プロローグ
第一次世界戦線の定かにとある科学者が兵器を完成させた。
その兵器は『E』と名付けられ、科学者を雇っていた国はサンタクロースからオモチャを貰ったかのように大喜びした。
『E』の試作実験はそれは強大な威力を持つ兵器だった。実験の結果を見た雇い主達はすかさず兵器を担いで、憎き敵国前線へと向かった。
その日は薄い雲が空に広がり、視界が悪かった。風も強く、常に力を入れていなければ体制を崩して落下し兼ねなかった。しかし、そんな無謀な作戦が功を生したのか、敵国は目と鼻の先の所で襲来されていることに気づき、慌てて迎撃を始めるも、時すでに遅し。
備えていた兵器を機体から切り離し、敵国の陣地へと投下した。
敵国前線に落下した『E』は、上空三百メートル付近で雷管が作動し、眩い光が一帯を包んだ。その瞬間、凄まじい突風と熱が何キロと及ぶ範囲を襲った。
何もかもを焼き尽くした『E』は、奪ってきたモノ達の象徴と言わんばかりの大きなキノコ雲を作り出した。
投下に成功した国は大いに喜び、拍手喝采は留まることはなかった。
握手をし、抱擁し合い、書類を撒き散らし、表現出来るありとあらゆる喜びを上げた。しかし、それもつかぬ間であった。
歓喜に包まれている中、突然情報部が大声を発して妨げた。
軍のトップ集団は困惑しながら何事かと問いただした。
問われた情報部の者は滴る汗を掻きながら、震える下唇を動かしてゆっくりと答えた。
前線が崩壊した
その答えに軍のトップ等は狂った音調で一斉に訳を問いただした。
問いただされる情報部の者は送られた電報を手に報告した。
その内容は敵国に『E』を投下した時刻とほぼ同じタイミングで敵国も同様に自身らの部隊前線にも『E』と同じ威力を持った兵器を投下したと報告された。
それから国は急いで科学者の元に行き、何故同じ兵器が敵国も所持していたのか問い詰めた。すると、科学者は敵国にも同様の『E』を渡したと笑みを浮かべなから答えた。
国は科学者を契約違法として捕らえ、極刑を与えるまで牢に入れることにした。
科学者は牢に入る時、笑みを浮かべながら語った。
ーー急いで武装を強化した方がいい。地獄へ行けなかった者達が再び巡ってくるぞーー
国は狂者の戯言だと決めけ、その場を後にした。
だが後に、国はその言葉の真意を知ることとなる……。
『E』が落とされてから3日過ぎ、国はかつて前線であった場所に部隊を送り、生存者と現場確認へと向かわせた。
前線周辺では建物の一部と思われる瓦礫が地面に突き刺さる形で多数散らばっていた。それは前線に近づけば近づくほど増していき、途中には生物の一部と思われる肉片が黒焦げになって落ちていた。
そして、前線があったであろう場所は来る途中の日にならないほど大地が焼け焦げ、呼吸をする度に気管を焼かれるような熱が空気中に未だ覆っていた。
そんな空気の中でも臭いは感じ取れた。肉が焼け、木々が焼け、土が焼け、水が焼け、空気が焼け。ありとあらゆるモノが発する死の臭いが充満した。
黒き大地には建物の鱗片や生き物であったであろう肉の塊が、黒炭になってそこら中に転がり、生という生を一切感じることは無かった。
そんな地獄を部隊が見ていると、突然黒炭になった肉塊が震え始めた。左右上下に動き、次第にその動きは激しくなった。だが突然動きが止まった、かと思った矢先、血色の生物が黒き塊から卵の殻を破るようにして現れた。
人のような原型をしている生物ではあったが、それは人の姿からかけ離れた人ならざるモノであった。
皮膚は爛れ、頭の先から口まで大きく裂け、黒々とした歯を尖らせ、耳は剃り落ち、爪は熱で溶けて指と同化していた。
赤々と色づいていた生物の体であったが、徐々にその赤さは黒ずみ始め、それと同時に黒さが進むごとに生物の動きがぎこちなくなり、最終的には全身光沢を放つ黒い岩のような体となって正に石像の如く動かなくなった。
だが、それも一時な物であった。体の隅々に亀裂が走り、その隙間からは赤々とした光が漏れ、まるで石榴のようだった。
人ならざるモノは茶黒く佇む雲空に向かって咆哮を上げた。
それが合図だったかのように、周辺に転がっていた肉塊から次々と人ならざるモノが這い出てきた。
異変の事態に部隊はたじろい始める部隊。そんな中、人ならざるモノは部隊目掛けて猛進を行った。
部隊は迎撃を始めるが、銃声で他にいた黒き生物達が集まり始めてしまった。
国は部隊から救護要請の通信を受け取ったが、交信中に突然途切れてしまった。それから部隊からの連絡は途絶えた。
そして、これが恐怖と憎しみの始まりの日となる。
初めまして、兎二本 角煮と申します。
まず初めに、私の作品を手に取ってくださり、ありがとうございます。
小説書き始めてまだ月日は浅く、常に壁に打つかっていますがこれかも努力する所存です。
遅筆ではありますが、今後とも宜しく御願い致します。