追いつめられた末の戦闘
レオの目の前に、拳銃がある。
目の前の拳銃を、レオは掴んだ。自らの手首をひねる。
レオに向けられていた拳銃が空を向く。男の手首が折れる音が響いた。
手首を折ったまま手前に引き寄せ、近寄った頭部をレオはブロック塀に叩きつけた。
ブロックが崩れる。別の男が傍にいた。顔の半分を血まみれにした、ナイフを持った男だった。レオにナイフをつきつけ、顔面で床を破壊するはめになった男だ。男の顔に一瞬の恐怖が浮かぶ。レオを恐れているのだ。レオは男の恐れを見逃さず、男の持つナイフを掴んだ。
ナイフを握り潰す。中腰のレオに向かって男の膝が迫る。
膝頭を手のひらでつかみ、指を食い込ませる。
握り潰した。
破壊された膝が血を吹き出し、レオの指の関節から血が噴き出していた。怪我をしたのではない。酷使された筋肉が切れ、内出血に止まらず皮膚を割って飛び出したのだ。
すでに肉体の限界を超えている。レオは男の膝を握り潰し、地面に倒し、頭部を打って気絶させた。
目の前に、まだ二人の男がいた。拳銃とナイフを持つ男達が倒されるのを見ていたからだろう、緊張した顔をしていた。レオは、肉体の強化も限界にきていることを感じていた。まともに動けるのも、一度が限界だろう。
「もう大丈夫、片付いたよ」
「えっ? そうか?」
一人の男が立ち留まった。もう一人が、男の背中を叩いた。
「そんなはずがあるか。しっかりしろ」
「えっ……ああ、そうか」
――やはり、二人同時は無理があるか。
会話に応じた相手の認識を操作することができる。精神操作に対するレオの能力である。会話が成立しない場合には意味がないし、相手が複数いる場合は破られることが多い。だが、少しでも時間を稼ぐことができた。
残る力のすべてを足に込め、地面を蹴った。
宙を舞い、一跳びで間合いを詰める。足に集中していた力を腕に移し、両腕を振るう。二人の男の頭部を捉え、二つの玉のようにぶつけ合わせる。
鈍い音とともに、男達は地面に落ちた。
レオは、倒れる二人の上にゆっくりと降りた。