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61.ラッガナイト城塞占領作戦13 ~ナハト vs アブニール~

「見たか! これ以上私を追ってくればもっと酷い目に合わせるわよ!!」


しかしナハトは四肢を穿うがたれながらもアブニールの言葉に微笑む。


「なっ、なにがおかしい。手足をやられて痛みのあまりおかしくなったか!?」


狼狽する少女にナハトは言った。


「ギフトっていうのはセイラム様が魔神復活のため、僕たちに植え付けた先天的な能力。君のそれはどうやら後天性のようだね。どうやって身につけたんだい?」


「黙れ! 黙れ!」


「ちょっ、どうして怒るのさ!?」


アブニールから更に髪の棘が発射される。


ナハトは縫い止めらた手足を壁ごと引き剥がして跳躍した。


「私を追って来る者は殺す! 私の情報を売る者も殺す!!」


「あっ、なんかトラウマスイッチを押しちゃったかな? 大丈夫だよ、僕は悪いホムンクルスじゃな・・・」


「問答無用!!!」


少女の髪が鎌の形状に変化しナハトへと襲いかかる。


彼女は頭を低くしてそれを紙一重でかわす。


後ろの石造りの壁がやすやすと切り裂かれ崩れ落ちた。


「こしゃくな! 逃げるんじゃない!!」


「無茶言わないでよ!! もう、しょうがないなあ!!」


ナハトは両腕に力を込めた。


漆黒のオーラに包まれた腕は再度振りかざされた大鎌を受け止める。


「なにッ!?」


「いい攻撃だね。見てよ、少し血が出てる」


かすかに皮が破け、青色の液体がにじんでいた。


「この戦争で初めて付けられた傷だよ。まさか同胞からとは思わなかったけどね。ご主人様に何て言われちゃうかなあ・・・」


そう言いながらアブニールの鎌を押し返す。


そのあまりの力に思わず彼女は尻餅をついた。


「あいた!」


「でも、やっと面白くなってきたよ。ちょっと退屈だったんだよね。血がうずいてきちゃったなあ・・・」


ナハトが腕ににじんだ血をめながら言う。


「話は後でゆっくりと聞かせてもらうことにするよ。だから・・・」


彼女は本当にワクワクとした笑顔を見せながら、


「少し楽しませてよ!」


そう言ってアブニールへと突っ込んだのである。


「バカが! そんな単調な攻撃にわたしがッ・・・!!」


少女は髪を前方に集中させて盾のようにする。


しかも一つではない。5層もの盾が彼女を守っていた。


トロルの攻撃にさえ耐える鉄壁の防御。


死の淵より蘇った後、アブニールを生きながらえさせてきた技の一つである。


だが・・・。


バキンッ!!


そんなガラスが割れるような音とともに、1枚目の盾が簡単に砕け散った。


「そ、そんな私の・・・」


アブニールが狼狽している間にもナハトの拳が2枚目へと襲いかかる。


バキバキバキッ!!!


いや、2枚目だけではなかった。彼女の攻撃は2枚目、3枚目、4枚目をも一気に割り砕いたのだ。


「ばっ、馬鹿な。私の鉄壁がこうもやすやすと!?」


「さあ、これで最後だよっ!!」


「くっ、そ、そうはさせるかあああああ!!」


アブニールは奥の手を発動させる。


彼女は後ろ髪を密かに地中へと潜り込ませていたのである。


それは地中を這い、今やナハトの真下にあった。


いつもならば使うことはない秘策中の秘策だ。


だが、目の前の少女は尋常の相手ではないッ!


このままでは殺される!!


「これでも喰らえええええええ!」


「!?」


真下から上に少女の髪が跳ね上がる様子はまるで逆さまのギロチンであった。


彼女はこれで自分を上回る刺客の首を切り落として来たのである。


ナハトもこれは予想していなかった。


さすがに首への一撃はただではすまない。


だから彼女は・・・。


「おりゃああああああああああッ!!」


とっさにオデコに力を込めると、全力で跳ね上がってくるギロチンに、そのまま頭突きをかましたのである。


「はい?」


アブニールがほうけた声を漏らしたのも無理はない。


誰が自分の秘策を頭突きなどで返されると思うだろうか。


だが、その効果は絶大であった。


ギロチンはたちまち打ち砕かれて、ただの髪の毛へと戻って行ったのである。


「そ、そんな」


アブニールがあまりのショックに呻いていると、さらにバキンっ! という音が聞こえた。


「しっ、しまっ・・・」


「本当にこれで最後だああああああ!」


5枚目の盾を打ち砕いたナハトの拳が、今度こそアブニールの顔面に突き刺さった。


・・・

・・


「誠に申し訳ありませんでした」


土下座して謝る彼女にナハトは慌てた様子で言った。


「ちょ、ちょっと、もういいからさ。お願いだから頭を上げてよ・・・」


「でっ、ですがまた顔面パンチは・・・」


その言葉に横に控えていた副官のセージはじっとりとした目でナハトを見やる。


「将軍、一体どのような拷問をされたので?」


「ちっ、違うよ! ねえ、アブニール、あんな事はもうしないから許してよ。ソワンの広域回復の対象に君も入れてもらった。傷も治ったろう?」


「はい。姉様のおっしゃるとおり、こうして無事に傷も癒えました。何とお礼を申し上げ・・・」


「ああ、もう、頼むから普通にしゃべってってば」


ナハトの必死の説得にアブニールは「じゃ、じゃあいつもの言葉遣いに戻すわよ・・・」と少し怯えながら言った。


彼女たちはすでに第2軍の元まで戻って来ていた。


周りには事後処理で忙しく駆け回っている部下たちがいる。


一段落したらイッシの元に移動する手はずなのだ。


その合間にナハトたちはアブニールへの尋問を行うことにしたのである。

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