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66.玉座の間にて(中)

「ナルコーゼ、どう思う?」


ナハトが城塞で偶然捕縛したアブニールについて質問すると、白衣の少女は深く頷いた。


玉座の間にいるメンバーはナルコーゼ、ナハト、セージ、そしてアブニールに入れ替わっている。


なお、プルミエはイッシのかたわらに静かに控えていた。


「可能性は大いにありますね。イッシさんから伺った話も踏まえて一つの仮説を思いつきました」


「と言うと?」


イッシの質問にナルコーゼは首を横に振り、


「申し訳ありません。医者として余り予断をもって結論を出したくありません。もう少しだけお待ちいただけないでしょうか。文書にてご報告致しますので」


と答えた。そこにナハトが口を挟む。


「かったいなー、ナルコーゼったら。別に間違ったって、ご主人様は怒ったりしないよ?」


「ちょっ、お姉様、お医者様に向かってその物言いは・・・」


「アブニールもかったい。結局、その毒魔法がどうホムンクルスの人体に影響を与えたのか、ってことでしょ? 僕の体で試してくれていいよ? そうそう死んだりしないんだから」


「フフフ、まあそう言ってくれるのはありがたい。確かにナハトの言うとおり韜晦とうかいしすぎるのもよくないな」


ナルコーゼは笑って答える。


しかし、その様子を見てプルミエが口を挟んだ。


「ですが、今件は我が国の2つ目に重要な課題、ケース2にあたります。慎重を期すくらいが良いでしょう。ナハトもあまり自分をないがしろにし過ぎないように。セージ、気をつけて見てあげてね。その子は戦争は得意だけど他のことはからっきしですから」


「心得ております」


ガーン、と涙目になっているナハトを無視してナルコーゼは言う。


「とにかく、まずはその毒魔法が何かを探ることが重要でしょう」


その言葉にイッシは頷く。


「僕もそう思う。医者と意見が合うとホッとするね。それに当たってはスペシャリストに協力してもらってくれ。彼女たちには僕からも要請を出しておく」


「クレールとマロンの姉妹ですね。それはありがたいです。医療はともかく魔術はよく分かりませんので」


では、早速取り掛かります、という口にして、ナルコーゼらは退室する。


「・・・ところでお姉様、ケース2が何かは分かりましたが、ケース1とは何なのですか?」


玉座の間を出るとすぐにアブニールがナハトに質問した。


ナハトは、何を当然のことを、といった表情で、


「ご主人様の幸せについてさ」


と答えたのである。


・・・

・・


「へえ、合成獣キメラか」


メンバーは入れ替わり、魔将軍のクレールとマロン、それにカーネ連隊長、並びにラピッダ、エルブ、レナトゥス、パラが玉座の間にいた。


「はい、なのである。かなりレベルの低いガラクタばかりだったのであるが、完成体がいれば厄介なのである。いちおう警戒しておいたほうが良いのである」


「同意見。今回遭遇したレベルであれば戦闘能力の高い私たちなら大丈夫。でも支援特化型のたちには厳しい相手」


姉妹の言葉にイッシは頷く。


「専門家がそう言うのなら間違いないだろう。今後、ロウビル公爵軍が合成獣キメラを用いて来ることも念頭に作戦を立てることにしよう。カーネ連隊の方は何か気づいたことはあるか?」


イッシからの質問に、カーネはガバリと立ち上がって敬礼する。


「あ、あ、ええっと、あの、えっとでありますね!!」


うまく舌の回らない少女にイッシは苦笑しながら、


「カーネ、そんなに緊張することはない。君たちが第一発見者を迅速に始末してくれたおかげで敵の反撃が遅れたんだ。その功績を僕はよく知っている。だから、思ったことを素直に言ってくれれば良い」


その優しげな言葉に「へいか~」と尻尾があったらブンブンと振っていそうな表情を見せる。


そしてすぐにキリッっとした顔になると、


「し、失礼したのであります。我々連隊はその怪物・・・コードネーム”マンティコア”と戦うために、臨時で魔法師団と戦闘団カンプグルッペを形成し、この撃滅に当たったであります。マンティコアの強さはさほどでもなかったでありますが、こちらの攻撃をものともしない体力・・・再生能力と、強靭な腕力を有しておりましたので、場合によっては長期戦になっていたものかと思われるのであります」


イッシが「へー」と驚くと、他のメンバーが口下手な隊長をフォローするように、


「せやねん、旦那はん。うちが奴の目玉ほじくり出してもすぐ再生しよったし」


「それがしのクナイではほとんどダメージを与えられなかったでござるな」


「僕が腕をワイヤーで切断しても生えてきたね」


「私が杖で殴ってもまだ生きていました」


そう口々に言った。


「レナトゥスの攻撃で生きてるなら、そりゃ本物だな」


イッシがそんな感想をプルミエに漏らすと、彼女も「そのようです」と頷きつつ、


「それで最終的にはパラが動きを止め、魔法師団の雷撃で葬り去ったと聞いていますが」


と確認した。


それに対してマロンが、


「その通りなのである。再生能力が高いので跡形もなく潰すしか方法がないのである。炎でも雷でも岩でも良いのであるが、ともかく大規模攻撃が必要なのである」


と答えた。姉のクレールが補足するように、


「魔法耐性は皆無。老化、催眠、混乱、毒、そういった状態異常魔法も効果的。ただ、今後現れる合成獣キメラがそうとは限らない」


注意が必要、と言う少女にイッシは「了解した」と応じた。


「ところでカーネ。今回の君たちの働きは遊撃隊としても抜群だった。数日後に始まる敵本体との戦いでも特別任務を与える予定だ。そのつもりでな」


その言葉にカーネは力強く「ハッ、陛下」と言い、敬礼したのである。

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