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死せる少女と魔法の法則  作者: 西玉
死せる少女
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赤炎の魔女 火陀レンカ

 火陀かだレンカは魔法使いである。炎を扱うことを得意とし、赤炎せきえんの魔女の二つ名で知られている。本来、魔法使いの能力に限界はなく、訓練次第で水も空気も扱えるが、産れ持った相性があり、もっとも自分にあった現象の扱いを極めることに専念した方が、効率的だと考えられている。火陀レンカは特に炎と相性が良く、炎はレンカの命令を忠実に聞いてくれた。レンカは炎の扱いのみを極め、得意としていた。水や風を操ってみたいと思ったこともない。何より、生き物を炎で焼いた時の臭いが好きだった。

 雑居ビルの屋上から火陀レンカが見つけた店は、ブティックだった。

 火陀レンカは、穴が空き血がついた服を変えるために、ブティックに立ち寄ったのだ。赤いスーツを選び、下着も買い替えた。試着室で試着後、そのまま服を買い取り、支払いを現金ですませた。レンカは魔法使いである。人の精神に干渉し、支払っていない代金を支払ったと勘違いさせることは簡単だった。しかし、最近では防犯カメラがあり、レジの記録から帳簿と会わない金額の商品がいつ消えたのかわかり、防犯カメラにレンカが写っていれば、無暗に敵を増やすことになる。クレジットカードも所持しており、使い道がわからないほどの大金が口座に入っていたが、クレジットカードを使えば記録が残る。

魔法使いは敵が多い。一般の人間に存在を知られていない代わりに、裏の社会では重宝され、一部の人間には敵視されるのが魔法使いだ。その存在を公に認めている政府は存在せず、政府関係者の中にも敵が多い。いつ、秘密裏に殺そうとするのかわからない。自分がどこに居て何をしているのか、情報を残さない方が面倒は少ない。ある程度のまとまった現金を手元に置いておくのが、人間社会で生きる魔法使いの習慣となっている。

 タクシーを拾い、住所を告げる。運転手は戸惑った。通常タクシーで移動するには、遠すぎる距離だった。レンカは札の束を取りだして見せた。タクシーはスムーズに動きだした。

 タクシーが東京都心部を出たとき、正面からトレーラーが迫ってきた。対向車線を走っていたはずの車が、突然進行方向を変えた。

 まるで、巨大な動物の顔のように、トレーラーがタクシーに襲い掛かってきた。

 後部座席の火陀レンカは逃げることもできず、タクシーは横転してトレーラーに潰された。エアバックは作動したが、あまりにも遅かった。運転手の首から上は失われ、レンカはタクシーと一緒に潰されるところだった。

 全身に力をこめ、タクシーの天井を背中で破り、レンカは道路に飛び出した。タクシーに迫ったトレーラーも横転し、中から人が出てくる様子はなかった。

 だが、レンカの背後には複数の人影が迫っていた。

 武器を持っていた。

 レンカは逃げた。負傷していることは解っていた。武器をもった複数の人間相手では、いかに魔法使いでも部が悪い。レンカは魔法使いとして、精神と肉体の操作以外には、若干の炎を操ることしかできなかった。中級魔法使いが得意とする肉体の操作を完璧に行えるだけで十分超人だが、魔法使いの中ではもっとも能力の低い部類に入る。レンカは逃げようとして、油の臭いに気が付いた。

 トレーラーが破損し、燃料が漏れ出している。レンカは臭いが強い場所に向かって、炎を投げつけた。

 トレーラーに炎が移り、爆音がした。熱い風が心地よかった。

 レンカは走った。魔法使いが全力で走るということは、地面を低空飛行しているというのと同じである。当然足の筋肉は耐えきれずに寸断されるが、同時に修復できるだけの能力を持つのが魔法使いである。

 火陀レンカは追手をまき、再び衣服を買い求めた。


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