、元が弱いのだ仕方あるまい。


「どうだ見たかっ! ――――なんだとっ!?」


 三十秒終了刻一刻と迫る中、紅組防衛隊指揮官の男子が僅かな希望を確信した瞬間、その顔は驚愕に染まる。


「……かはっ! あびびびびび! ざ、残念だった、なぁ! あびびびびびびっ!」


「馬鹿なっ! 我々の防衛隊にもそのヌルヌルの魔法をっ! ――はっ、俺だけ無事なのは真逆!」


「へへっ、残念だったな隊長さんよ……、そうさ、アンタは焦るあまり、自分の部下の事を良く見なかったのさ……」


「くっ、そうか。俺をあえて濡らさなかった事で、感電の可能性から目を逸らさせたのかっ! ――中々やるな……、この前のテスト、順位を馬鹿にして悪かっ――――ぐわっ、時間差で俺もだとっ、くぅヌルヌルして滑って動けない!」


「へっ、リベンジは果たしたさ…………あびびびびび」


 一つのドラマが生まれている中、遂に三十秒が経過する――――!



「――――待たせたわね、皆」



 本隊はどちらも、文字通り泥沼の戦いだった。


 白組はつるつる滑らせ、戦力の大幅なダウン。


 紅組は、雷撃の巻き添えや、魔法薬の効果が切れ、副作用による筋力の大幅な低下で、やはり戦力ダウン。


 更には、ヌルヌル魔法で地面が異様に滑る泥沼化していた。


 ――そんな中、最終兵器カミラが舞台に上がる。


「ち、ちくしょうっ! ここまでか!」


「馬鹿! あきらめないでっ!」


「やってください姐さんっ!」


「カミラ様! 我らに栄光を!」


 味方からは声援を、敵からは畏怖を。

 カミラは心地よい気分に浸りながら、大縄を持つ。



「――これは、魔力のほんの1%よ」



 瞬間、カミラの魔力が大縄全体に伝わる。


「ひぃっ! ありえないっ! これは特性の大縄なんだろ!? 魔力を通さないんじゃなかったのか!?」


「くそっ、こうなったらヤツの手足も同然だっ! 皆しがみつけっ、全員の体重でならカミラ様とはいえ――――」


 動ける白組の者達が、全員縄に群がる。

 本来なら防衛隊が縄に触っては駄目なのだが、余りに絶望的な状況におののき、審判も止めようとしない。



「その考えは良いわ。――相手が私じゃなかったらね」



 カミラは余裕の笑みで、人差し指と親指のみで大縄を掴む。


「ま、まさか…………」


「健闘は称えましょう、貴方達は良く戦いました――――」


「そんな……、ありえない――」




「――――では、ね。……さようなら」




 腕の一振り。

 たったそれだけ、それだけで白組全員が引きずられる所か、紅組の陣地まで吹き飛ぶ。

 一瞬の静けさの後、紅組の歓声が轟く。

 そして観客がざわめき、参加していない白組生徒が恐慌に陥った。



「――――勝者、カミラ様!」



 校庭にアメリの声が響く。

 だが、そこは紅組なんじゃないか、と言う者は誰もいなかった。




この魔法体育祭編トーナメント終了辺りで、ユリウス編の半分くらいになります。

まだまだ、物語は続くので毎日楽しみにしてくださいね。

明日も明後日も夕方七時更新です!



知っていますか……、二話投稿を一ヶ月続けるには、執筆速度にもよりますが。

30話程度のストックが最低必要です(あくまで私の場合ですが)


社会人で毎日二話投稿している人は、いったいどういうスケジュールで、どの位の分量で執筆しているのだろうか?

誰か私に教えてください!


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