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年頃乙女は告白する。 ②

 さらに状況が複雑になってしまった。

 幼馴染に彼女を作れと迫られ同時にその幼馴染が自分はサキュバスだと言い張っている。

 いくら目新しい展開が必要だからといってもこれはないだろう。急にファンタジー要素をぶちこんじゃって。絶対売れない。

 心中ではこうして毒を吐けるがそれを目の前でしょぼくれる玲にぶつけるのは憚られる。

 だから逆の言葉を口にする。


「ま、真面目にサキュバスってこと?」


 冷静に顧みれば意味不明な台詞だが、同調してみせたおかげか玲はがばっと顔を上げると、「そう!」と勢いづいた。感情の起伏が激しいやつである。


「サキュバスっていうとあれだろ?妖怪的な」


 実際のイメージとしてはいやらしいお姉さんしか思い浮かばないのだが、それは胸のうちにとどめておく。


「うん。吸血鬼とか、狼男とかと同類のやつ」

「尻尾とか角とかはないものなのか」

「もう大分血が薄れてきてるからね」


 うーむ。漫画の説明を受けている気にしかならない。特に血が薄れてるとかそういうのが。

 しかし尻尾も角もないとなれば信じるのが難しくなってくる。


「その吸血鬼とかも案外そばにいるのか?」

「さぁ…私は知らないけど」

「じゃぁサキュバスならではの超能力とかないのか?」

「血が薄いから…」


 証拠が何も出てこない。俺が女子にメアド聞いたときくらいに微妙な言い訳が次々と出てくる。これでどうして信じろと。これで納得しちゃう人はきっと怪しい壷とかも買う。

 だがここで否定をしてしまえば再び玲がしょげそうな気がする。それは面倒だし、いたちごっこを始めることになってしまう。

 考えてみればもし本当に玲がサキュバスだったとしても特に問題は無い気がしてきた。もちろん玲の頭とかが少し心配にはなるけれど、能力もないし仲間もいないらしい。事実今までも玲と共にいても至って普通に過ごしてきた。急に年をとったり、両親が豚になったり、角砂糖盗む小人を見つけたりとジブリーな展開の経験もない。

 だったらほっとけばいいか。うむ。


「そうか。わかった。玲はサキュバスなのか。へー。すげー。じゃっ」


 納得してしまえばあとは簡単だ。その方針に従って行動すればいい。

 あれかな。中二病で恋がしてみたいとかおもったのかもしれない。明日になれば眼帯とかしてるかもしれない。右腕に包帯も。やばい、そうなると他人のふりをするしかない。


「…なんか信じてない気がするんだけど」


 中々鋭いが、証明することなんて不可能なんだから割り切ってもらうしかない。玲に対するイメージが多少変わったがおそらくはいつもどおりの日常が送れるはずだ。


「超信じてる。信じてるんるんむかちゃっかファイアーなレベル」 


 自分でも呆れるほどに適当だが、これ以上に言いようが無い。


「あ、あと彼女作ってよね」


 一段落ついたと玲のをかわして立ち去ろうとしたが、背中に完全に忘れていた、一番最初に告げられた頼み事を投げつけられた。

 なんかもう幼馴染がサキュバスで俺に彼女を作れと迫ってくる、なんてタイトルのラノベが書けそうだ。あ、でも最近は長文タイトルは廃れてルビが凝ったやつがいいというから…


 小悪魔幼馴染(サキュバスフレンド)哀願(サッドプリーズ)


 …やばいな。俺の英語力が。哀願がサッドプリーズってどうなのよ。


 しかし何故そこまで俺に彼女を作ってほしいのか。

 逆ならばツンデレとして受け入れることが出来るがこれはわからん。

 表情から怪訝に思う俺の心情を読み取ったのか、両手を顔の前で合わせた。


「私のために…お願い!」


 駄目だ、俺の頭が悪いのかもしれないが何一つ理解できない。

 自評だが、中々平凡に生きてきたつもりだ。

 友達が少なかったりはするが特殊なわけではない。ラーメン屋や大学の食堂が専用シートを作るくらいだから俺のような人種の人口は急上昇中なんだろう。

 なのにここへきてこの展開。

 高校生になっても少しも浮いた話が無い俺を神様が哀れんだのかもしれないが、いわゆる青春に対しては諦観めいた感情を抱いているわけで、初詣でも流れ星にも七夕でも彼女が欲しいなんて願い事はしたことがないのに…ここまで無理してラブコメ演出しなくてもいいのに。


 そして神よ、やるならやるでもっと頑張れよ。

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