18話 王様? ゲームではモブだだけど?
皆様が毎日読んでくださる御蔭で、少しずつブックマークや評価が増えてます。
感謝の気持ちを込めて、数少ないストックを投げ捨て本日は二回投稿します。
その日は朝から快晴。
両親に連れられて、カミラは王城の居住区にある王族専用の庭園に来ていた。
貴族令嬢として、悪役として扇は必須と、配下の芸術家に城が一つ建てられる素材で作らせたのだ。
なお、原作でもこの世界にも、現代日本の様に扇を持ち歩く習慣などなく、今の貴族女性の扇ブームはカミラのお陰だ。
(王子との縁談はいいけど、何でゼッド王までいるのよ! この後すぐにユリウスが来るっていうのに!)
(す、すまない。予想してしかるべきだった!)
目と目で会話する二人、その様子は親たちには好ましい光景として写っている事に気づいていない。
何でと言われても第一王子の縁談で、更にこの国一要注意の最強の魔法使い、秘匿されているが現魔王が相手。
残念でもないし、当然である。
目はニッコリ笑って、扇で隠されたカミラの口はワナワナと。
そんな娘の様子を無視して、親同士の歓談は続いていた。
「ふふっ。本日は誠良いお日柄で、目出度い話に相応しい天気ですわね。――ほら、アナタも拗ねてないで」
「はっはっは、構わないぞセレンディアの奥方、同じ父として、娘を嫁がせる苦しみはよく解りますからな!」
余談だが、ゼロスには三歳上の姉がいる。
今は臣下に降嫁して、王城では暮らしていないが。
「寛容なお言葉、忝く思います陛下。ええ、浮いた話一欠片もなく、破天荒な事ばかりをする娘でございますが、どうか何とぞ……」
「おお、解るぞよ。我が娘ジーティリアも、カミラ嬢程ではないが型破りだったからな。実際に結婚するまで心配だったものよ」
ゼッド王
彼の人はこの大陸を統べる王でありながら、原作ではちょい役で出てくる、カミラより少しマシなモブであった。
実際に会った所、全てにおいてゼロスの上位互換、暗君どころか物分かりのいい王であることを、カミラは確認している。
(私が魔王になった事も、そのまま学院に通い貴族令嬢でいる事も許容した陛下だもの、――やるしかないわ!)
(ぐ……、そうだな。やるしかないな。では行くぞ……!)
魔法を使わず、目と目で意志疎通する二人。
相性は良くても、恋愛感情はお互いにないのでしょうがないのだ。
特にカミラは、ユリウスと共にいる為に魔王を簒奪した剛の者だ。
遅かれ早かれ、似たような事になったであろう。
「――ご歓談中だが申し訳ない。陛下、そしてセレンディアご夫妻。どうか俺の話を聞いてくれないだろうか」
「ほう、言うてみろゼロス」
学院に入る前は子犬だったのが、今では狼。
その成長に満足しているジッド王は、快く息子の言葉を促した。
「この縁談。大変光栄なのだが、少し待って、いいや出来れば破談にして欲しい」
「――ほう、カミラ嬢では不服かゼロス」
「王子? 私達の娘に何かご不満でも? ヴァネッサ様の事がお不安でしたら、後で娘によく言い聞かせて――」
面白そうにジロリと睨むジッド王と、心配と怒りが綯い交ぜになった夫妻に、ゼロスは敢然と立ち向かう。
え、カミラ様? 手を震わせながらお茶してるよ。
「いや、違うのだ。カミラ嬢に不安があるわけではない。ヴァネッサとも仲がいいのだ、その点は問題ではない」
カミラの両親に真っ直ぐに語ると、次はジッド王へ。
カミラは扇で隠しながら深呼吸、静かに目を伏せその時に備える。
「父上よ、陛下よ。俺とて理解しています、この婚姻によって我が国の政治上のバランスはより強固に保たれ、更には王威も強まる」
「ほう……、そこまで理解してるか。では何故だ」
「俺とカミラ嬢はあくまで友人であります。そしてなにより――――、当の本人に強く、強く拒否する理由があります」
その言葉に、親たちの視線はカミラへ集まった。
カミラはそっと目を開き、扇をパチンと畳む。
「申し訳ありません陛下、そしてパパ様ママ様、昨日のうちに言えればよかったのですが、生憎と少々時間がかかりまして」
「……時間? カミラちゃん、いったい何を?」
「カミラ? 真逆、真逆……っ! ――貴殿は!?」
「――真逆、ゼロス! どういう事だっ!」
娘が言い出す『何か』に、そして、近づく『誰か』に気づき、クラウスの顔がジッド王と共に驚愕に染まる。
そして、カミラが口を開こうとした瞬間、その者は現れた――――!
「――突然の事、申し訳ありません。私はユリウス・アズランド。カミラ様と交際をさせて戴いている者です」
「ユリウス様っ!」
カミラの顔が喜色に輝く。
しかし一方で疑問を感じていた。
(アズランド……どうして? それは普段は決して名乗る事のない、ユリウス様の本当の、前王の王弟殿下の家名の筈……!)
カミラは余り実感していなかったが、ユリウスはカミラに恩義を感じていた。
王子とヴァネッサの仲、『聖女』セーラの危険性、そして何より、理由はどうであれユリウスという本当の自分を見てくれた事。
それが彼に、――本当の家名を名乗らせていた。
――そしてそのユリウスの誠意は、確かにしっかりとジッド王とクラウスに伝わる。
「“ユリウス”は俺にとってもかけがえのない大事な友人。故に無礼は承知でこの場に呼ばせて貰いました
。どうか、責めるなら俺に」
懐かしい者を見る様な目をしたジッド王は、しかし厳しく言った。
「そう簡単に自らを罪を認めるような事を言うな、我が子よ、お前は成長したと思ったが、まだまだ未熟の様だな精進せよ」
「――はっ!」
ジッド王は軽率な言葉を注意しただけで、ユリウスの事には触れなかった。
これは、事実上の黙認を意味する。
カミラとユリウスは笑顔を向けあった。
次は夜七時頃です。
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