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第3話 後編

カラオケ店に入り5人で受付カウンターに行く。啓介がメンバーカードを見せ、時間を選択する。3時間を選択しマイクの入ったカゴを渡されそれを手に持つ。「ごゆっくりどうぞ」と受付カウンターの女性がそう言うと5人は指定された部屋に向かっていった。




愛菜が部屋のドアを開け、女子たちが先に入り啓介は最後に入った。愛菜は早速備え付けられている機械を持ち、歌う曲を選択していた。もう一台の機械を和泉が持って選んでいた。気が早いな、そう感じた啓介。




そして、愛菜が選択したのは所属しているグループ、SMILEの歌。そしてその曲の名前はグループ名でもある「スマイル」。愛菜のお気に入りの曲でもあった。




やはり、アイドルなだけあり歌はうまい。中学の時から愛菜は歌が上手かった。愛菜が歌っていると女子3人が合いの手を入れたりハモらせたりしている。さすがだ、それをみて啓介は感動している。まるで、俺だけのためだけにやってくれているライブのようだった。




啓介は愛菜を見る。歌っている姿は本当に嬉しそうに見えた。もうこの人は余命1ヶ月だという事を忘れているのかもしれない。愛菜、いい仲間達を持ったな。









愛菜の次に結衣が歌い、玲奈が歌い、最後に和泉の順番に歌っていった。当たり前だかみんな歌がうまい。持ち歌は当然ながら他のアーティストの歌も上手く歌った。




「次だよね?」と和泉にそう言われ座っていた啓介の膝の上にマイクが置かれる。自分の順番が回ってくるまで特に歌う歌は決めていなかった。急いで機械を手に取り曲を決める。適当にラブソングを入れ機械を机に置く。啓介はその場に立ち上がりマイクを握る。そして啓介はラブソングを歌い始めた。





歌はあまり得意な方では無かった啓介だったが、その時は何かが違った。歌っている途中、愛菜達の方を見る。4人ともこちらをじっと見ている。啓介は、歌詞にある「君」の部分を「愛菜」に変えて1度歌ってみた。愛菜はそれを聞いて照れていて、顔を(うつむ)かせる。女子達のいじりも入り、愛菜は余計に顔を上げづらくなっている。




歌い終え、啓介は座りマイクを愛菜に手渡した。その顔は赤くなっていてものすごく照れているようだった。「お似合いカップルー!」と玲奈に言われ、2人は顔を赤らめる。このグループ、恋愛禁止なのにな…と目をそらしながらそう思う。その後も、3人のいじりはなかなか止まる事はなかった。
















時刻は、もうすぐ午後4時。もう少しで3時間のカラオケが終わる。歌ったのはほとんどがSMILEの曲で他のアーティストの曲はほぼ歌う事はなかった。5人は忘れ物がないか確認し部屋を出る。そして受付カウンターへと歩いて行った。








「みんな…割り勘でいい?」啓介はみんなに聞く。「大丈夫ー」などそれぞれ返事をもらう。受付カウンターに行き受付カウンターの女性にマイクなどを渡し、会計をした。それぞれ財布からお金を出し合い会計を済ませた。






会計を終わらせ、駐輪場へと向かっていく5人。まだ空は明るく夕方の空ではなかった。女子達はあれだけ歌ったのにまだ元気で、駐輪場に向かいながらはしゃいでいた。








駐輪場へ着くと、啓介は自転車の鍵を外した。まだ女子達は話しているのでそれを待った。自転車のサドルに肘を置きスマートフォンを使っていると女子達が啓介の方に駆け寄ってきた。





「ねぇねぇ、みんなで写真撮ろう?」と愛菜がスマートフォンを見せながら啓介にそう言ってきた。「別にいいけど」と返事をし愛菜がスマートフォンのカメラアプリを起動し内カメラにした。そして啓介は周りを女子3人囲まれてしまい、そのまま愛菜がカメラアプリのシャッターボタンを押しシャッター音が響く。






「啓くん、顔すごいことになってるよ?恥ずかしかった?」愛菜がさっき撮った写真を見せながらそういった。




「そ、それは…ねぇ?囲まれたことなんでなかったから…」顔を赤らめながらそういう啓介。嬉しかった、その言葉はさすがに言えなかった。




「そうなんだ。まぁ3人とも会うのはほぼ同じ初めてだもんね。なっちゃうよね」愛菜がスマートフォンをポケットにしまう。同情してくれたのが本当に嬉しかった。「克服するなら私たち手伝うよ?」と結衣が言う。さすがにダメだろう、と思い啓介はそれを断った。













30分ほど5人は外で話していた。しばらく経ち、啓介と愛菜は自転車に乗り、愛菜は3人に手を振っている。啓介もそれを見て片手でバランスをとりながら3人に手を振る。そして2人乗りをしてそのカラオケ店から離れていった。




「あー…疲れた…」とあくびをしながらそう言う愛菜。「確かに、歌い疲れたね」あくびがうつったのか啓介もあくびをした。今日の夜もよく眠れそうだな、そう感じていた。




2人の乗っている自転車が信号待ちに止まると愛菜は乗り方を変えた。そして啓介の腹部に両腕を回し頭を背中に押し付けられた。愛菜、寝る気だな、よくこの状態で寝れるな、そう思う啓介。啓介が思った通り信号待ちを終え、しばらく進んだら愛菜は啓介の背中を借り眠ってしまっていた。





行きと同じ時間を漕ぎ、2人の家に近づいてきた。



愛菜の家の前に着き、自転車を止める。そして愛菜を起こした。ゆっくりと愛菜が自転車を降り啓介の方へと来る。





「啓くん、今日も付き合ってくれてありがとうね。あと…何個残ってたっけ」



「うーん…多分あと4つくらいかな。旅行行きたいって書いてあったけど、どこ行きたいの」啓介は聞き忘れていたことを思い出しそれを聞いた。




「んー…京都とか…沖縄とか…北海道!」定番の観光地のある県名を挙げる愛菜。そのうち計画でも立てておこう。





「わかったよ、こっちで計画は立てておくからね」啓介は愛菜にそう言う。微笑みながら「ありがとう」と愛菜は言ってきた。その微笑んだ顔が啓介は好きだった。








その後2人は、手を振り合い別れお互いの家へと入っていった。





1〜2日ほど、休んでから旅行へ行く事を愛菜に言った。なぜなら、余命が1ヶ月しかない。ゆっくりとしていたらあっという間に1ヶ月が終わってしまう。そう思って、啓介は愛菜に言った。






啓介は寝る前にスマートフォンを起動しコミニュケーションアプリで「おやすみ」と愛菜に送り、その日は眠りについた。

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