23話 目を離すとすぐカミラ様は黒幕ムーブをするので、誰か助けてください……あれ? これラノベのタイトルっぽくね?
二度目の投稿です!
皆様の応援のおかげで、何故か夕方になっても日刊の順位が殆ど落ちていません!
総合評価ももうすぐ1000ptいきそうです(投稿直前で後3pt)
真に、有難うございます!
言い忘れてましたが、各話のタイトルに深い意味はありません。
え、知ってた? またまた御冗談を……え、マジ? 知ってました?
さて、あれから何知らぬ顔で起きたユリウスは、カミラと共に昼食にありつき。
今、デザートとしてみかんを手にしていた。
「おおー。オレンジよりも剥きやすいのだな」
「でしょう、そのお手軽さも魅力なのですわ――お望みなら私の服も」
「剥かん。絶対に剥かないからな」
「いやん、いけずですわ」
お前さっきの涙は何処へいったと問いたい程、変わらぬカミラの態度に呆れながら、ユリウスはみかんの皮を剥き終わる。
そしてぱかっと二つに割ると、一方を丸ごと口に放り込んだ。
「――むぐ、むぐ、むぐ。ふぅ。……美味いッ! 何だろう。……あむ。あむ。ごっこん。このみかんとやらは、酸味が少なく甘みが強く、幾らでも食べられそうだな!」
「ふふっ、お気に召したのなら、帰ってからお裾分け致しますわ」
「対価に怪しげな事を要求しないなら、頂こう」
「……流石の私でも、そんな事しませんわっ!」
ぷくー、とむくれたカミラを笑いながら、ユリウスは考える。
(さて、俺としてはデートという気分じゃなくなった。このまま帰る――、いや俺達は『始祖』の聖女装束を探しにきたんじゃないか。そろそろ本来の名目に戻っても良い頃ではないか?)
「で、だ。お前はこの後に行きたい場所はあるか?」
カミラは少し考えるふりをした後、さも思い出したように言った。
「そうだ、折角の機会なのでセーラ様が育った家を見てみませんか?」
「……お前、聞かれなくても最初から行くつもりだっただろ絶対」
「さて、何のことですやら」
カミラは素知らぬ顔で、みかんの皮を燃やしながら立ち上がる。
なお、みかんの皮だけを燃やす専用の新作魔法だ。
「お前はまたそんな変な魔法を……」
「便利ですのよ?」
この世界は割と感覚で魔法を使えるとはいえ、大概の者達が用途に応じて専用の呪文詠唱や魔法陣を使う。
何故ならば、そうしないと安定しないからだ。
そして呪文や魔法陣は、専門の学者が長い時間をかけて作り出すもの。
――小規模な魔法とは言え、みかんの皮を燃やすという限定的過ぎる効果の魔法。
便利だからといって、簡単に作れるものではない。
そもそも、便利でもないのだが。
「……お前がいいならいいが。あ、俺のも頼む」
ユリウスも、持ち歩いたりその場に棄てるよりかはいいと、皮をカミラへ渡す。
「任されました――ほいっと」
「何故こんな奴に才能を与えたのか……」
「私に才能はありませんわ。――ただ積み上げてきただけです。では行きましょうか」
「ああ、俺としてもセーラという人物が、何処でどの様に育ったか気になるしな」
「……まぁ、無駄足になるのですけれど」
「魔女め、何を知って何を企んでいるのか」
「安心して下さい、貴男へではありませんわ」
「企んでる事は否定してくれッ!」
ユリウスはカミラの先導で歩き始めた。
先導といっても、仲良く腕を組みながらであったが。
ともあれ。
ユリウスの嘆いた通り、これもカミラの企みの一つ。
カミラにしてみれば、セーラへに向けた今後の布石の一つであった。
□
二人がたどり着いた場所には、荒れ果てた家屋があった。
今にも倒壊しそうなボロボロの家、当然のように無人。
何年も人が住んでいないのか、庭も荒れ放題だった。
周囲も空き地が目立ち、人の暮らしている気配がまるでない。
「……なぁ、ここが本当にセーラ嬢の住んでいた家なのか? ここいら一帯、長いこと誰も住んでいない感じがするが」
「ええ、学院の記録ではそうなっていましたわ。アメリにも、他の者にも調べさせましたけど、ここで間違い在りません」
「嘘を言う必要は……」
「あると思いますか?」
「だよな……」
ユリウスが考え込んだ瞬間、背後から老人の声が響いた。
「あんれぇ、こないだの姉ちゃんじゃねぇかい! こないな人っ気のないとこ、貴族の姉ちゃんが来るとこじゃねえさ。悪いこと言わんから帰りな」
カミラが手をひらひらさせて会釈をする横で、ユリウスは質問する。
「すまないご老人、ここに学院に通うセーラが住んでいたと聞いたのだが知らないか?」
「おめぇさんも、姉ちゃんと同じ事知りにきたんだなぁ。姉ちゃんにもいったけどさぁ、そんな人間いないべさぁ。そもそも、そこの家さ十年くらい前に焼け落ちてから、だあれも住んでないさ」
「ご老人、ありがとう御座います」
「ここいらは不吉で幽霊がでるってもっぱらの噂よ、アンタらも早く帰えんなよぉ」
そう言うと、老人は足早に立ち去った。
釈然としない事だらけであったが、ユリウスは顔色一つ変えないカミラを見て、彼女の言葉が正しかった事を悟った。
「そうか、無駄足とはこういう事か。……では何故ここに来たんだカミラ?」
何か理由があるんだろう、と目で問いかけるユリウスに、カミラは静かに答えた。
同時に、そっと腕を解いて距離をとる。
ユリウスには感知しえない『何か』を感じ取ったからだ。
「先ず一つ、貴族の通う私達の学院において、裕福な商人でもなく、ただの平民であるセーラ様のご実家がここには無いという事実、それを知って欲しかったのですわ」
「……だがセーラ嬢は『聖女』だ。そのご家族を悪党や政治に利用されない為に、国で保護しているという可能性は?」
「ええ、確かにそれの可能性は否定できませんわ。でも、王国筆頭魔法使いである私、王を除いて一番権力を持つ私が、貴男の秘密を知っている私が、それを知り得ないという事実はどうお考えで?」
「それは……」
言いよどんだユリウスに、カミラは続ける。
「それに、セーラ様の護衛の任もある貴男に、何も知らされていない事実は? 貴男の立場ならば、居場所までは知らされなくても、ご家族を保護しているという話くらいは、知ってしかるべきでしょう?」
「……お前の結論を聞こうカミラ」
事の重大さに思い至ったユリウスは、険しい顔をした。
「セーラ嬢は、幼い頃から裏家業の訓練を受けた貴男ですら欺く、どこかの間者である。もしくは魔族の手の者、そして或いは――そもそも、セーラという人物、人間は存在しない」
「馬鹿なッ! ある日突然現れて、学院に通い出したとでも言いたいのかお前は、幾ら何でもあり得ないだろう?」
「ええ、普通ではあり得ない事ですわ。もしかすると、真相はもっとシンプルなものかもしれません。――でも、貴男にだけはその可能性を覚えていて欲しかったの」
寂しげに笑うカミラに困惑しつつ、ユリウスは取り敢えず納得する事に決めた。
今真相にたどり着くのには、情報が足りなさすぎる。
「では次だ。さっきお前は“まず一つ”と言った。では最低もう一つ、ここに来た理由があるんだな。――それは、何だ」
カミラは首からぶら下げていた『始祖』のネックレス、その模造品を指で摘むと。
ボロボロの家屋の方へ微笑む。
「さて問題です。……私は何故『始祖』の聖女装束を着ているのでしょう。――お答え頂けませんか、お爺さん?」
「なッ――――!?」
驚いたユリウスがそちらを向くと、立ち去った筈の老人がそこに居た。
「おやおや、気付かれてしまったわい。この分だと儂の正体にも気付いておるのかのう?」
「ご老人ッ! 何故そこに……? いやそもそもカミラ、お前は何を言っている?」
「ふふっ、貴男にしては勉強不足よユリウス。幾ら魔族避けの魔法結界があってもね、抜け穴はあるのよ」
「このご老人が魔族――――ッ!?」
「盗まれた筈の『始祖』の聖女装束、それを着て歩くのは国一番の魔法使い。なら盗んだ者はこう思わない?」
「盗んだ方は偽物で、本物はカミラが守っていると。では――――。来い、聖剣ランブッシュ」
ユリウスは未だ、目の前の老人が魔族とは思えなかった。
しかし鍛えられた第六感が、油断するなと伝えている。
――あれは、人類の敵である、と。
故に、ユリウスは何時でも切りかかれる様に剣を構えた。
「ふぉっふぉっふぉ、老人相手にぶっそうな。だが、そこまで解っているなら話が早い」
ぐらりと老人が倒れ、黒い靄の様な『何か』が立ち上がる。
そして瞬き一つの時間もかからず、人の姿を象った『何か』は角の生えた異形へと変貌。
次の瞬間――――、夜が訪れた。
「その異形ッ! 真昼に夜の帳ッ! 間違いない――魔族ッ!」
カンカンカンと王都中に、けたたましく警報が鳴り響く。
結界が魔族の侵入を感知した証拠だ。
「ふむ。この結界魔法は我らの居場所まで知らせる機能まで付いているのか。大方、援軍を呼ぶモノでろう? ――わざわざ、犠牲者を増やすとは愚かな」
「魔族よ、王都の人々もカミラにも、手を出させはしないッ! 守ってみせる――――ッ!」
ユリウスにとって、初めての魔族との戦いが始まった。
なおカミラはユリウスの後ろで、愉しげに嗤いながら傍観を決め込んでいた。
昨日にも言いましたが、土日は忙しいので夕方七時のみにします。
夢でカミラ様に踏まれ隊、ユリウスになってカミラ様に「お早う」から「お休み」の後も見守られ隊の方々は、是非ブクマや評価を。
そうでなくてもブクマと評価ください、ください(もはや挨拶にしてもいい程のおねだり)
ところで皆さまはカミラ様にバブみを感じているのでしょうか?
いえ、純粋に気になって……。
気になるんで教えてください。




