1.再会
どうも。初めまして。神裂 迅雷 と申します。
中二病を発症した勢いで書いてしまったこの作品。それでも自分にとっては思い入れのある初作品なのです。
至らない所だらけですが、どうぞ寛大な心で読んでください。
プロローグ
☆★☆★☆
ニュースや新聞が、『警察機関の権力をREACTの一部機関にも容認』とか、『全国で幼い少女達の誘拐事件が多発』とか、そんな事を大きく取り上げる中、一人の幼い男の子は、独房の中で、そんなニュースに触れる機会さえ無く、ただひたすらに生きる事だけを考えるしかなかった。
幼子一人の殺風景な独房の中にはいつだって暗闇があった。自分の手足を拘束する金属の冷たさもあった。痛みもあった。自分の腹部からドクドクと脈打つたびに流れ出る血の感覚もはっきりとあった。こんな希望さえない苦痛の中でも、生きたい!という強い願いがあった。
でも、もう持たない。このままじゃ殺される。これ以上殺意ある暴力を受け続けたら、僕の体は、細胞は、生きる事を諦めてしまうかも知れない。
光源のない独房の扉が開く。眩しい灯りが部屋に差し込み、幼子は思わず目を細める。
見慣れたシルエット。その手元にはいつも通り刃物が鈍く光っていた。
★☆★☆★
1,再会
全身長袖の黒ジャージに身を包んだ16歳の白髪の少年は、遠い過去の鮮明な記憶から我に返ると、蝉の声と、風が木を揺らす音に鼓膜を振るわされる。車の音を聞く事はこの時代じゃほとんどない。それも当然だ。クリーチャーという怪物が蔓延っている今じゃ、核シェルターよりも強度のある家の中の方が100%安全だ。
そんな時代に俺が外にいる羽目になったのは、どこぞの誰かが「力には相応の責任が伴う」なんて事を口走ってしまったからだ。そのせいで今や多くの未成年者が戦闘の最前線に駆り出されることになった。まぁ確かに誰かがやらなければ、人類の全滅は必至だってことは重々分かっている。とは言うものの未知の敵であるクリーチャーに対してどんなに強力な力を持ってしてでも恐怖を拭う事は不可能に近い。
その上、夏という環境はとにかくコチラのやる気を奪って行く。こうなれば士気以前の問題で、俺の気力は動くのさえ面倒なレベルに達している。早くクーラーの効いた室内に行きたい。それ以外何もしたくない。
少年は、はぁ~、とため息を吐き、ベンチからゆっくりと立ち上がると、行く当てもなく歩き出す。
気温が35度を越える真夏日。陽炎は辺りの景色をねじ曲げてその暑さを物語っている。時折吹く微風さえ暖かく湿っていて、それがまた倦怠感を生み出す。
歩き始めて間も無く、蝉時雨が独占した世界の中を壊すかのように携帯電話の着信音がなる。少年はポケットの中を手で探り、スマートフォンを取り出す。その画面を二度指で叩いて、それを耳に当てる。
「もしもし、撫子か?何かあったのか?」
「はい。商店街に『グール』一体の出現を確認しました。那拓さんは現場に急行し、これを即排除して下さい」
アナウンサーに劣らない聞きやすい声。焦りは窺えない。大した被害は見込まれてないらしい。
それにしても、最近になって町に現れるクリーチャーの量が増えた気がする。空間を操る能力を持った何者かがクリーチャーに協力しているせいで、町の周りに張り巡らされたレーザーの網も意味をなさない。この変な能力者さえいなければ、この町はかなり安全な地域だった。そしたらこんな危険な見回りも、俺の大切な養女も傷つかずに済んだのに…
そのことを考えると怒りと憎悪でいっぱいなのに、この絶え間なく降り注ぐ灼熱の日差しに体力はもっていかれるわ、唯一俺が力を使えない『グール』が相手だわで、体は素直に動いてくれない。
「撫子は行けないのか?商店街ならそっちの方が近いんだし、グール1体なら大して強くないんだ。人間の撫子でも殺れるだろ?」
「こんな脆弱な乙女に行かせるんですか?」
撫子は声を震わせて言う。アナウンサーより演技は上手い。
「そもそも唯のゴキ…虫相手に銃乱射して支給品の弾ほとんど使ったのは何処の誰だ?」
「でも、あれはテ○フォーマー相手だったから仕方ないじゃないです。奴らは速い上に痛覚もないから跡形もなく消さないと、また動き出すかもしれないんですよ?」
「だからってガトリング銃を室内で乱射すんなよ…」
那拓と呼ばれた少年は、その日の事を思い出して呆れ返る。
「風間那拓って人が隣の部屋で遊んでいたのに、叫んでも助けに来てくれませんでした。それでも、私を責めたいんですか?私、いつも一生懸命に皆さんをサポートしているのに…なのに…那拓さんが私を殺したいと思っていたなんて。弟の様に優しく接してきたのに…」
挙げ句の果てには泣き出す。
「別に死ねって言ってる訳じゃないんだけど…ってか、こんなことしてる間にグール増えたらどうすんだよ!」
「時間ロスの責任まで押し付けるんですか?」
「それは俺のせいでいいけど…グールは俺が行くから、撫子はサポート頼む」
「はい…」
携帯の向こうからは未だにグスングスンと泣き声が聞こえてくる。再び液晶をタッチし、少年は携帯をポケットにしまう。
悪戯好きな撫子の事だ。きっと嘘泣きだろうが、何だこのすごい罪悪感…
商店街に着くが、商店街だというのに人の気配はまるでない。一部の店のシャッターは開いている。本来この商店街は、昼間はクリーチャー対策の為にシャッターは締め切りになっている筈だ。悪い予感しかしない。
「「あ゛ぁ゛ぁ゛ー」」
複数聞こえるグールの声。
グールは、悪臭と尖った歯、真っ白な瞳以外で見た目は普通の人と変わりなく、能力のステータスまでも人間と同等だ。グールに噛み付かれた人間もその毒素でグールに変身する。そうやって増殖していく。
確か報告では1体であったのだが…この短時間で、ひい、ふう、みい、よ、いつ、むう、なな、やあ、9体か。基本的に昼間は、住民は建物に籠っている筈なのに、何で感染者がこんなに?考えてる暇はないか。
那拓は腰に装備していた短剣を静かに抜く。グールらは目の前でまばらに並んでいる。那拓は深く呼吸し、肩の力を抜く。
「始めますか!」
那拓は地を強く蹴り、グールの群れに突っ込む。こちらに気づいたグール達は全員そろって那拓の方に体を向ける。
確かグールの弱点の核の位置は頭だよな。
先頭のグールがこちらを振り向いた瞬間、那拓はその眉間に短剣を突き立てる。刺されたグールは破裂し、半透明の白濁とした液体を辺りに飛ばす。だが、その液体はすぐに蒸発する。
「まず1体目!」
間髪入れずに別のグールが隊を成して襲いかかってくる。倒したグールの影にいたグールは口を開き、一気に距離を詰めてくる。
ヤバい!このままだと囲まれるし、短剣だけじゃ1体倒してるうちに他のに殺られる。
那拓は口を開けたグールの顔面に回し蹴りを噛ます。
さすがに銃なし、アビリティも使用不可で、1対8は無理だな…
『結果的に生きてりゃ勝ち!』
前リーダーはいい教訓を残していってくれた。それに従ってここは逃げる!
那拓はすぐさまグールに背を向け走り出す。そこに電話がかかってくる。
撫子のヤツ…やっぱり防犯カメラで監視してたか…。でも今は気にしているところではない。ここで逃げるな、と言われても死ぬだけだ。
那拓はグールを完全に振り切らないように走る。携帯は切れることなく鳴り続ける。
かれこれ10分経った。それでも携帯は未だに鳴り続ける。音に釣られたグールはきちんと8体全員でペースを落とさず追いかけてくる。
最初より随分と距離は離れたが、このまま逃げ続けていれば無限体力のグールに殺されるのがオチだ。仕方無い…電話にでるしかないな。
那拓は嫌そうに電話を耳に当てる。
「…」
「那拓さん、何で電話に出てくれないんですか?」
撫子はまた声を震わせて言う。
「悪いとは思ってるけど、この状況で接近戦はちょっと無理が…」
「はぁー…仕方無いですね。明日には本部から弾薬の支給が来るように手配したので、手持ちの銃だけなら使っていいですよ」
自慢じゃないが、銃撃だけは、俺の現在所属しているREACT日本第7支部の中で一番上手いので、銃と弾さえあればグールは楽勝で勝てる。(とはいえ、戦闘員の一人は刀使い。もう一人は主に攪乱の為にしか銃を使わないし、あとの一人は魔女なんだよな…)
那拓の表情には自然と余裕が現れる。
「全弾使用していいんだよな?」
「はい、とっとと終わらせて下さい」
「了解!」
那拓は元気よく返事をし、電話を切って足を止める。そして、背後を振り向くと同時に懐から銃を取り出す。
ライフル回転を取り入れたこのハンドガンは、特別な弾が必要だが、代わりに中距離でなら貫通力はライフル銃並み。ハンドガンというには少し大きく重いが、中級クリーチャー相手にダメージを与えられる数少ない小型火器だ。
那拓がそんな銃を構えているのもお構いなしに、グールらは那拓に向かって走って来る。那拓は一番近いグールの額に標準を合わせる。そして、リズムよく引き金を引く。銃口が火を吹き、それと同時に6発の銃弾が次々と放たれる。銃弾はグールの額を確実に捉えて、グールの肉体は次々と散逸していく。それで弾は尽きる。
「あと2体!」
那拓は銃を懐に戻し、短剣に持ち変える。蒸発した味方など気にせずにグールは走り続ける。那拓は短剣を取り出すと同時に投げる。それは近い方のグールの額に刺さるが、浅くて核には届かない。
後は体術でやるしかない。プロディジーの俺なら、通常状態でもプロアスリート並みの運動能力は発揮できるから何とかなるはずだ。
遠い方のグールに向かって、今度は那拓から駆け寄る。そして、グッと足に力を込めて地面を蹴り、飛び上がると、グールの腹部を目掛け右足を突き出す。スピードと体重ののった飛び蹴りはグールを2mほど吹っ飛ばし、蹴られたグールは背中から地面に落ちる。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
那拓の背後から、額に短剣の刺さったグールが襲いかかってくる。那拓は、自分の右足を自分の左足の後ろに通して交差させる。そのまま素直に腰を捻って、向き直る回転の勢いをのせた裏拳を短剣の柄に撃つ。短剣はより深くまで刺さり、ついに刃先が核に到達すると、バシャッ!という音を立て、グールは謎の液体と共に激しく飛散する。短剣はそのまま地面に落下する。
「ラス1!」
最後のグールがよろよろと立ち上がる。その間に那拓は、短剣を回収して、グールから更に距離をとる。グールは体勢を整え、走り出す。少し遅れて那拓もグールに向かって駆け出すと同時に、右腕を横に水平に突き出す。そして擦れ違う寸前、水平に伸ばした右腕がグールの首に絡む。那拓は足と腕に力を込め、そのままグールを地面に叩きつける。グールの骨が砕ける音は広範囲に響き渡る。
「止め!っと」
那拓は左足を上に大きく上げ、頭から地面に叩きつけられたグールの額に向かって踵を落とす。破砕。
グールは群れを成すことが脅威であり、少数なら大したことはないんだよな。
そんな下級クリーチャーを倒した那拓は1人、落ち込んでいた。
「いいな…隣で一緒に戦ってくれる仲間が8体もいて…俺、戦闘中はいつも1人だ…」
那拓は思わず独り言を呟くと、携帯をポケットから取り出し、液晶を何回かタッチして耳にあてる。
「状況終了」
那拓の言葉に撫子は深いため息を吐く。
「ようやくですか…ところで、独り言言いながら何を思い詰めていたんですか?」
「火尖と黒夜みたいに俺も相棒欲しいな、と思ってな」
「今更遅いですよ。二人とも、漸く連帯がとれるようになったんですよ。今、あの2人のチームを解散していいことなんかないじゃないですか。どっかの風間さんは、町中の戦闘じゃ本気出す気ない、って公言してますし、あの2人は実力ならREACT全体でも上位の大切な人材なんですから。そんな大切な人材を悪い噂がある人と組ませたくないです」
遠回しに俺と組んだらそいつ死ぬみたいに言うなよ…
「そもそも那拓さんがボッチでいいって言ったんですからね」
「ボッチって言うなよ。俺が孤絶されてるみたいになるだろ?」
「違うんですか?」
撫子の言葉に那拓の顔はひきつる。
「間違ってないけど…そりゃ俺、人殺しだし、あのルシファーの実の子だし…いや、ってか、あのさぁ…弟の様に優しく接してないだろ?それ」
「あんなのは言葉の彩ですから」
電話越しでも撫子が満面の笑みを浮かべている姿が容易に想像できる。
「…何かしたっけ?俺…」
「女の子を泣かせたことも忘れたんですか?だから、年齢=彼女いない歴になるんですよ」
…もう相手にするの止めよう。俺の精神が死んじゃう…。
那拓は、携帯を耳から離し、携帯を切ろうとする。
「後ろですッ!!」
耳から離した携帯から大きな声が鳴る。
「はっ…?」
那拓は首を後ろに捻る。
「嘘だろ…」
全滅させた筈のグールが、1体、口を大きく開き、今にも那拓に噛みつく寸前だった。
「…ッ!」
不意に何かが、那拓の顔の横すれすれのところを通過する。それはグールの顔面に当たると、ぐしゃり!とグールの顔を潰し、グールを勢いよく吹っ飛ばす。グールは何回か転がった後、液化し蒸発する。
那拓は捻った首を元に戻す。そこには少女が一人立っていた。那拓の表情が急に険しくなる。
「何でお前がここに…?」
那拓の中で、その少女に対する罪悪感が溢れ出し、今にも逃げ出したい気持ちで一杯になっていた。那拓は後ろに跳んで少女と距離を取る。
あれから5年近くだぞ?何だって今更…
グールに襲われた時に助けてくれた少女。艶のある金色の髪は腰の上辺りまで伸びていて、瞳はまるでルビーのような紅。顔にはまだあどけなさが残っており、身長は150センチほど。白のノースリーブのワンピースを着ている。
パンチ1発でグールを吹っ飛ばすほどの力といい。容姿といい。アイツとしか考えられない。
那拓は恐る恐る口を開く。
「何でここに居るんだ?アリス…」
アリスと呼ばれた少女は静かに、ゆっくりと口を開く。
「ナタ…?」
懐かしい呼ばれ方。やっぱりアリスだ。
那拓はアリスに睨みを利かせる。
「アリス、何しに来た?」
「私、ここに配属された…」
新しく配属があるなんて聞かされてない。誰か絡んでるとしたら撫子か…
那拓はアリスを睨み続ける。
「何で助けた?」
「友達だから…それに聞きたいが事ある…」
「あの事件についてか?」
アリスはコクッと頷く。
「動機…」
その言葉に那拓はアリスから視線を背ける。
「だから…暴走だって言ったろ。あの日、俺はグールにアビリティ使って、正気に戻った時…二人は死んでた。動機なんか元々ないんだよ」
アリスは首を横に振る。
「嘘つき…」
那拓は、はぁ~と溜め息を吐くと、声を更に冷ややかにする。
「どうせ俺はアリスを裏切った身だもんな。何言っても信じる気ないだろ?どちらかと言うと嘘つきは、お前だ。友達だから助けた?アリスにとったら俺は復讐の対象であって、もう友達でも何でもないし、寧ろ俺みたいなのと友達だった事すら恥だろ?こんなクズの人でなしと一緒に過ごしてた事がアリスにとっては汚点なんだろ?」
「…」
アリスは俯き、何も言葉を発しない。ここぞとばかりに那拓は続ける。
「帰れよ…それとも俺を殺すか?俺にも罪悪感はあるし、今なら抵抗しないでころされてあげるよ。どうせ年齢次第じゃ死刑になる事したんだからさ。それにあの事件の後も平気で暗殺とかしたし、殺る気ならかかって来いよ」
那拓の右目が黒からアメジストのような紫に変色する。それだけで全身に力がみなぎってくる。そして、那拓は、軽くアリスに向けて殺気を放つ。アリスは両手をグッと握りしめ、小刻みに震える。那拓はそんなアリスに更に冷たい視線を送る。
「殺す気もないのかよ…なら、もう俺と口利くな…」
那拓は瞳の色を黒に戻すと、背を向け、未だに通話中であった携帯を耳に当てて歩きだす。即座に撫子が那拓に問いかける。
「いいんですか?あんな風に突き放すような言い方して。那拓さんを助けた時点で、アリスさんに復讐する気がないのは分かってた事じゃないですか」
「だからこそあんな風に言ったんだ」
「全く意図が分からないんですが…」
「あのくらい言わないと、あの優しいアリスの事だし、簡単に俺の事許すだろ?」
「それでいいじゃないですか。アリスさんが那拓さんを許して、親友としての縒りを戻せば、二人にとって最高の結果になるじゃないですか」
「それじゃ駄目なんだ。アリスとは距離をおかなくちゃいけない…」
「何でですか?」
撫子の問いかけに那拓は一瞬動きを止める。
「こっちにも色々事情があるんだよ…ところで撫子、お前、アリスとグルだろ?」
「そッ…そんな訳ないじゃないですか!何を根拠に?」
「撫子。一応、俺らの管轄地域内の監視カメラって最新式の、写った人物がREACTに所属してる場合には、その人物の名前がそっちのディスプレイには出るんだよな?」
「それが何か?」
「アリスはさ、ヴァンパイアと人間との間の子で、実験的に産まれたんだよ。REACTのデータベース上だと『AR1-S』のはずなんだよね」
「…那拓さんがアリスって呼ぶのが聞こえただけですよ…」
「撫子が“あの人AR1-Sじゃないんですか?”とか言わない時点で怪しい。その上、アリスと俺が昔、同じ養親に引き取られたことも知ってるようだし?何より俺にアリスの配属を黙ってたろ」
撫子はため息を吐く。
「ばれてしまったようですね」
那拓は少し驚きを顔にする。
「意外とあっさり認めるんだな。いつもならもっと上手く躱すのに」
「いいんですよ。問題ありませんから。皆さん、プラン2に変更します」
撫子の声の調子が何となく上がった事に那拓は少々不安を覚える。
「プラン2…?皆さんって…?」
「もちろん那拓さんを除く日本第7支部の管轄地域の住人全員です。さあ、那拓さん。覚悟を決めてから周りを見て下さい」
覚悟?
那拓は半信半疑で辺りを見回す。いつの間にか那拓を取り囲むように無数の人々が那拓を取り囲んでいた。那拓はたじろぎながら尋ねる。
「俺に何をしろと?」
「アリスさんの養親が死んだ事件。あの真相をアリスさんに話せばいいだけです」
「その為だけに地域住民全員が俺を囲んでるのか…?」
「そうです。那拓さんが何を隠しているかは知りません。でも、とにかくアリスさんには話してあげて下さい。あのままだとアリスさん…」
「アリスが何だよ?」
ツー、ツー…
「切れてるし…」
再び辺りを見回す。老若男女問わず多くの人が那拓を取り巻く。(子供はいない)
…何が弟みたいに思ってる、だ…俺がこの町の人達に憎まれてる事知ってる癖に…ルシファーに家族を殺されて、俺に復讐しようとしてる奴がほとんどなのに…
那拓は携帯を耳から離し、ポケットにしまうと、那拓を取り巻く人達が一斉に那拓を睨み付ける。民衆がただひたすらにじっと冷たい視線を浴びせていると、那拓はその場に膝を抱えて座り込み、泣き声に近い声で呟く。
「俺にはどうせ存在価値ないし…殺せばいいじゃん…誰からも必要とされてないし…」
そんな中人混みを掻き分けて180センチ程の背丈の少年が現れる。凛々しい顔立ちで、黒く逆立つ短髪と、暗いブラウンの瞳は如何にも日本人らしい。
「お前らやり過ぎ。いくら那拓を追い込むって言っても、自嘲癖持ちに容赦位しろよ。アリスに話す前にコイツ自殺しちゃうぜ?」
那拓は腕の中に埋めてた顔を上げる。
「逆井…」
逆井 昇は那拓に同情するような素振りを見せる。
「那拓、プラン2に関しては発案者は俺じゃないからな!」
「慰め顔で言うのそこかよ…」
那拓は不貞腐れたような口調で言う。
この状況で慰めの言葉よりそれが先か…褒めるとこ見つからないのか…
「俺が発案したのはプラン1、那拓とアリスと二人の話し合いで解決しよう作戦だからな!」
「分かってるって…どうせプラン2は撫子だろ?」
昇は大きく頷く。
「そうだ。だから俺を責めんなよ」
那拓がいい加減にしろよ、と睨みつけるが、昇自身は気づかずに顎に手を当てて考え込む。
「おっ…その手があったか…お前は何かと頑張ってると思うぜ」
「今更遅いよ…それにそれは長所じゃないよな…」
俺ってホントに長所ないのな…
那拓の頭は劣等感で一杯になる。昇は那拓の前で人指し指を立てる。
「それよりも忠告だ。こっちの方がマジで重要。プラン3は、アリスちゃんが考えたんだけど、これはマジで実行に移したくない…」
昇は那拓の両肩に手を置く。
「84%の確率で死人が出る」
「どんな作戦だよ!」
「今ならまだ間に合う。アリスちゃんに那拓の知ってる事全部話してやれ!さもないと二人とも…じゃあ俺はこれで」
そう言うと、昇は素早く振り返り、全速力で駆け出す。
「これでって…ちょっと待てよ!」
那拓も昇を追おうと立ち上がる。それと同時に那拓の周りを取り囲んでいた民衆がいなくなっていることに気が付く。暑い日差しに当てられながらも、那拓の皮膚は微かに逆立っていてた。
那拓は再び右目を明るい紫色にする。
これがいわゆるAS状態ってやつだ。プロディジーの身体的、潜在的能力を存分に引き出している状態で、こうなれば人間とはまるで比べものにならない程のパワーを有する事ができる。
その上、この状態ではアビリティという特殊能力を使える。アビリティというのはプロディジーの持つ能力の事だ。人によって能力に違いがある。例えば、火を発生させて操ったり、空間を裂いたり、物や人を好きな場所に転送するなどがある。本来ならAS状態は両目の色が変わるのだが、俺はまだ完全にアビリティが覚醒していない。
そんな俺の能力は触れた相手の思考と記憶を読み取り、体験するわけだが、思考に関しては触れている間は半ば強制的に読まされるし、記憶を読む事に関しては3秒以上触れておく必要がある。こうやって考えると、毎回ため息が出る。思考を読まされるって事は戦ってる間に相手が家族を思えば、こちらにもその思いが流れ込んでくる。その上で止めをささなくてはならない。記憶に関しては当時、発動対象がどんな光景を目にして体験したかはもちろん、何を思っていたか、さらには感覚まで読み取ることが出来る。つまりは記憶を読み取る度に身体的、精神的痛みを感じる事になる。しかもこの能力は、自分も対象にすることが出来る為に、ふと昔の事を考えるだけで苦痛がぶり返す。要するにデメリットだからけのアビリティ。御陰でストレスばかり溜まって俺の髪は全部白くなっちゃうし…16回も自殺未遂するし…そういや俺タガー持ってるんだった…さっきの件もあるしこれ以上思い耽るな!俺!
プラン3か…住民の退散から察するに、恐らくアリスとの戦闘だよな。防犯カメラを管理する撫子と手を組まれてる以上、逃げることも出来ないし…アリスの奴、来るなら来るで早く来いよ。かれこれ20分近く待たされてるんだけど…
「ナタ…」
不意に上の方から声がすると、同時に金色の髪を靡かせながらアリスが那拓の正面に飛び下りてくる。アリスは始めと変わらない乏しい表情で那拓を見る。
「黒幕だけ教えて…」
「黒幕?何の話だ?」
「聞いたの…ナタのお兄さんに…あの事件には黒幕がいるって…」
あのブラコン兄貴、何やってくれてんだ!問題がその黒幕だってあれほど言っといたのに!
那拓は少しばかり怒りを声に含める。
「聞いたのはそれだけか?」
アリスは首を縦に振る。
それだけならいいか…その黒幕の正体については何も話してないようだし、存在だけなら推理の中でいつしか出てくるだろうしな。でも、これ以上話す訳にはいかない。なんたってその黒幕はアリスの…俺の態度で何かを悟られても困るし、早急に戦闘に持ち込むのが最良。
那拓は両足に力を込めて地を蹴り、アリスに突っ込む。
「ナタがその気なら…」
アリスは、膝を軽く曲げて体勢を少し低く構え、那拓が射程内に入って来ると、右足で蹴り上げを放つ。那拓は体を右に逸らして転がる。那拓が体勢を立て直す間に、アリスは那拓の懐に飛び込む。
「くッ!」
流石、自己強化型アビリティ。速い!
那拓はすぐに後ろに跳ぶが、間に合わない。アリスは、懐に飛び込んだ勢いを右拳にのせ、それを那拓のクロスした腕の中央にぶつける。後方に飛んだ那拓の体のスピードは更に加速する。
後ろにホップして衝撃を流したのに結構なダメージ。やっぱり、自己強化の醍醐味はこの破壊力。一撃でもまともに受けたら、いくらAS状態でも戦闘に支障をきたすレベルの怪我は免れないよな。
那拓は両手足を地面に着いてブレーキをかける。そこにアリスは追い討ちを掛ける。再び那拓の懐に入ったかと思うと、素早い蹴り上げを那拓の顎に食らわせる。アリスは足を素早く引き戻すと、力を込めた蹴りを那拓の腹に繰り出す。那拓の体はまたも後ろに飛ぶ。
…?痛みが思った程ない。アリスの力、昔より弱くなってる気がする…いや、さっきのパンチより明らかに威力が落ちてる。手、抜いてるのか?とはいえ、何発も喰らっていい攻撃じゃないな。仕方ない。俺のアビリティの数少ない利点を使うっきゃない。
すぐに那拓は着地し、口から流れる血液を腕で拭き取る。間を開けずにアリスは那拓に駆け寄る。
「ふー…」
那拓は、大きく息を吐き出すと、開いた左手を前に出し、握った右拳を胸辺りに付けて半身になって構える。アリスは左手でパンチを撃つ。那拓は、自身の左手で、アリスの左手に横から力を加えて軌道を外に逸らす。アリスはすぐに左手を引き、右拳を出す。その右拳をもう一度左手の掌で受け流しつつ、そのままアリスの手首を掴む。
アリスの次の行動を読むんだ…
“回し蹴り…”
那拓はアリスの思考を読み取ると、手を離してアリスとの距離をとる。次の瞬間ブンッという音を立て、アリスの蹴りが空を切る。那拓は先程と同じ構えをとる。アリスは再び那拓に向かって飛び出すと、蹴りの連撃を繰り出す。那拓はその蹴りを次々受け流していく。しばらくしてアリスの蹴りが遅くなったのを見計らい、那拓は一気に距離を詰める。そして右拳をアリスの顔面に向けて放つ。アリスは思わず目を瞑るが、いつまで経ってもアリスの顔面に衝撃は来ない。アリスは、瞑っていた目を開ける。那拓の拳は目の前で止まっていた。
「勝負あり。俺の勝ちだ。アリス、もう俺に関わるな…それともう一つ、俺は」
話し途中の那拓の目の前で、アリスは急に体勢を低くする。
「…?」
次の瞬間、那拓が顎に強大な衝撃を感じると、那拓の体は高く宙に投げ出される。
不意打ちかよっ!
即座にアリスは、垂直に跳んで、那拓の横に着くと、自分の体を縦に一回転させ、那拓の鳩尾に踵を叩き込む。痛みを堪え、那拓は腕でアリスの足首とふくらはぎを押さえるが、高くまで蹴り上げられた那拓の体は重力によりぐんぐん速さが増して行く。
「こんな手口、アリスらしくない…」
「時間が…ない…から…」
“お願いだから、このまま素直にやられて…”
「時間?」
那拓は、自分の体が風を切るのを感じる。
この速度はAS状態でも不味い。
ついに那拓の背中が地面と激突する。同時に何か固いものが砕けた音が辺りに響き渡る。
何とか骨は折れずに済んだけど…
「がっ…」
那拓は唾液を吐くと同時に、あまりの痛みに腕の力はだらんと抜ける。那拓の全身の力が抜けたのを確認すると、アリスは、那拓の腹の上に馬乗りになり、那拓の両腕を押さえつける。
「ゴホッ…ゴホッ…何する気だよ…」
「口が言わないなら頭に聞く…」
アリスは那拓の首に噛みつく。再びアリスの意思が那拓の頭に流れ込むと、那拓の表情は急激に強張る。
「お前のプランって…バカッ!こんな事に命懸けてどうすんだよ!!」
アリスが何も言わずに那拓の血を吸い続けると、那拓の思考が那拓自身に入ってくる。
俺の血を体内に取り込んで、無理矢理アビリティの共鳴をさせる技。昔も何度かやられた。共鳴中だと、俺がアリス相手にアビリティ発動させている間、逆に俺の思考もアリスの方に流れ込む。その上、アリスが、AS状態の俺に3秒以上触れて、記憶を観ることを望めば俺の記憶を観ることができる。
しばらくするとアリスの力は完全に抜け、那拓の上で倒れる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息切れと尋常じゃない汗。那拓は、すぐにアリスを抱えて起き上がる。
「アリス、外にはどのくらいいた!?」
那拓は、アリスを揺すりながら大声を張り上げて怒鳴る。
「1時間…」
「今の日光下の活動制限時間は!」
「夏は……20分…」
「何やってんだよ…こんなことしたら…死んじまうだろ…」
後悔で歯を食いしばる那拓の腕の中で、アリスの呼吸は更に荒くなり、喋ることもままならなくなる。那拓は、アリスの首と膝裏に腕を通して身体をしっかり持つと、足に力を込めて駆け出す。
プラン3…アリスの母親は唯の人だったけど、アリスの父親はヴァンパイアで、そのせいもあってアリスは日光に弱い。日射病になりやすいとかならまだ良いが、アリスは長時間日光に当たると、ヴァンパイアと同じようにアリス自身が焼失する可能性がある。急がないとアリスは死ぬ…計画だと俺の家以外の建物の鍵は閉まっている。唯一、屋内にアリスを入れてやれる俺の家だけ。ここから俺の家まで結構な距離がある。AS状態じゃないと間に合わない。記憶を観るためには最高の作戦だけど…アリスの体には最低の計画だ。
那拓はさらに足を速く動かす。
“ナタの記憶観るけど…いい…?”
アリスとアビリティの共鳴が起こってる今はテレパシーで会話出来る。
“なら一つだけ約束して欲しい”
“うん…分かってる…生きるから…”
☆★☆★☆
ストレスで髪の半分が白くなった小学生は、ボールペンで紙に何かを書くと、隣のベットで寝ている同い年の金髪で赤瞳の少女を起こす。
「ふあぁぁ…ナタ?どうしたの?」
ナタと呼ばれる少年は少女に先程書いた紙を見せる。少女はそれを見て嬉しそうに飛び跳ねる。
「高嶺おばさんのサプライズ誕生日パーティーをするの!?」
少年は頷くと、再び紙に文字を書き、それ少女に渡す。
「ケーキの材料は買ってあるの?じゃあ一緒に作ろっか?私がホイップクリームは作るから、ナタはスポンジ焼いてよ。もう9時だし、早くしないと夜勤から帰って来ちゃうから早速始めよ!」
少女は、得意げに服の袖を捲ると、少年を引っ張って台所に連れて行く。
「おぉー…スポンジ、キレイに焼き上がってるね」
少女は、隣で胸を張る少年の頭を撫でる。少年はふと時計の方に目を向けると、あわてて少女の服を引っ張る。少女も気づいて慌てふためく。時計は10時20分を指していた。
「うわっ!もうこんな時間かー。クリームはもうできてるし、フルーツも切った…だから、後は盛りつけるだけなんだけど…ナタ、一応高嶺さん達を足止めしといてくれない?」
少年はコクンと頷き、走って家の外に出る。少年は家を飛び出すと、さらに速度をあげて駆ける。外は冬眠から目覚めたばかりの虫や、植物の新芽で溢れていて、初春の適度な温度は走るのには持って来いだった。
勢いで家を飛び出して来たけど、アリスに盛り付けを任せてしまったが、あの二人は喜んでくれるだろうか?失敗の仕様がないサラダでさえ、嘔吐する程マズ…じゃなくて凄まじい味にしたアリスだ。思い出したら吐き気が…ケーキ、恐らく芸術作品みたくなってるだろうな…折角、スポンジはキレイに仕上がったのに…これ以上考えると最悪の状況しか思い浮かばない…それでも、アリスを『あそこ』に近づけるよりかは全然いいけど…
少年は走る速度をさらにあげる。
ここだ。高嶺さん達が用のあるって言ってた施設。
少年は、自分の数倍はあろう鉄格子状の門をくぐり、くねくねと曲がった植木の道を抜ける。直後、少年はあまりの光景に愕然とする。
な…何だよ…これ…
パッと見は、古びて所々が黒ずみ、形はまるで病院のような普通の白い建物。しかし、その窓ガラスの一部には赤い液体と、赤黒い個体がへばりついており、辺りには鉄の匂いが漂っていた。
知っている。この匂いが血であることも、あの窓に付いた固形物が肉片であることも、あの建物の中で何が行われてて、何が起こったのかも―
別に血や肉片は見慣れている。今頃そんな事じゃ驚かない。本当の問題はこの地域を保護してるのはREACTの日本本部ということだ。クリーチャーが現れたらすぐに気づくはずだし、そしたら小学生とはいえ僕達プロディジーには告知が来るはずだ…この施設は、クリーチャー研究所。僕の予想通り、サンプルが逃げ出したのなら、感度の高い最新鋭のセンサーが反応しない筈がないんだ。もし反応してないのだとしたら、僕のところに来た昔の養親からの手紙の内容が事実って事になる。なら、この施設での研究の真の目的は―。それなら、まずは証拠を隠滅しないと。さもなければアリスが高嶺さん達と居れなくなる…俺もそれが一番怖い…繋がりを失って、いつか孤独になるのが…だから…何があっても警察が来る前に隠滅を絶対に間に合わせる!
少年は勢いよく施設の中に駆け込む。
うっ…
施設の中はさらに血の匂いが強く漂い、肉片も想像以上の数だった。
自分の血肉は何度も見た。血に関しては毎日流していたし、肉は何度も猟奇な元養親に抉られた。けれど、他人のはまた別だ。何故か自分のモノより生々しく感じられる。
恐怖と吐き気が一気に少年を襲う。
大丈夫…まだ、一人じゃない…僕にはこんな辛い体験も忘れさせてくれる友達も、家族もいるんだから…
少年はよろけながら施設の一階フロアを一通り走り回ると、階段を駆け上がる。スッと後ろに何か気配を感じとる。振り向くが、何もいない。
気にしてる暇はない。
少年はフロア中を駆け回り、扉を一つずつ順番に開けて行く。5番目に開けた部屋にはたくさんの本棚があった。恐らく、資料室。
ここなら誰か隠れてるかも知れない、と思ったんだけどな…まるで人の気配がない。
少年は資料に入って一通り棚の間を見て回る。一番奥まで行ったその時。不意に背後から「あ゛ぁ゛ぁ゛…」という唸り声が聞こえてくる。
クリーチャー!?やっぱり逃げ出してる!
少年は右目を明るみのある紫に変える。少年が振り向くと、傷だらけの人間の形をした何かが立っていた。
多分、ゾンビか、グール。どちらにせよ核は頭の中。成人のプロディジーぐらいの力がなくちゃ、素手で核の破壊は無理。ダメージ蓄積で殺るしかない。
クリーチャーの倒し方は核を破壊するだけではない。核はクリーチャーを一撃で倒す為に狙う一つの弱点に過ぎない(その上、クリーチャーの中には核を破壊しても、一部の能力が使えなくなるだけのモノもいる)。つまり、人や他の動物と同じで多大にダメージを蓄積すれば核を狙わずともクリーチャーは倒せる。要するに、クリーチャー本体にも耐久の限界があるのだ。
死臭を放つクリーチャーの腹を少年が一発蹴ると、敵は2、3歩ほど後退してよろける。
よし!いける!このまま畳み込む!
少年は、正面のクリーチャーに回し蹴りを放つと、勢いそのまま回転して後ろ回し蹴りを加え、さらにジャンプして回し蹴りを顔面に目掛けて撃ち込む。敵は棚に突っ込み、本棚ごと倒れる。不意に少年の後ろから手が伸びて来て少年の口を覆う。
後ろにも…!?
少年は肘で何度も背後の敵を突く。手が緩まったのを確認すると、その手を両手で持ち上げ、体を低くして抜ける。背後振り向き、片足を前に踏み出すと同時に敵の体に両手で掌打をぶち噛ます。敵は壁に強く叩きつけられ、地面に倒れる。突然、激しい頭痛が少年を襲う。
あれ…
意識が遠退く。
コイツ…グールの方か…ヤバい…俺が唯一アビリティを使っちゃいけない相手…意識を持ってかれる…
何処だ…?ここ…
白い壁、一定の間隔ごとにある地面の四角い模様、LEDのライト。これは先程までいた施設の廊下と同じデザイン。
頭が未だにずきずきするな。口の中は苦いし、気持ち悪い。
ボーッとする意識をなんとか振り払い、辺りを見渡す。そして、ある影を発見する。
人だよな?…服装は高嶺さん達だ…
少年は二つの人影に駆け寄った。
★☆★☆★
頭の中で流れていた映像が止まる。
気絶したのか…
状況は悪化の一途をたどっている。アリスの汗は乾燥し、肌もカサカサになって水分がほとんどない。アリスの体が発火するまで時間がない。
俺はまたアリスを見捨てる事になるのか…?
ご精読ありがとうございました。
今回は序盤の序盤ということもあり、所々説明不足な点がございますが、これから徐々に説明してくつもりですので、よろしかったら次回作も読んで下さい。
誤字や脱字がありましたら、申し訳ありませんがご指摘下さい。
また、感想やアドバイス等もいただけると嬉しいです。
(出来れば、批難は具体的にお願いします。辛くても修正していきたいので…)
今回は本当にご精読ありがとうございました。