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天然乙女は翻弄する。 ②

 だが家に女子をお招きしたところでハッピーエンドは思い浮かばない。ベッドの下に秘蔵品があったりするわけではないがなんせ対処法がわからない。知恵袋とかに質問を投稿しておいた方がいいかもしれない。無論ベストアンサーが「知るか」になる可能性もあるわけだが。

 そんな事を考えているうちにも通知音が無情にも響く。


『出来れば今度の土曜日に…』


 ぬぉっ。

 ま、まさか俺が返信する前に次の一手を打ってくるなんて。だから俺はアプリを閉じとけって。既読がついちゃうから。

 ふむ。あえて向かい打つというのはどうだろうか?

 中々食い下がってくるし、これでは一度断ったところで後日また懇願される可能性がある。となればいたちごっこなわけだから、この展開を逆手に取る方が有益かもしれない。今の状況では満月後輩の好意の有無どころか俺への接近の意図を解読するヒントすらないのだから。あえて敵を自分の陣地に誘い込み情報を引き出すというのも一手だろう。


 だがしかし。


 それを実行するにあたって親になんて言おう。ただ単に友達が来た、としてしまえば変な勘違いをされるに決まっている。そしてからかわれる。そういうのは恥ずかしいしマジ勘弁。ある程度説得力のある言い訳は用意しておいた方がいいかもしれない。なんかイベントの打ち合わせとかそういうの。


 …駄目だな。そういうことだって今まで一度もしてきたことがない。

 そうだ、平日にすればいいじゃないか。平日ならば家に帰った時には父親は仕事だし母親は大概買い物か友達とお茶をしているか。満月後輩がどの程度長居するつもりなのかはわからないが、流石に一度しか会ったことのない男の部屋に初めて上がるわけだから数時間もくつろげるはずがないだろう。もし俺が女子の部屋に初めて入ろうものならきっと三十分正座しているのが精いっぱい。

 早速満月後輩のペースに飲み込まれないよう自分の要求を提示する。


『金曜日なら』


 今までは卓球並に間を置かずに返球されていたわけだが今回ばかりは画面を見つめて数分待ったところで返事は来なかった。俺が迎撃態勢に出たことで戸惑っているのかもしれない。それともどうしても土曜にするべく言い訳を考えているか。今週の金曜ロードショーがハリーポッターでどうしても見たいんで金曜日は無理です!なんてのが来るかもしれない。

 もはや心理的に有利に立っているのは俺だろう。


 ふむ。暇だしつむつむしようか。


 …新しいゲームでも落とすか。


 駄目だ、RPGって落としてもチュートリアルで飽きる。向いてないな。


 パズルにしようパズル。


 …返事がこない。もう三十分たっちゃったよ。

 これが噂の放置プレイというやつか。そうか、満月後輩はこうして言葉なくして主導権を取り返そうとしているのか。つまり気にして焦らされているようでは俺の負けだ。ここはでんと構えて満月後輩のことなど頭から排除しなければ。


 小説でも読んで没頭しよう。


 …ラノベにするか。


 …漫画にするか。


 ふぅ。集中できない。

 俺のメンタルがしょぼい。こんなことついこないだもあったじゃないか。あの時は結局満月後輩の言辞を待って寝不足になってしまったが、このままでは同じことが。これがテクノロジーが人間の心を支配する時代か。きっとガンダム的な物の開発もそう遠くはないな。そして俺はグラマラスなお姉さんにロボットへの適性があるのは俺しかいないと言われ、最初はいやいやながらも成長して果てには地球とか救っちゃうんだろう。


 駄目だ。妄想を繰り広げたところで返事を待つ俺がいる。メールの返事を待つこんな忠犬のような俺がどうしてモテないんだ。…おふぅ。

 急に携帯が震えて思わず息が変に漏れてしまった。

 やっと返事が。


『すみません!お風呂に入ってて…金曜日でも大丈夫です!』


 そして汗を散らしながら土下座するぽっちゃりしたペンギンのスタンプ。

 お、お風呂か。そりゃーしょうがないなー。お風呂だもんなー。お風呂お風呂。


 …お風呂。


 いや、別に何も想像とかしないですけどね?俺も紳士ですし。

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