表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死せる少女と魔法の法則  作者: 西玉
死せる少女
14/26

邂逅

 氏家レイカの自室は、できる限りの低温状況に保たれていた。五寸釘レオが部屋に入ると、ベッドがあると思われる場所のまわりに天幕が張られていた。分厚いビニール製の幕であり、透明ではないので中の様子は一切見ることができなかったが、そのこと自体が中にいる者の状況を表しているようだった。

 部屋に入り、二人の使用人と目が会った。いかめしい顔つきで睨みつける初老の大男より、無念そうに目を伏せる若い女性の顔つきが、レオに自らの無力を感じさせた。

「お嬢様はどこ?」

「こちらです」

 大男の使用人が、天幕として張られた分厚いビニールを持ち上げた。ビニールがめくり上げられると、驚くほどの冷気が漏れ出てきた。

 五寸釘クルミが、天幕に入る前にレオに視線を送ってきた。一緒に来いという意味だと判断し、レオはクルミに従い、足を踏みだそうとした。

 レオの服の袖が、背後から引かれた。使用人の蛇目スズが、上目づかいで睨んでいた。まるで、レオがレイカを殺した犯人であるかのような視線だった。

 レイカを守れなかった以上、レオが殺したと言われても仕方がない。レオはそう思った。それほどまでに、レイカの安全に気をつけていたのだ。

「どういうつもりなの?」

 女の声とは思えないほど、スズの声は低かった。スズは、レイカの死を知らせてきた。その時は、クルミを止めてほしいと言っていたのだ。クルミとともに来たレオに、失望したと同時に怒りを覚えているのだろう。

「レイカを守りたい」

 レオに言えるのはそれだけだった。それがすべてであり、真実だった。

「手遅れよ」

「そうかもしれないが、最善を尽くします」

 スズが手を離した。

「どうするっていうの? お嬢様はもう……」

「何もできないでしょう。人間にはね」

 スズは何も言わず、レオの顔を見つめた。レオのいう意味がわからなかったのだろう。当然だ。レオはあえて説明せず、立ち尽くすスズに背を向けた。

 分厚いビニールの幕をかき分け、中に入る。

 母クルミの背中越しに、無残な死体が横たわっているのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ