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87.ラッガナイト城塞防衛戦10 ~ラッガナイトを見下ろせば~

だが、グラリップは部下の言葉にかぶりを振ると、


「いや、確かだ。その証拠に奴らこっちを見てやがるぞ」


そういって厳しい目で城門の上を見つめた。


兵士には辛うじて人影が動いているようにしか見えないが・・・。


「そう・・・なのですか。それにしても信じられません・・・」


唖然あぜんとした表情の部下に、しかしグラリップは落ち着き払って言った。


「だが、何も慌てることはねえさ。別に一度しか矢をかけちゃいけない、何ていう馬鹿な制限があるわけじゃねえんだ。2回、3回と続ければ、そのうち成功するだろうよ」


彼は早速、第2射を撃とうと矢を構える。


とその時、何を思ったのかグラリップは咄嗟に身を地面に投げ出したのである。


すると次の瞬間、彼の後ろにいた部下数名が突如として体を爆散させた!


「なあっ!?」


先ほどからグラリップの隣で会話をしていた男はいきなりの出来事に、ただただ驚きの声を上げる。


「馬鹿野郎! 頭を低くするんだ!!」


男は少将の叫ぶ声を聞いた気がした。


だが、彼が「え?」と言った時には、もうすでに胸元には大きな穴が穿うがたれていたのである。


それは、その男だけではなかった。


彼の後ろに立っていた別の兵士たちも同様に、胸や頭、手足を狂暴な力によって破壊されて行ったのである。


「馬鹿な! これはっ!?」


グラリップは量産される部下たちの死体を目の前にしながらも、ある一点に目が釘付けになっていた。


ビイイィィィィィィィィイインンン・・・。


それは大地に突き立った矢であった。


そう、弓術の神とさえ言われた彼ですら驚く惨劇を作りだした、たった一本の矢である。


・・・

・・


「ミミカの物まねはうまく行ったみたいですよ、先輩方。この調子でバンバンやっちゃいましょう」


シャッテンがネットリとした調子で話していると、ファイヤーボールが彼女に降って来た。


「何ですか、こんなもの。私のシャドウレインで・・・」


そう言うと彼女の影がむくりと立ち上がる。


そして本体をかばう様にファイヤーボールの前に出た。


だが、別の存在がその影の前に滑り込んだのである。


その正体はミミカであった。


まんまと劫火ごうかに焼かれた彼女は、たちまち地面に倒れ込んだ。


そしてたちまちサラサラと黒い粉になって宙を舞う。


もちろん、ミミカ自身は無事だ。皆の後ろで「私の影で! 私の影で!」とシャッテンの口調をマネていた。


「あちゃー、上書きしてもうたな」


ラピッダがおでこを押さえるようにして頭を振ると、シャッテンもおでこを押さえて「アチャー」と言う。


「まあ、しょうがないよ。もう一度撃って来たらまたコピーすればいいさ。ああ、でも後退してるみたいだ。あまり期待はできないかな。さあ、僕たちも仕事を開始することにしよう」


パラの言葉にカーネとエルブも頷いた。


シャドウレインの有用性も証明されたのであります。あとは地味に頑張るしかないのであります。作戦目標は・・・時間稼ぎであります!」


「御意でござる。とりあえず嫌がらせに城門前にまきびしをばら撒くでござる」


彼女たちの言葉にトロペが口を開いた。


「そうですか。それではわたくしはこの辺でお暇させて頂きます。満腹でこれ以上、お役に立てそうにありませんもの。ディナーにはまた参ります」


少女はそう言うと屋上から去って行く。


レナトゥスが口を開いた。


「回復はお任せ下さい。さあ神様の威光に従い、聖戦を戦い抜きましょう!」


彼女の言葉に「ああ、うん・・・」と適当に頷きながら、カーネ連隊の攻防は開始されたのである。


辺りには小雨こさめがぽつりぽつりと降り始めていた。


・・・

・・


「ベルデとスミレ、なかなか戻ってこないんだけど・・・」


ナハトが頭を掻きながらつぶやくと、マロンとクレールが頷いた。


「まさか、さぼりであるか!?」


「特にベルデはのんびり屋」


少女たちの言葉にビブリオテーカは肩をすくめる。


「なわけないしょうが・・・。さっきフェアンに確認したわ。館長とプルミエが出撃したみたいよ。またミグサイドベリカ砦の時みたいに臨時指揮官になってるみたい」


彼女の言葉に、「運わるいなー」と言ってベルタンが笑った。彼女の周囲には球体が巡っている。


「だが、それにしたって少し遅すぎるのう。何なら一度、戻った方が良いのかもしれぬぞ?」


狐耳を生やしたタマモが言った。


だが、ナハトはすぐに首を横に振る。


そして後ろに控える数百人の少女たちを見てから、遠くを見やるようにした。


視線の先にはラッガナイト都市が小さく見える。


低地にあるその街をナハトたちのいる場所からは一望することが出来た。


「僕たちの戦場はここだよ。兵のうち半分近くをここに集めたのもそれが理由さ。完全に過剰戦力だけど・・・念のためだからね。フェアン達もばたばたしてるみたいだし、まあ慌てずに少し待とうか」


彼女がそう言った時、ちょうどスミレがベルデを連れてテレポートして来た。


「待たしちまったみたいで、すまねえ! 城塞に合成獣キメラが侵入したもんだから、兄様あにさまたちを送り届けてたんだ。あと、そのせいでベルデが少しの間、指揮をするハメになっちまってな!」

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