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14話 伝説の装備あっても、これADV乙女ゲーだったからね!

昨日より、総合日刊にランクインを確認しております!

皆様に全ての感謝を……!



 先日、愁嘆場を見せたカミラだが、それはそれ、これはこれの精神で、今日もユリシーヌと共に生徒会の仕事の手伝いをしていた。

 今更特記することでもないが、ユリウス目当てである。


 徐々に他の生徒達にも、カミラがユリシーヌと『特別』な仲になりたがっている事が広まってきているのか、暖かな目で見守られていると、カミラはニマニマと笑った。

 ――アメリに言わせれば、生暖かな、であったが。


「別にわざわざ手伝って戴かなくてもよいのですよ、カミラ様……」


「あら、その方が早く終わりますでしょう?」


「……あんな事があったのに、よくケロっとしてますね」


「カミラ様はそんなもんですよユリシーヌ様、何があったか解りかねますが、数秒後には復活している方ですし、もうちょっと雑に扱ってもいいのですよ」


「勉強になりますアメリ様」


「……貴方達、私の扱いちょっと酷くありませんか?」


 ――概ね事実である。


「いやいや、気のせいですってカミラ様。んでですね……」


 ユリシーヌを見て少し口ごもるアメリに、カミラは問題ないと、先を促す。

 何か王族に関するトラブルでも、耳に入ったのだろうか?


「つい先程入ってきた情報なのですが、どうやら昨日の夜に、王国の宝物庫に盗みに入った者が出たみたいなんです。盗まれたモノがモノだけに、王は戒厳令を引いて、大規模な捜索部隊を編成しているようですよ。もしかしたらカミラ様もお呼びがかかるかも、と」


 アメリの情報に、ユリシーヌはぴくりと眉を動かし、次いで溜息を出した。


「……はぁ。まだ貴族にすら発表されてない情報を、私ですら数刻前に知らされた事を、何故、下級貴族の娘である貴女が知っているのか解りませんが――」


「――全てカミラ様のお陰です!」


「そう、また貴女なのねカミラ様……」


 ジトっと睨むユリシーヌに、カミラは慌てて声を上げる。


「誤解! 誤解ですわユリシーヌ様っ! アメリっ! 貴女もふざけないの! 確かに貴女には私の右腕としてそれなりの権力を与えているけれど、その情報網はほぼ自前じゃないの!」


「という事ですがアメリ様?」


「いやー、ははは~。こ、これもカミラ様への忠誠心が鼻から出た証的な何かでして……」


「鼻から!? 貴女の忠誠心は鼻から出るの? え、初耳なんだけど!?」


 がびーん、と半ば本気で信じかけているカミラに、ユリシーヌは呆れ顔で首を振った。

 やれやれだぜ。


「……カミラ様は、意外と、その、純真? な所がおありなのですね」


「ええ、それがカミラ様の魅力なのですユリシーヌ様」


「本気の目で言っているあたり、似たもの主従なのね貴女達……、まあ、アメリ様の大きいお耳の件は、とやかくいいませんわ。伝える相手がカミラ様ならば、最悪だけは避けられそうですから」


「ユリシーヌ様、それって褒めてくれているのかしら? 私、喜んで飛びついてもよろしくて?」


「おうつくしくそうめいなカミラ様、ステイ」


「わんっ……、って何をさせるのよアメリ」


「話が進みません、双方ともステイ」


「わん」

「きゃん」


 ご丁寧にも犬耳を魔法で出したカミラ達のノリの良さにつられ、ユリシーヌも自分の頭に犬耳を出す。

 ――ユリシーヌ様、知能指数下がってません?


 ともあれ、こほん、と咳払いをした後、話題を宝物庫の盗難へと戻す。


「それでアメリ様。私の所にはまだ詳しい情報は降りてこないのですが、何が盗まれたか、犯人の手掛かり等はありますか?」


「ええ、任せて下さいユリシーヌ様。……あ、カミラ様一応防音の魔法を、ちょっとヤバ目の話しなんで」


「私、一応貴女の最愛のご主人様なんだけど……、ていっ」


 カミラが魔法を行使した事を見届けると、アメリは口を開いた。


「それがですね……、盗まれたのはあの『始祖のティアラ』『始祖のネックレス』『始祖のブレスレット』『始祖のアンクレット』『始祖の星杖』の伝説だと言われていた聖女装備一式なんですよっ!!」


 原作では、それぞれの個人ルートで内一つが手に入り、魔王を討伐する逆ハーレムルートでのみ、全て手に入る装備だ。

 ――もっとも、装備と言ってもRPGではなくただのADVだったので、シナリオ上の重要アイテム以上の意味は無かったが。


「それって、昔私が見つけて、使い終わった後王に上げたやつ?」


「そう! それですよカミラ様っ!」


「…………長いこと行方不明とされ、近年見つかったと聞いていましたが、それもカミラ様の仕業だったんですね」


「あ、あら? ユリシーヌさま大丈夫? 凄く疲れた顔をしていらっしゃるけど、……私のお膝でお昼寝なさる?」


「ああいいですね、カミラ様の太股はいい感じにふかふかで、触ってよし寝てよしですよっ!」


「やった事あるのですねアメリ様…………」


 果たして今のは誘惑だったのか、天然だったのか、ユリウスは深く悩みかけたが、鋼の理性で話を本筋へ戻す。

 ――無論、誘惑半分だったので、知らぬが仏ではあったのだが。


「伝説の装備の出自の事は置いておいて、『聖女』と目されるセーラ様がいる今、それが盗まれるという事は国際問題に発展されかねません。

 ――それを盗んだ者の目星は? 王城の宝物庫です、精鋭による厳重な警備と、最新鋭の警備装置はどうしたのですか?」


「我らがカミラ様直々にご考案の警備装置は、どうやら人間ではあり得ない程の魔力で力業で黙らせた形跡があると……、それから見張りの兵士の方も、魔法で眠らされた形跡がある、との事です」


 瞬間、カミラとユリシーヌの気配が鋭くなった。


「……アメリ、もう一つ。情報があるのではなくて?」


「――真逆、カミラ様はそうお考えに?」


 犬耳をつけたままシリアス顔をする二人に、アメリもシリアスな顔で続ける。

 ――だってアメリも犬耳をつけたままなのだから。


「その眠らされた見張りの証言では、突然、夜の闇が濃くなった様な……との事でした。でも何か意味があるんですか?」


 シリアス顔を速攻で崩し、?を浮かべて首を傾げるアメリに、カミラもはて? と首を傾げた。


「ああ、無理もありません。三十年間の戦いより長いこと活動の気配はありませんでしたし、学院でも近年、三年次で少し教えるくらいですから」


「そうなのね、私てっきり一般常識だとばかり……そんな事になっていたのね」


 二人で分かり合う姿に、アメリはじれて答えを促す。


「うぐっ、不勉強で申し訳ないです。――それで、何なのですか?」


「そうね、セーラがいる以上、これから関わる事が多くなるでしょうし、後で調べて置きなさい」


「それがいいでしょう。――そして見張りが見たモノの正体ですが」



「――『魔族』よ」



 端的に告げたカミラの言葉に、アメリは驚き、ユリシーヌは顔を険しくした。


「『魔族』!? 真逆、セーラが『聖女』である事を知って妨害にでた、そういう事ですか!?」


「覚えておきなさいアメリ。『魔族』はね、強力な魔法の力を持つけれど、そこに存在するだけで周囲に夜を呼ぶのよ。その見張りが目撃した現象も、きっとそれね」


「ええ、そう考えるのが自然でしょう。しかしこの王都には魔族除けの『結界』が、王城にはより強固にかかっている筈、魔族専用の感知魔法もかかっていると言うのに、いったいどういう手段で……」


 悩むユリシーヌを、カミラは少し罪悪感を感じながら見ていた。


(……どっちかというと、いえ、どう考えても私が原因よね。確かに似たようなイベントが原作にはあったけれど、それは装備が各地で眠っている状態だったし。

 原作の黒幕は高位魔族に憑依されたナイスミドルな学院長だったけど、彼にはやって欲しい事があるから、今は言えないし……)


 カミラが起こした改変はそれだけでは無い。

 これは故意ではなかったのだが、魔王を簒奪した時、その溢れ出る魔力の制御に誤って、その場を守護していた魔族の番人ごと、魔族にとって『聖地』と呼ばれる場所を、跡形もなく吹き飛ばしている。


(私の考える未来に、魔族はどうでもいいからって、顔を見せることなく放置したのは、流石にまずかったかしら……、いえ、でも十年近く経つのに何の接触もなかったし……)


 カミラは誤解し、それゆえ知り得ない事があった。

 魔族にとって魔王の復活は悲願で、魔王に絶対服従ではあったが。

 まず第一に、カミラが正当な手段で魔王を継いでいない為、絶対服従になっていない事。

 それにより第二に、魔王殺害による簒奪を知った魔族が復讐の為に動いている事であった。


「ま、まぁ。ここで我々が考えていても、何が出来るという訳でもありませんし」


「……それもそうね。何か出来ることがあれば、殿下を通じて下知があるでしょうし」


「まぁ、カミラ様はこの国で一番の魔法使いですから、すぐにでも協力要請がくるかもしれませんね。……あ、そうそうカミラ様に、もう一つ伝えるべき事があったんです」


「あら、私は席を外しましょうか?」


「大丈夫っす、重要な事でもないし、すぐ解る事ですから」


 そう言うと、アメリは妙な目でユリシーヌを見る。

 アメリは心なしか、先程よりも疲れている顔をしていた。


「……重要でないと仰るなら、その同情的な眼差しは止めてもらえませんか?」


「頑張って下さいユリシーヌ様……、わたしとユリシーヌ様なら、きっと乗り越えますから!」


「何が起こるんですのよっ! とっとと話しなさいアメリっ!」



「では言いますよ。――叔父様達がこの王都に来ます、いえ、もう来てますカミラ様」



 は? え? と声が流れた後、部屋には沈黙が漂った。



 一方その頃、学院の懲罰房のセーラの部屋の中に、一人の来客が訪れていた。


「貴女の予測通りでしたぞ、首尾良く『始祖』の遺産を手に入れる事が出来ました生徒セーラ。――いいや『聖女』セーラ様」


 皮肉気に笑うナイスミドルの男に、セーラもクケケケとあくどく笑う。

 王都に掛かっている魔族除けの結界には、実は穴があった。

 それは目の前の存在、人間に憑依した魔族ディジーグリーその者である。


「人間に憑依している魔族なら、結界にひっかからずに宝物庫に入れる。まぁ原作知識ツエーってやつね。――それよりも、解ってるわねディン学院長、いえ『魔族』ディジーグリー」


 ディン学院長。

 今現在、魔王殺しの捜索をしている一人である彼は、転生者で『聖女』のセーラと手を組む事にしたのであった。

 今回の宝物庫の盗難も、セーラの入れ知恵という訳だった。


「我らは復讐の為に――」

「ええ、あのモブ女をぎゃふんと言わせてやるんだからッ!」


 この二人の存在が、学院に、王都に、引いてはカミラとユリシーヌの関係に大きな嵐を呼ぶことになるのだが。

 それを知るものは本人達を含めても、世界のどこにも居なかった。



明日からしばらく、コテコテのラブコメイベントです。

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