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40.金獅子サリュート

「報告ご苦労だったな、ビブリオテーカ。それにスミレ、マリゴールド、アマレロも本当に良くやってくれた」


イッシと彼女たちが一緒に寝ているところをプルミエが発見し、怒ったり羨ましがったりした後、ラッガナイト城塞都市への潜入作戦、通称「トワイライト」作戦の報告会となった。


そしてビブリオテーカから、所蔵している戦争計画書の中身について説明がなされたのであった。


それに対するお礼が先ほどのイッシの言葉だったというわけである。


彼女たちはその言葉を受け取ると、顔を見合わせた後、おずおずと頭を差し出してきた。


そしてジーっと期待するような目でイッシを見上げる。


何というか物凄いプレッシャーである。


(もしもこれをしないと、今後2度と頑張ってくれなさそうだな・・・)


とイッシに思わせるほど金色の目をキラキラと輝かせていた。


そのようなわけでイッシは4人の頭をナデナデとする。


10分ぐらいそうしていると満足したのか満面の笑みを浮かべて彼女たちは元の場所へと戻った。


「一緒のベッドで寝たうえにナデナデまでしてもらえるなんて。まあこちらの作戦でも一杯褒めてもらえましたけど・・・」


そう指をくわえて羨ましそうに見ていたプルミエだったが、いい加減首を振ると仕切り直すように言った。


「さて、それではビブリオテーカの説明もありましたので、改めてロウビル公爵軍の戦力をまとめましょう」


彼女は地図を広げると敵戦力をあらわす駒を置き始めた。


「フォルトウーナロッソの遠見によって俯瞰からの地形観測は完了しております。おかげで従来の地図よりもずっと精度の高いものを用意できました。それで現在のラッガナイトの戦力ですが」


そう言いながら様々な形をした駒をラッガナイト城塞都市と記された場所に並べる。


「ビブリオテーカの説明によれば最大1万の兵を集結させる能力があるとのことでした。このうち騎士は200人おり、他は全て傭兵または農民で構成されているようです」


「まあこの世界の文明レベルならそれぐらいだろうな。兵種はどうなっている?」


「はい、マスター」


彼女は頷きながら、まず馬の形をした駒を指さした。


「騎士100名で構成された精強なる騎馬隊がおります。騎馬隊長はロウビル公爵の嫡男サリュート。その強さと華々しい活躍、そして見事な金髪が颯爽となびくさまから「金獅子きんじし」という二つ名が付いているそうです。また、それにあやかり、騎馬隊自体を金獅子軍と言うこともある様です。あと、騎士学校を主席で卒業していますね。性格面ではやや難があり、敵を痛ぶるサディストだそうです。裏では都市の罪なき人々をさらって悍ましい余興を日々繰り広げているという黒い噂もあります。階級は大将で、父のロウビル公爵が元帥です」


「なるほどなあ。残りの兵種はどうだ?」


「はい。弓兵隊が500、またソーサラー部隊が50、残り9000は陸兵となります。あとは輜重しちょう部隊が少々」


そう言いながら、弓、魔法使いの杖、陸兵の剣、そして輜重の馬の形をした駒を次々に指差して行く。


「陸兵部隊を率いているのは誰だ?」


「はい、グラリップという男で階級は少将。勇猛果敢な将と言われています。短気なところがあり猪武者のような人物ということですが、それ故に陸兵たちからは人気があるようです。これは、陸兵のほとんどが傭兵で構成されていることが理由ですね。彼らからしてみれば、机の上でペンを動かしているような男よりも、ともかく敵に突っ込むような蛮勇を好むでしょう」


「ソーサラーの方は?」


「クルオーツという男です。元々帝国の魔術師だったようですが、あまりにも残虐な人体実験を繰り返したため、帝国から犯罪者として追われたようです。紆余曲折の末、公爵に拾われ、ウェハル家に魔術師団を構築するという功績を挙げました。なお、陰湿な者どうし、サリュートとは気があうらしいです」


「すごい国だな。あとは誰か注意すべき人物はいるか?」


「ロウビル公爵自身がもともとかなり腕の立つ人物であったようです。現在の地位は元帥ですが、もともとは大将として陸兵を率いていました。ロウビル公爵領は北部とは言いつつも、西方から首都ラフィアに侵攻しようとすれば、地形上、必ずこのラッガナイト城塞都市を通過することになります。西方は王の目が届きにくく反乱も多い地域であったことから、言わばここは王国の西方鎮守府のごとき役割を果たしてきたと言えるでしょう」


「そういうことか。スミレたちの報告で、どうやらロウビル公爵が只者ではないということだったが、そういった地政学上必要な能力だったということだな。重い税で領民からは蛇蝎のごとく嫌われているようだが、王国との関係上、軍政を維持する必要があるというわけか」


「おっしゃる通りです。なお前線に出ていた頃は身の丈ほどもある剣をかつぎ、鬼神の如き活躍をしていたとのこと。ですが今は元帥として後方で指揮をとるようになっています」


「だいたい分かった。では細かい点を詰めてゆくこととしよう。まず・・・」

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