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天然乙女は翻弄する。 ③

 というわけで。

 うちに女子が来ます。

 取りあえず掃除はしました。

 ベッドの下にも健全な男子的なものはない。


 …どうしよう、緊張してきた。

 虚勢を張って満月後輩の来訪を承諾したのは良いが、全く心の準備ができていない。このままでは満月後輩の勢いに飲み込まれてしまうだろう。そして銀行口座の暗証番号とかを知らぬうちに喋っているに違いない。念のため貯金箱も隠しておくか。

 俺のような純情初心なカモ男子を狙うとは満月後輩もプロだな。だがしかし予測していた「どうせい先輩の家にお邪魔するんだから一緒に帰りましょ!」なんてお誘いも無いから彼女も詰めが甘い。ちょっと校門を通るときにドキドキしてしまったよ。


 服はどうしようか。

 制服のままでいいのか。けど家に帰って少ししてるのに制服のままって言うのもおかしくないか?

 となるとラフなTシャツとか。けどTシャツって如実にセンスが出るし、もしかすると俺のチョイスに満月後輩がドン引きし、さらには俺の感性がずれていることが学校中に広まり…なんてこともあるかもしれない。

 いや、ないか。満月後輩のようなイケてる女子の会話は俺程度の話題では盛り上がらないだろう。サッカー部のイケメンとかじゃないと。

 ふむ。ここはお気に入りのTシャツを着てセンスを前に押し出すのではなくて無難に無地の白Tシャツを着ておけばいいか。石橋は叩きのめして渡るくらいじゃないといけない。

 あとはなんだ。お出しする飲み物とお菓子か。これはお茶とポッキーとかでいいだろう。いくら観察力があって計算高い女子といえどもカルピスとかマカロン出さなかったからと言って減点はしないだろう。それにカルピスなんて濃度に好みがあるから避けるべきである。ちなみに俺は甘ったるい濃いのがよい。「たった一杯のためにこんなにカルピスを使っていいのか!」という背徳感も味わえるからお勧めである。


 これで事前のプランは完璧だ。母親は買い物、父親は仕事、志乃は友達と遊びに行っているからしてからかわれることも防げる。後はイレギュラーが発生しないことを祈るしかないのだが、満月後輩の真意が不明なだけにそれは無理だろう。目標は母親の帰宅までに満月後輩を帰すこと。


 …ん?


 母親が買い物。父親は仕事。んで志乃は外出中。そしてそこに満月後輩が来る。




 …二人きりじゃないか。

 か、完全に失念していた。まさか自分で作り上げた状況が自分を追い詰めることになるなんて。これでは策士溺死だ。だって女の子を家に誰もいないときを指定して招くなんて下心しかないじゃないか。実際の有無とは関係なく満月後輩が怪訝に思ってもおかしくない。

 はっ。そんなときにポッキーなんて出したらポッキーゲームをしたいだなんて思われるかもしれない!

 流石にちょっと古いか。


 なんにせよ。


 満月後輩を警戒させてしまうことには違いない。もし俺への好意がない場合なんか「えっ、なにこの童貞期待しちゃってんの?」とか精神が破壊されそうなほどに毒づかれるかもしれない。となれば必死に下心が無いよ、とアピールしなければならない。下心あって女性を家に招く男も皆そうしたアピールをしそうではあるが。

 よこしまな感情は抱いていないことを分からせるためにはオネエ口調でもするしかないのかもしれない。それかボディビルの雑誌でもおいておくか。


 と、そうして四苦八苦しているうちにも時計の針は進み、俺しかいない家の中にインターホンの音が響いた。瞬時にして心拍数が跳ね上がる。無論宅配便でした、などといったつまらないオチも無く、モニターを覗けば満月後輩の顔がある。

 よし。制限時間は約三十分。時間内に用件を聞き出して対処して真意を探って帰らせなければ。ミッションインポッシブルな気もするがもうやるしかない。脳内では既にでん、でん、でんでんでん、たららーとテーマソングが流れている。


 いざっ。

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