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20話 実質デート、裏があるけどデート

昼前にて総合99位、ジャンル8位にランクインしています。

※投稿直後、総合84位確認、何か伸びてるっ!? マジ頑張りますっ!


読んで、ブクマや評価をくださる方々の御蔭です。

本当にありがとうございます!



 次の日、カミラとユリウスは城下町に来ていた。

 聖女装備『始祖』シリーズ探索という建前があるため、ゼロス王子とヴァネッサ、その配下の三組のカップルは別行動である。


「私、夢だったのですわ。ユリウス様と一緒にこうして歩くのは」


「――はんッ。俺は夢にも思わなかったさ、お前とこうして歩くなんてな」


「あら嬉しい、喜んでいらしてくれるのね。それに今日は昨日みたいな、余所行きの言葉使いではないなんて。これは期待しても良いのですか?」


「皮肉だッ! この性悪魔女め。……お前に向けて取り繕う必要性を感じないだけだ、勘違いするな」


「ふふっ、解っていますわ。――それでも、嬉しいのです。――さ、エスコートしてくれますかユリウス様?」


「不本意だがな。……どうぞレディ」


 カミラはユリウスの差し出した腕に、そっと自らの腕を絡ませた。

 そして、賑わう市場通りに足を進める。


「そういえば、ユリウス様は城下町は初めてですか?」


「馬車に乗って移動する時に通るくらいだな。……貴族街の方なら行ったことがあるが」


「ふふっ、それなら今日は私が案内しますわ。一度来たことがありますから」


「へぇ、お前が領地を自分の足で見て回っているのは知っていたが、こんな下町まで来たことがあるのか。……何かよからぬ事の為に来ていたのではなかろうな?」


「ふふっ、私の事が解って頂けているようで嬉しいですわ。――ええ、前に、ちょっとセーラ様の事で確かめに訪れたのです、ここはセーラ様の住んでいた所ですから」


 さらっと不穏なな事を告げるカミラに、ユリウスは端正な顔を歪めた。


「まったくお前は……、彼女の両親には何もしていないだろうな。一応後で確かめに行くからな!」


「ユリウス様がご心配なさる様な事は何も。でもきっと無駄足ですわよ」


「だといいがな……」


 少し厳しめの口調であったが、ユリウスの興味は町の様子にすぐに移り、興味深そうに目を輝かせた。

 それに目聡く気付いたカミラは、視線の先の様々なものを説明する。


「ユリウス様、あれは解りますか。あの噴水の前では旅の吟遊詩人がいつもいて、人々を楽しませているのですよ」


「見ればわかる……、でも初めてみたな。美しい音楽を、楽しい音楽を聞く顔は貴族も民も一緒なのだな……」


「ええ、同じ人間ですもの。……でもわざわざそんな事を言うなんて、貴族が嫌になりました?」


「別に貴族がどうとか、民がどうとかそう言う事じゃない。ただ……」


「ただ?」


「俺は王族を守る闇として育てられた。貴族という人種の事なら何でも知っていると自負している。けど、支える民の事は知らなくて、新鮮で、こう言う光景も良いものだな」


「ええ、本当に」


 ユリウスはきっと、想っているのだとカミラは気付いた。

 ユリウスの本当の母は、下町出身のメイドだったという。

 きっとこの光景に母を重ねているのだろう。


(それはとても自然な事で、当たり前な事で……。嗚呼、でも妬けてしまうわ。ユリウスにはもっと私を見て欲しい。

 ――どんな光り輝く景色であろうと、暗闇に包まれた非業の叫びが上がる中でも。

 私だけを、なんて)


 だからカミラは殊更明るい声をだし、ユリウスの注意を引いた。


「見て下さいユリウス、あそこで奇妙な果実が売ってますわ! ほらっ! あれですわっ!」


「……ふうん、珍しいなアレは遙か東国の果実だと、本で読んだ事がある。挿し絵よりずっと綺麗な橙色なのだな」


 ユリウスの興味が引けたと、にんまりしたカミラは財布を取り出しその露天の店主に話しかける。


「――ご店主、その橙色の丸いの二つくださいな!」


「おっ! その綺麗なおべべはご貴族様かい? ウチの果物に目ぇつけるたぁ、解ってるじゃねぇか」


「確かそれは、みかん、と言うのだったか?」


「良く解ってるじゃねぇかあんちゃん! そうさ! これは極東の町から輸入した、ここじゃ珍しい果物だ。味もピカイチ、お値段もピカイチ! と言いたいが、見たところデートかい? お安くしとくからもっと買っておくれよ」


「ふふっ、いいですわよ――ならこれくらい買うから、こんくらいのお値段でどう?」


「お、おい。そんなにあっても食べきれないぞカミラ?」


「後で皆に配ればいいのですわ――さあ、どうですの?」


 カミラとしては、久しぶりの日本の食べ物。

 お安く手に入れば更によし、と店主の禿親父と値段交渉を始める。


「この木箱一箱もらうから、一個三十円にして」


「馬鹿言っちゃいけねぇよ。綺麗な姉ちゃん。――三箱買うなら考えてもいいがな!」


「じゃあ二箱買うから十円にして」


「下がってるじゃねぇか! これじゃあおまんまの食い上げだぜ貴族様よ!」


「……ちっ、やっぱり気付いたわね。じゃあ一個三十一円!」


「ケチくせぇ事いいなさんな、――一個五十円!」


「高い、――二十九円!」


「やっぱ下がってんじゃねぇか!?」


「ええい、なら二十円よ!」


「もっと下げてんじゃねえぞぉ! 一個百円!」


「そっちこそ、上がってるじゃない!」


 余談だが、原作からして通貨は円である。

 中世風ファンタジーとは、いったい何だったのか……?

 兎に角。

 周囲が注目するほど白熱した値切りバトル。

 ユリウスはそれ見ながら、カミラの印象を少し改めていた。


(今までアメリ嬢が、彼女と共にいるのか解らなかったが、何となく解った気がする)


 ユリウスにとってカミラは、何食わぬ顔で自分の秘密を知っていた上、好きだと公言してせまる、怪しい人物である。


 無論、ふてぶてしい態度に相応しい実力と、顔に見合わぬ誠実さを持っている事は解っていた。

 つまり何が言いたいかというと、――存外に人間味のある人物だという事だ。


「……成る程、殿下との縁談話の時の落ち込みようは演技ではなく、俺が考えているより表裏のない人物だった訳か」


 それはそれで、好きだと言う言葉が真実味を帯び、どうしていいか解らなくなるが。

 ユリウスは今はそれでもいい、と自分の感情が解らない事を受け入れた。


 ――ほんの少し、ほんの少しだけ、自由への希望を持ちながら。


 ユリウスが知らず知らずの内に、心からの笑みを浮かべていると、一際大きい歓声が上がった。

 どうやら、交渉が纏まったようである。


「やったわよユリウスっ! 全部で木箱を十買う代わりに、一個二十円で手に入れたわ!」


「はっはっはー! お嬢ちゃんには負けたよ! まさか今流行で品薄のセレンディアの野菜を、この店まで直接届けてくれるたぁ、男を見せざるおえないな!」


 カミラと青果露天の禿店主は、仲良く肩を組み堅く握手を交わしている。

 詳しい所はユリウスには解らなかったが、ウインウインで終わった様だ。


「ああ、うん。お前が満足ならそれでいいんだ。でもどうするんだ? そんなに持ちきれないぞ」


「あら大丈夫よ」


 カミラは店主から、みかんを二個受け取るとユリウスの側に戻った。


「じゃあね、良い商談だったわ店主!」


「おう! 嬢ちゃんもデート楽しめよ! 残りは届けておくからな!」


「という訳よ」


「……流石というか、なんというか、しっかりしてるのなお前。でもその二つは? 今そんなに食べるなんて空腹なのか?」


 ユリウスの疑問に、カミラは優しく笑って答えた。


「馬鹿ね、一つは貴男の分です。食べた事なかったでしょう? ――それにね、知ってほしかったの。私の心の故郷の味を」


「心の故郷の味? 変なことを言う奴だな。……でも、その気持ちは有り難くいただこう。昼食のデザートにでもするか」


「ええ、そうしましょう」


 先ほどよりもう少しだけ近い距離で、二人は仲良く歩き出した。



土日を除いて、暫くの間は二回投稿です。

(土日はリアルの都合上、二回更新する量を書く時間が取れないので)


それはそれとしてポイントじゃぶじゃぶください(ド直球)

ポイントくださるかたにはなー、夢でカミラ様が踏んでくれるご褒美がなー。

あるのになー。かーッ残念だなー。

(/▽゜\)チラッチラッ



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