えええ?ファンタジーの世界じゃなかったのここ?
とあるファンタジーの世界のお話し。
最近ヘレの性格がちょっと理解できた気がしてきた。
エイフェさんの家は外から見たら質素なものだった。
「いらっしゃい。何のご相談でしょうか?」
入口には女の子が立ってこちらに近づいてきた。
メイドの服を着ているという事は、この家に使われているんだろうか。
質素な感じだと思ったけど、メイドを雇えるくらいには稼いでいるのかもしれない。
「転移の魔法についてお聞きしたいんですけど。」
僕はそう言った。
女の子は、「あ、はい。それでは少々お待ちください。」と言って、奥の部屋に入っていった。
ぐるりと周りを見渡してみると、外から見た印象とはそんなに変わらない。
入口から入ってすぐにリビングルームがあって、奥に一つ扉がある。
リビングにはテーブル一つもない。つまり、僕たちがいる部屋には何もないのだ。
ぼんやりと明るいのは、魔法か何かだろうか?
隣のヘレにちらっと目をやる。
彼女も、家に入ったら何もない部屋がいきなり出てきて面を食らっているんだろう。
上とか下とか、目をきょろきょろ動かして何か無いのかな?といった風の様子だ。
「やっぱりこういう何もない部屋って珍しいの?」
と僕が聞くと、「うん。生活感ないよね?」と返してきた。
そうだよな。
ここで人が生活してるとは思えない場所だ。
と、そんなやり取りをしていたら、奥の部屋から「どうぞ」と男の人の声がした。
エイフェさんだろう。
僕たちはその声に導かれるように、その部屋に入った。
その部屋は特に異様だった。
木の床に、木の壁。
そこに銀色の大きな箱が置いてあった。
その隣にエイフェらしい男と、先ほどの女の子のメイドさんがいる。
その他には何も置いてないのだ。
銀色の箱は、大きさはエイフェと同じくらいで、大体・・・170センチくらいかな?それくらいの大きさはある。
その上の方が青く光っていて、フイーンとかフーンとか不思議な音が鳴っている。
「さて、転移の魔法という事だけど、いったいどこからどこへ行きたいんです?」
そうエイフェは言った。
「あの・・・。変なことを言うんですけど、地球っていうところの日本っていう場所に行きたいんです。出来ますか?」
そう正直に言った。
名前も名乗らずに言ったのを、一瞬考えたけど、先ほどの組合でのやり取りを思い出して、用件を聞かれたらすぐに用件を返す方がいいかもしれないと思いなおした。
「ああ!白崎アキ君かい?」
そのエイフェの言葉に心臓が跳ね上がる。
え?
何で僕の事を知っているの?
じわりと手に汗を感じた。
「あー。ごめん。こっちの手違いでね。君のほかにもう一人女の子を呼んじゃったみたいなんだけど知らないかい?」
何のことを言っているんだろう?
ヘレの方を見ると、首を振っている。
僕も何が何だかわからない。
「わ・・・わかりません。」
そうとだけ答えると、エイフェは「あー、そうか。」と天井を見上げて手を顔にやった。
「いやね?この機械が故障しちゃって、間違って人を転送しちゃったんだよ。」
そう言って、銀の箱をポンポンと叩いた。
「機械・・・?機械ですか?ここにも機械とかあるんですか?」
僕はそう聞いた。
「うん。まぁ、今はこれだけだなぁ。これがこの星にはあっちこっちにあるんだ。」
エイフェは銀色の箱を見ながら言っている。
何だろうソレは。
大きなパソコンみたいだと言ったらそう見えなくもない。
「それは何なんですか?」
ヘレが聞いた。
「これかい?これはこの世界の魔法と呼ばれるものを作り出す機械さ。君たちも魔法は見たかい?」
これがそうなのか?
この星の魔法をこの機械が??
こんなところにあるのに世界中で使われる魔法を作り出しているっていうの??
「ここにあるのに、世界中で使われる魔法を作っているんですか?」
考えてもらちが明かないので、実際に聞いてみた。
「いや、作るって言うとちょっと語弊があるかな。空中にナノマシンを散布してて、その動きをリモート制御しているんだ。」
エイフェはそう言った。
この世界にそんなハイテクノロジーが存在するの???
今まで見たものはどれもこれも、大昔の人々の生活の様だったのに???
「まぁ、これが作られたのは、そもそも惑星開拓が目的でね・・・。」
「じゃあ!魔法を作っているんなら、何でもできるってことですよね!?」
ヘレがエイフェさんの言葉を遮るように、言葉を放った。
「ん?んー。まぁ、大概のことは出来るけど?」
エイフェは戸惑う事はなく、ヘレに向かって言葉を返した。
「じゃあ、ライルさんを生き返らせてください!いいえ、それだけじゃなくて、私の村の男の人たちみんな。私のお父さんを返して!」
ギョッとして僕は彼女を見た。
ヘレが震えてる。
目にも涙を浮かべていた。
「あー。生き返らせることかぁ。」
「できないんですか!?」
エイフェは少し考えている様なポーズをした。
そして口を開いた。
「あのね。お嬢さん・・・。君は服を作ったことはあるかな?」
「・・・・はい。」
「じゃあ聞くけど、袖が破れたら補修は出来る?」
「・・・はい・・・。できます・・・。」
「じゃあ、ビリビリに敗れて服の様相を保っていなかった場合、直すことができる?」
「はい。」
「でもそれってさ。つぎはぎや、何か当て布をしないと出来ないんじゃない?」
そう言われてヘレは黙った。
何のことを言われているのか分からないという感じだ。
「要するにそれと同じことで、人を作り出すことは可能だけど、壊れてしまったモノを元通りに元に戻すということは出来ないんだよ。」
「じゃ・・・。じゃあ、つぎはぎだらけでもいいから、お父さんを・・・。ライルさんを治して・・・。」
ヘレが消え入りそうな声で言う。
「それも難しいなぁ。遺伝子情報からその人と全く同じ人間を作り出すことは可能だけど、機能を停止するくらいの痛手を負った有機物を治すというのは無理なんだ。」
エイフェがそう言うと、シン・・・と部屋が静まり返った。
そして、「ごめんね。」と答えた。
ヘレが大粒の涙を流して、しゃっくりを上げ始めた。
僕はその姿を見て、ゆっくりと背中をさすってあげた。
「うーん。今日は転送はやめておこうか?また明日来るといいよ。」
そう言って、僕に黒い石を渡してきた。
「これを持って、アレギルへって言ってみて。アレギルって場所に転送されるから。そこは自分が寝泊まりしているところだから、一度そこで止まって明日になったらまた話そう。ここに戻るときはヤハトへっていうと帰ってこれるから。ああ、唱えるときは二人とも体のどこかを触っていないと、石を持ってない方は転送されないから気を付けて。」
僕たちは頭を下げて部屋を出た。
リビングルームでアレギルへと唱えた。
いつかの光景と全く同じく、黒い石が光はじめ、辺りが光で包まれた。
僕たちはアレギルというところに飛ばされたのだった。
ーーーーーーーーーーーーー
アレギルは、地名ではないようだ。
僕たちはとある部屋のど真ん中にいる。
そこは普通にこの世界にある家庭の中といった感じで、あのエイフェが持っていた機械の様な不思議なものは一切なかった。
ヘレはあの不思議な転送があってから、僕にしがみついていたが、ひどく落ち込んでいるように見えた。
「大丈夫?」
僕はヘレの背中に手をやり、ゆっくりと撫でて言った。
「・・・。ごめんね。今日帰ることができなくって。」
ヘレはうつむいたままそう言った。
「いや、いいよ。また明日行くから。」
「うん・・・。」
「今日はとりあえず寝ようか?」
「・・・うん。」
外はそろそろ暗くなるはずだけど、この部屋はぼんやりと明るかった。
これもあの機械が作り出した魔法のせいなんだろうか。
ベッドが置いてあるな所だけ暗くなっていたので、きっとそうなのだろう。
僕は彼女をベッドに連れて行ったあと、床に寝そべる。
「ねぇ・・・。一緒に寝ない?」
ヘレがそんな事を言ってきた。
「えっ?」
僕は驚いて彼女を見た。
「お願い。一人で寝たくないの。」
いきなり彼女が小さく見えた。
男の子の様だと思ったヘレは、案外小さかった。
しおらしくなってしまったというか。
僕は「うん。」とだけ言って、彼女が寝るベッドに横になる。
直ぐに彼女がうずくまって僕にすり寄ってきた。
僕は僕で心臓がバクバク言って大変なことになった。
だけど、直ぐに彼女のすすり泣く声で心の臓はおとなしくなっていった。
彼女には、魔法でもしかしたら亡くなった人が生き返るとか思っていたのかもしれない。
その事が彼女の支えだったのかもしれない。
男言葉だったのも、自分自身を強く持っていたせいでそういう風になったのかもしれない。
男のように強く。
だから、女の人を好きになると思い込んでいたとか。
そんな風に思えてきた。
僕は彼女の肩に手をやって、眠くなるまでさすってあげた。
ーーーーーーーーーーーーー
僕たちはいつの間にか眠っていた。
そういえば、最近お風呂に入ってないし、歯も磨いていない。
こっちに来てから、水浴びみたいなことで体をきれいにしたり、沸かした湯で体をふいたりしていた程度はしていた。
でも、あの村を出てから一切そういう事をしていない。
お湯を沸かすための容器も何も無かったのだからしょうがない。
でも、不思議とヘレの匂いは気にならなかった。
だから、僕の方の匂いも彼女には気にならなかったのだろう。
そう思おう。
歯については、ここに来てから栄養価の高いものを食べていなかったから、大丈夫かな?という根拠のない自信はあった。
虫歯だけは嫌だからなぁ。
後でエイフェさんに虫歯を治療する魔法でもかけてもらおうかな?などとぼんやり考えていた。
そんな事を、彼女の肩をさすりながら考えていたら眠っていたようで、起きたら彼女はすでに起きていた。
起きて、洗面所で顔を洗っていた。
「おはよう。」
僕はまだ眠い目をこすって彼女に行った。
「・・・。おはよう・・・。」
まだ機嫌が悪いのかな?と彼女を見ると、恥ずかしそうな顔をして見せたからこっちはびっくりしてしまう。
「あ、あの・・・僕、昨日はごめんね。」
ヘレの口調がまた『僕』に変わっていた。
いつもの調子に戻ったらしい。
僕はハハッと笑った。
「大丈夫大丈夫!気にしなくていいよ。」
「・・・うん。ありがとう。」
「じゃあ、朝ご飯食べたらエイフェさんの所に行こうか。」
「・・・うん。」
しおらしくなってしまったのは変わらないけど、昨日の狼狽した様子は感じられない。
僕たちは軽く朝食をとって、ヤハトのエイフェさんの所に飛んだのだった。
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「やぁ、おはよう。昨日はよく眠れたかい?」
エイフェさんは昨日と変わらず、銀色の機械のそばに立っていた。
「はい。ありがとうございます。エイフェさんはずっとこの部屋にいたんですか?何をしているんですか?」
僕は聞いてみた。
こんな何もないところで一体何をしているんだろう?
「うん。この機械が最近壊れてね。それでメンテナンスをしてるんだ。その故障のせいで、君をこの世界に連れてきちゃったからね。外に止めている宇宙船と行き来してたら、アキ君を探す時間も無くなってしまったね。」
宇宙船もあるのか!?
そういえば、この機械が作られたのも、惑星開拓がどうのこうのっていう話だっけ?
これはどういうSFの話なんだ?
「宇宙船もあるんですか。そんな進んだ文明があるのに、どうしてここはこんな不便な生活なんですか?」
そう聞いた。
「そうだねぇ・・・。そもそも自分はここの人じゃないんだよ。見た目こそここの人に似せているけど、全然違う個体でね。でも、そんな自分たちはここよりも進んだ文明・・・あ、きっとアキ君の所よりもずっと進んでいるんだけど、そんな科学が発展して、医療も発展して。僕たちは寿命というのが無くなったんだ。それの代償として、ひどく体がもろくなってしまってね。僕たちの力ではどうやっても惑星の開拓ができないから、こうしてこの万能の機械を導入して、生物を作ってこの惑星を開拓してもらっているんだ。君達はどんな2足歩行の生き物を見たかな?」
矢継ぎ早に言われて頭がついて行かない。
寿命がない?
生物を作る?
その生物に惑星を開拓させる?
なんのために???
「あの・・・。私たちを襲ったのは、犬の顔をしていました。」
ヘレの口調がまた僕から私になったのは置いといて、そう言われてみたらそうだった。
あの奇妙な顔をしていた者たちも作られた生物だったんだろうか?
「ああ、犬族か。うん。どの個体が優れているのか試しに色々作ってみた結果なんだ。より強い個体がこの惑星を統一してくれたら、その後で僕たちが交渉に入ろうと思っていたんだよ。他にも虫の頭やエルフや魔族といった長寿の人型の者。ドワーフやノーム、シルフといった小型の生き物。機械族というAIを搭載した集団もいるんだよ?見てないかい?」
この世界はそんなにファンタジーな世界だったのか!?
全然知らなかった。
え?っていうか統一した後、交渉に入る?
「何のためにこの星と交渉するんですか?」
僕は頭に浮かんだ疑問そのままをエイフェにぶつけた。
「第一の目標は、自分たちと同じくらいの文明を持った集団がここの銀河団から交流を持ちかけてきたのがきっかけでね。その集団が結構な数の惑星を開拓していたことに成功してて、巨大な組織になっていたんだ。それに対抗しようと動いたのが一つ。そして、この惑星で取れる鉱物などの発掘は結構貴重な資源でね。この星には原油等といったエネルギーを発生させる鉱物は無い代わりに僕たちの近くには無かった鉱物資源があるというのは確認されているんだ。ここはブラックホールも近くて、時間の流れがくるっているからね。その関係上出来てくる鉱物もほかの惑星とは違ったものが出来てくるというのが自分の所の宇宙工学者からの見解でね。あ、この機械のエネルギー動力もブラックホールの収縮の働きを使ったモノなんだ。」
ふええ。
ちんぷんかんぷんだ。
いったいエイフェという人物は・・・いや、彼らの世界の住人はいったいどれだけの科学力を持っているんだろう??
魔法を初めて見た時に、目を疑ったけど、いきなりスケールがでかすぎる話で、話について行こうとするだけでやっとだ。
ヘレに至っては全く理解していないっぽい。
ブラックホールや、惑星というのもわかっていないだろう。
「あの・・・。それで、帰れるんでしょうか・・・。」
僕はやっとそんな言葉を絞り出した。
「ああ、うん。その事だったね。大丈夫。無事に帰れるよ。」
僕はほっと胸をなでおろした。
「おまけに、ここの時間は非常に速いからね。君の世界に帰っても1秒とかそのくらいしか時間は経っていないと思うよ?」
またぎょっとするようなことをエイフェさんは平気で言った。
もう何が何だかわかんないけど、とりあえずエイフェさんの言う通り、何も問題は無いだろう。
これでやっと帰れるんだ。
ふと、ヘレが僕の服をつかんでいるのに気が付いた。
「わた・・・。僕も連れて行ってほしいって言ったらできますか?」
そんな言葉を言った。
彼女が。
僕の。
いや、地球に来たいって?
マジで?
「出来るよ。」
エイフェさんは何でもないような風にそう言った。
「じゃあ、連れて行ってください。私も違う世界っていうのを見てみたい。」
僕は目を白黒させた。
こんな冒険好きだったのかこの子は。
そんなヘレの言葉に、またエイフェは一度口を開いた後、「うーん・・・」と唸った。
「出来るけど、いいのかい?こことアキ君の場所とでは時間の流れが違うんだよ?君が1日過ごしただけで、ここの人たちは何十年も生活したことになるんだよ?君にお母さんがいるんなら、死んでしまっているかもしれない。」
その言葉にヘレはハッとする。
馬が合わなかったといっても、肉親だ。
その肉親の死は・・・。
重いだろう・・・。
「・・・それでも良いです。」
しばらく考えた後、ヘレはそう言った。
「わたしは・・・。・・・外が知りたい。」
絞り出したようにそう言う。
「うん。わかったよ。じゃあアキ君の所に転送するのを許可しよう。あ、だけど君たちは言語圏が違うからね。この石を持っていくといいよ。」
そう言って、ヘレに小さな白い石を渡した。
ん?
今なんて言った?
言語圏が違う?
どういうことだ?
言葉は通じているぞ?
「えっと、言葉は通じているはずなんですけど・・・?言語圏が違うっていうのはどういう事ですか?」
「ああ。そうか。アキ君の世界ではまだ同時通訳の機械っていうのは発明されてないんだっけ?」
「・・・。翻訳ソフトとか、同時通訳とかは聞いたことあります。」
「うん。それのリアルタイムで遅延を発生させないようにコミュニケーションを図れる機器の事なんだけどね。この星のナノマシンにも・・・、うーん。空中で浮遊できるくらい小さくて軽いからフェムトマシンといった方がいいかな?まぁそれらが働いて、どんな人でも円滑なコミュニケーションが取れるようなシステムなんだけどね。まぁ、だけどこの星を開拓し始めたのが5万年前で、文字ができてなかったから文字通訳は搭載されてないやつなんだけどね。コストが安いからそんなのを導入してたんだ。」
またさらっとすごい事を言っている気がする。
「まぁ、さっき言った5万年前っていうのも、この星の時間の流れがくるっているから、僕たちの所からしたらほんの数年しかたってないんだけど。まぁ、それでも数年でも技術は向上するからね。本当は、この魔法システム自体はすぐ壊れて、この惑星の人々が独自の文明や科学を発展させていくというのが狙いだったんだけど・・・。」
その後もエイフェの説明は続いた。
もう、同時通訳とか、この星の時間の流れがほかの星と違うとか、この星にはエルフやら魔族やら。えっと、ドワーフとか昆虫の顔をした人間もいるんだっけか?
そんなファンタジーな世界なのかここは。
僕はもう頭が付いていけなかった。
ヘレはもう既につまらなそうにしている。
考えるのをやめている感じだ。
そりゃそうだろう。
だって僕だってわかんないもの。
「じゃあ、そんなわけで、またその黒い石を握って、『地球の日本へ』って唱えると行けるからね。」
その言葉でハッとする。
「あの・・・。実は僕、地球で同じものを拾ったんです。」
そう言って、かばんから黒い石を出した。
「ああ、それね。さっきも言った通り、この機械はメンテナンスする時にエンジニアを呼ぶためにその黒い石を飛ばすんだよ。それが故障のために関係ない星にまで飛ばしてしまったみたいでね。じゃあ、片方の黒い奴は返してもらおうかな。」
あれ?そんなメンテナンスする時にエンジニアを呼ぶため、黒い石を飛ばすっていう説明はしたっけ?
ま・・・、まぁいいか。
なんかエイフェさんの話に押されて、僕がこの惑星に呼ばれちゃったことも・・・、なんていうか怒る気力も何も起こらなかった。
この1か月近くいろんなことがあったけど。
大事なライルさんという人も亡くしたけど。
ぼくはどこかマヒしてしまったんだろうか。
「わ、わかりました・・・。それでは家に帰ります。」
「ああ、うん。気を付けて。またね」
エイフェさんの「またね」という言葉に少々引っ掛かりを覚えつつ、僕たち2人は地球へと向かったのだった。
ーーーーーーーーーーーーー
ああ・・・
日本だ。
ああ・・・。
でも、ここ家の近くじゃない・・・。
どこだここ・・・。
寒い・・・。
服が原住民のそれ・・・よりもまだましな恰好ではあるけど、それでも薄い。
僕はすぐに近くのコンビニに入った。
すみませんここどこですか?と聞くために。
でも、そのまんま聞くと変に思われるだろう。
「あの・・・。」
「いらっしゃいま・・・せ?」
すごい怪訝な顔をしている。
店員さんはアルバイトの人だろうか。
僕の恰好と、隣のヘレをちらちらと交互に見ている。
「あの・・・、さ、撮影なんですけど。僕はマネージャーに連れられていきなりここに着いたんですよ!それで訳も分からず、コンビニで話を聞いて来いっていう無茶ぶりの番組で!えっと、それで、教えてほしいんですけど、ここってどこでしょう?」
ああ、という表情を店員さんはした。
「ああ、それでしたら。ここは北海道の帯広です。何の番組なんですか?」
「えっと・・・。旅番組で、ファンタジーの世界からやってきた異世界の人間が、この日本で何とかやっていくとかそういう番組です」
自分でも、もう既に何を言っているのか分からなかったけど、店員さんはブフッと笑ってくれたので、つかみはとれたみたいだ。
別につかみ入らなかったんだけども。
「放送日はいつなんですか」
「ああ・・・。えっと、この企画がボツになるかもしれないので、正確な日時はわかんないんですけど、近々・・・だと思います。」
僕もよくそんなウソが出たと自分自身で感心する出来だった。
店員さんは「楽しみにしてますー」と言っていたので、とりあえずしばらくはそういう設定で行こう。
僕はスマホの電源を久々に入れたのだった。
ーーーーーーーーーーーーー
「あ、母さん?えっと、どこから話したらいいか、今北海道の帯広っていう場所にいるんだけど、どうにか帰れないかな?」
「は?」「ええ?」「なんで???」っていう言葉が矢継ぎ早に聞こえてくる。
ええ。
そうでしょうとも。
僕もは?ええ?なんで???って聞きたいです。
あ、そうか。
転送のときに細かい場所指定をしてなかったからそうなったのか。
東京の町田の自宅へは、今日中には帰れないだろう。
とりあえず、何か神隠しみたいにあったとかなんか言ったら、詐欺か何かだと思われて、一瞬焦った。
そこから約10分ほど、本当に白崎アキが帯広にいるっていう事実を伝えると、母さんは迎えに行くという事を言った。
今すぐに飛行機で向かうというので、今日中には着くらしい。
良かった。
そういえば、ヘレはここに来てから一切モノを喋っていない。
「ヘレ・・・?大丈夫?ここが僕の住んでいる世界だけど・・・?」
僕はそう言ってヘレを見る。
ヘレはあっちこっちキョロキョロしていた。
「こ・・・ここがエデ・・・あ、アキ君が住んでいるところなの?」
やっと話した言葉がそれだった。
まぁ、無理もないかもしれない。
車は通るし、コンビニの扉は自動だし、遠く離れた人と会話するし。
うん。
魔法の世界と遜色ない世ところかもしれない。
「ほ・・・翻訳機は間違いなく作動しているようだね。良かった。」
よく見てみると、確かに発音と口の動きがあっていない。
言われるまで気が付かなかったけど、彼女と僕の住んでいる世界が全く違っていることに気づかされた。
「すごいね・・・。ここは・・・。」
近くの5階建てのアパートを眺めてヘレはそう言った。
確かに向こうでは2階以上の建物は見たことなかったから、高い建物は珍しいのかもしれない。
東京に行ったらもっと驚くんだろうな。
あ、その前に飛行機でもっとびっくりするかもしれない。
なんせ、空を飛ぶんだからなぁ。
向こうの世界でも空を飛ぶ魔法くらいあると思うけど、魔法自体、僕が生活していた時にそうそうお目にかかるモノじゃなかったから、空なんて飛んだことないんだろうな。
僕は近くのマクドナルドで時間をつぶすことにした。
その時にきょどってマクドナルドの店員さんにしどろもどろになるヘレに助け舟を出したというところは割愛する。
何か。最近ヘレの事がかわいく思えてきた。
ーーーーーーーーーーーーー
「うわー!!な、なにこれ?え?そら?空飛んでるのこれ?ええ?」
キャーキャー騒ぐヘレに僕は一つ一つ丁寧に説明をする。
「これが雲の上なの・・・?へー・・・。」
ヘレは飛行機の窓から外をじっと見ている。
母さんは5時間ほどかけてきてくれた。
ぐったりして直ぐ飛行機に乗るや、眠ってしまっている。
ヘレの事を説明するのがすごいしんどかったけどまぁそれも割愛しよう。
いや、何か神隠しにあって、そこで出会った子だとか彼女は行くところがないとか、しばらく僕の家においてほしいとか、えっと、そういう番組の撮影なんだとか、いろいろ嘘や本当の事を色々言ったら信じていない風だったけど、とりあえず疲れていたのか「まぁ、いいわ。」とだけ言って僕たち2人を家に連れて行ってくれるっぽい話の流れになった。
エイフェさんと話した時の僕のように、思考は完全に停止していただろう。
そんなファンタジーの世界は大人は理解できないだろう。
あれ?そういえばエイフェさんで思い出したけど、銀河団とか言ってなかったっけ?
ちょっとマクドナルドでスマホをいじっていた時に調べたけど、銀河団って銀河系が固まった団体なんだよね?
っていう事は、地球の存在もエイフェさんたちは知っているんだよね?
という事は、この地球にもエイフェさんたちが交渉してきているってことなのかな?
僕はそんな考えを持ちながら、飛行機の中を過ごしていた。