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22話 誰か! 誰かお客様の中に意味不明な事を言うヤンデレを治せるお客様は居りませんか!?

ふはははは! 今日も感謝の二話投稿!

第一段であーる!



「……はぁ、はぁ。もうここまで来れば大丈夫でしょう」


「……ハァ、ハァ、ふぅ。大分前から振り切っていた気がするが、良しとしよう」


 実は良い人オッディ三世から、逃げ切ったカミラとユリウス。

 彼らは市場通りの終わりにある、大きな公園の木陰で休んでいた。

 少々行儀悪いが、二人とも大の字で寝転がっている。


「はぁ……、ええ、でも、楽しかったですわね」


「ああ、不本意だがな、……確かに楽しかった」


 二人は自然と笑いあう。

 いつの間にか童心に帰り、逃亡ではなく、ただ無邪気に走っていた事に気付いていたからだ。


「偶には、こんな事も悪くない……でも、もう二度と裏通りには行かないぞ」


「あら、残念ですわ。是非ともご一緒したいお店がありましたのに……」


「お前が連れ込もうとした店、あれはどうせ、いかがわしい店だったのだろう? ――次やったらお前じゃなくてアメリ嬢とそこに入る」


「あら、当てつけですか。残念ですわ、そんな事になったらアメリをこの手でありとあらゆる苦痛を与え、縊り殺すしてしまいます」


 カミラの真に迫った口調に、ユリウスは慌てて弁明する。


「――冗談だ馬鹿、本気にするな」


「ふふっ、こちらも冗談ですわ。貴男がそんな事をするヒトでは無いことをちゃんと知っておりますもの。――でも、傷つきましたわ。次に同じ様な言ったら問答無用で、あの店に連れて行き、私の愛を味あわせてあげます」


「悪かった、謝罪する。ただの当て擦りだった金輪際言わないから、そんな恐ろしそうな事やめてくれ」


「あら、気持ちいい筈ですよ?」


「筈って何だ、筈って……まぁいいや。――なぁ、どうしてご大層な名目まで掲げてデートなんか?」


 ユリウスには見えなかっただろうが、カミラは微笑んで答えた。


「――ああ、いつ聞かれるかと思ってましたが、随分と遅いですわね」


「お前の思い通りの様で少し悔しいけどな、……楽しかったんだ、こんな事初めてで」


「なら、良かったですわ。貴男とデートをしたかったのは本当ですもの」


「……でも、それだけじゃないだろ? 俺も直接見た訳じゃないから間違ってるかもしれないが、お前の今日の格好、『始祖』の残した聖女の装束のレプリカなんじゃないか?」


「ええ、良くお解りになりましたね。……そうですわ。王との取引で、私はこの格好で町を歩く必要があった」


「それも、なるべく目立って……だな」


「流石ユリウス様、と言っておきましょうか。でもそれは理由の三分の一、おまけして四十点という所でしょうか」


「…………何だ性悪魔女、まだ他にも理由があるのか?」


 カミラはユリウスから、ある『言葉』を引き出す為に、回りくどく質問する。


「ねぇユリウス様、今日のデート。どうお思いでしたか?」


「どう、とは?」


 カミラの思惑に気付くことなく、ユリウスは考える。


「さっきも言ったが、楽しかった。この答えでは不満か?」


「不満ではありませんわ。でも、もう少し“奥”の回答が欲しいのです」


「奥? 何故楽しかったのか……、お前が望んでいるのは“初めて”の事だから、という理由ではないな?」


「いいえ。――ねぇユリウス様、その“初めて”は“何故”なんですか?」


 その時になってようやっと、ユリウスはカミラの言葉が『毒』なのでは、と思い始めていた。

 カミラの言う“何故”を突き詰めてはいけない気がしたが、同時に、知らなければいけない気がして――――。



「――――ああ、そうか。今日俺は、ただ一人の男だったんだな」



 カミラは口元を歪めた。

 これだ、これが必要だったのだ。


(なら、残るは一つ)



「ええ、ユリウス様は今日、女ではなく、貴族でもなく、私という女の隣にいた一人の男でしたわ。――他愛の無い質問です。


……昨日までの貴族令嬢であるユリシーヌと、今日の、仮初めでもただの男であったユリウス。

 どちらが、――楽、でしたか?」



 それは言葉通り他愛のない質問。

 けれど、ユリウスの生き方を揺るがす『毒』


(…………そうか、これが)


 自覚した時には既に手遅れ、何故ならばユリウスは自分でその答えに辿り着いてしまったのだから。


(ええ、そうですわ。これは人生を急激に変革するモノではない。けれど、ただ少し、少しだけ罅が入る)



「ねぇ、どうですのユリウス?」



 ユリウスは躊躇した。

 これに答える事こそが彼女の今回の目的、答えなくてもいい、しかし既に『毒』は回っている。

 ならば答えないのも負けたようで嫌だ。

 ――故に、答えてしまう。



「…………ああ、今日の方が楽だった」



「ええ、ありがとう御座いますわ」


 カミラは歓喜した。

 これでユリウスを真に自由にする『楔』が、また一つ打ち込めた。

 効果を発揮するのは、まだまだ先であろうが、これは着実にユリウスの『幸せ』に近づいたという事。



(私は幸せだわ……、たとえ将来私が死んでしまっても、ユリウス様の心には今日の事が刻まれて、残りの一生、私を想って頂ける……。それは、なんて、嗚呼、なんて素敵な事でしょう)



「では、ついでと言っては何ですが、一つお願いしても宜しい?」


「――ちッ。何だ言ってみろ」


「先ほどの言葉、――愛するカミラと一緒にいて楽だった楽しかった、残りの人生を愛するカミラに捧げる、をもう一度仰ってくれないかしら?」


「一度も言ってないぞッ!? そんな言葉ッ!」


 余りに欲深で都合の良すぎる改変に、ユリウスは怒りを通り越して驚き飛び起きる。

 そして、ごろんごろん、とそのまま転がって足下まで来るカミラに二度吃驚。


「そ、そんなっ! あの時言ってくれた言葉は嘘だったんですのね。お願いですッ! 棄てないくださいましっ!」


「縋りつくな放せ馬鹿ッ! 棄てるも何も先ず付き合って無いだろうがッ!」


 思わずカミラを足蹴にして振りはなったユリウスだったが、周囲の視線を集めている事に困惑する。


 なおカミラの思惑は、ちょっとふざけたら足蹴をして貰えるかも? であった。

 今は、私の所為でユリウス様が悪者に、流れ次第でそれはそれで美味しい! である。

 ――この女、実にノリノリで、いっそ滅びればいいのに。


「ひそひそひそ、聞きましたか奥様。可愛そうですわねあの女の子、男の方に暴力を振るわれておりますわよ」


「ひそひそひそ、聞きましたわ奥様。どうやら騙された挙げ句に棄てられようとしているみたですね、可愛そうですわ」


「ち、違うんです皆様――――!?」


 げに恐ろしきは、周囲を味方に付けたカミラ。

 やはりこの女は邪悪だと、ユリウスは認識を改めた。

 しかし今必要なのは、大事になる前この場から逃げ出す事だ――――!


「ええいッ! 舌を噛むなよカミラッ!」


 カミラをお姫様抱っこをして、ユリウスはこの場から逃げ出した。

 この場合、いっその事、カミラを見捨てて逃げるのも一つの手だったが。

 その場合、見捨てたという事実を盾に付け入られる口実を与える事となる。

 流石はユリウス様! アメリがいたらそう称えただろう。


「きゃんっ! 私をまたベッドの上で支配するおつもりねっ!」


「いや、ないから。ないから」


「二度も言われた!?」


「ひそひそひそ、奥様ききました?」


「お前達もそれは、もういいから――――ッ!」


 取り敢えず居た場所より、反対側の茂みに逃げ込んだユリウスは、ぺいっとカミラを投げ捨てる。

 カミラも予想していたのか、動じることなく降り立つ。


「……お前はいったい何がしたいんだ、本当に」


「貴男の全てを、この身で感じたいだけですわ!」


「足蹴にされるのもか!?」


「勿論です!」


「駄目だこの女……、いや本当に、何故アメリ嬢はコイツの本性を知って、長年従っていられるのだ!?」


 もはや頭を抱えてしゃがみ込んだユリウスの姿に、カミラは胸をきゅんきゅん高鳴らせながらぬけぬけと答えた。


「――それが、私の人望、というやつですわね」


「なら、その人望とやらを持つ性悪女よ、罰として昼食買って来てくれ……、俺は疲れた……」


「ふふっ、分かりましたわ」


 ごろんと再び寝転がったユリウスの言葉に、カミラは素直に頷いてその場を離れた。



 近く屋台で買った昼食を手に戻ったカミラが見たものは、静かな寝息を立てているユリウスだった。

 カミラは昼食を魔法で異次元に収納すると、起こさない様にそっと近づき、少しも揺らさずに膝枕をした。

 ――ユリウスが、寝たふりをしている事を知らずに。


「……ねぇ、ユリウス様。起きていらっしゃる?」


「……」


 ユリウスは答えない、当然だ寝たふりをしているのだから。

 彼は、カミラがどんな悪戯をするか確かめて、逆襲しようと考えていた。

 しかし、その考えとは裏腹に、カミラはただ優しくユリウスの頬を撫でるだけ。


「嗚呼、嗚呼……、痛かったでしょうユリウス様、『二度と消えない程深い傷』を、綺麗な顔だったのに……ごめんなさい、ごめんなさい……」


(……カミラは何を言っている?)


「苦しかったですわね、無念だった事でしょう……、もう二度と届く事はないけれど、ごめんなさい、ごめんなさい、そして、ありがとう……」


 頬だけでは無い、首筋や瞼を、まるで『傷』がそこにあるかの様に優しくなぞる。


(二度と届かない? 何のことだ、何故謝る、何故礼を言う?)


「ごめんなさいユリウス様、好きになってしまって、ごめんなさい、今も好きでいて。――――私は、幸せになる権利など、資格なんてないのに……」


(何故だ、何故そんな事を言う……?)


 ユリウスは顔に落ちる、暖かな滴に動けないでいた。

 これは、カミラという『女の子』の隠された真実だ。

 きっとアメリにも見せたことがない、隠したかった真実だ。


(お前の言葉の意味は解らないけど、暫くはそうしていろよ……)


 自分の何もかもを見透かして、好意をまっすぐに。

 拗じ曲がってしまうほど大きい感情を向けるカミラと言う一人の女の子の事を。


(いつか知ってやる、いつか、聞き出してやるからな……)


 だから、泣きやむまでは寝たふりをしてやる、とユリウスは、か細い嗚咽を聞き続けた。



解ってきたぞ……!

夕方にはランキングが下がり、朝に戻って、昼に軽く上下する。


これ、一話しか投稿できない土日は下がりっぱなしでは……?

いやでも、先週がまだ一話投稿だったけど、土日で謎のアクセス倍増が起こってたし……やはりランキングは魔境やでぇ。


あ、カミラ様は以前、■■■能力を先天的にもってました。

引き換えに魔王となったので、今は使えませんが。


ではまた夕方7時に!

ブクマや評価も忘れずにな!

レビューだって、俺はどんとこいだぜ!

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