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年頃乙女は巻き込まれる。 ④

「ちょ、ちょっといい?」


 持ち込まれた恋愛相談に少々困惑していると笑いの収まった玲が身を割り込む。


「なんでこれにそんなこと相談してるの?」


 俺の心境を代弁しているようではあるが、ちょっとあからさまに驚いているような玲の表情を見ると少し腹が立つ。俺だって頑張ればきっと恋愛相談の一つや二つ。そして本気を出せば週刊誌のコーナーすらまかせられるほどの潜在能力があるに違いない。そしてきっと将来的にはIKKEさんとか呼ばれて美のカリスマっぽくなる。


「そ、それは…」


 満月後輩は一度言葉を区切ると、視線をずらした。その視線が彼女の顔を見つめていた俺のものとぶつかる。そしてそれも一瞬の事で、満月後輩はすぐにまた目をそらした。


「先輩頼りがいがありそうですし」

「ないわよ」


 おい。

 ただでさえ第三社から見た俺の印象というのはよろしくないのにそこまで積極的にネガティブキャンペーンなんてしなくても。そこまでこき落とされてしまえばそのうち人間扱いすらもされなくなるんじゃないだろうか。

 ってよく考えたら今も空気扱いでした!てへっ!


 …ふぅ。涙が出てきそうだ。


「そんなことないですよ」

「幼馴染の私が言うんだから間違いないわよ」


 玲さんって俺の彼女作りを手伝うんでなかったの?妨害しているとしか思えない。もしかしてまだ友達とのランチタイムを妨げられたことを根に持っているのだろうか。今度ケーキでも貢がないといけないかもしれない。


「それに私男の子の知り合いってあんまりいなくて…」

「ふーん」


 頑張る満月後輩に玲は訝しむかのような態度を崩しはしなかったが、納得はしたのか口を閉ざした。そして俺を見るとあごで促す。輪の中心にいるはずなのにこの下っ端感。つまり俺と玲の関係は悪魔なあの娘と生徒Aなわけでラノベにしたらきっと売れる。


「で、俺に具体的に何をしてほしいの?」

「男性の視点からの意見が聞きたくて…だからさっき好みのタイプとか聞いたんです」


 つまりはアドバイザーのようなものになってほしいということか。

 満月後輩の男子が苦手だけど好きになっちゃった友達というのが実在するかどうかは不明だが、今のところ俺が罠にかけられているといったような不穏な色はない。


「だから今後も色々教えてくれますか?」

「そ、そりゃ構わないというか…」


 ちょっとドキっとするような台詞に、煩悩を悟られないようにするためしどろもどろになるがなんとかうなずいた。易々と言質をとられてしまったが顔を綻ばせる満月後輩が可愛いからどうでもいっかーとか思っちゃいそうになる。ほんと男子って単純よねー、どんだけー!せおいなげー!


 玲がいるためか、満月後輩はそれ以上深く相談を掘り下げることは無く、その後は当たり障りの無い会話が続いた。玲と満月後輩の間で。満月後輩は「まんげつこうはい」ではなくて「みつきこうはい」だったとか、フルネームは君津満月で雰囲気だけは回文っぽいだとか。んで俺は黙々としていた。もぐもぐもしていた。

 そして昼休みが終わりに近づき、満月後輩は俺と玲を残して一足先に教室へと戻っていった。


「で?」


 満月後輩の姿が見えなくなると早速玲に詰め寄られた。先ほどまでの笑みは瞬時に消え去り、もう少し頑張れば眉間に十字のしわが浮きそうでもある。


「す、すみませんでした」

「別に謝って欲しいとかそういうわけじゃないんだけど」

「命だけはどうにか!あとお金も!それとできれば無賃労働も…」

「それよりも説明」

「はい」


 満月後輩との短い成り行きを聞かせると、やはり不可解なことが多いのか玲は首をかしげる。


「にしても市慶に恋愛相談だなんてあの子頭がおかしいのかも…」

「否定は出来ないけれども」

「だ、だって、優しい人とかっ、うけるっ」


 おい。そんな再び肩を震わせなくても。それはもういいじゃないですか。もう十分恥ずかしがりましたよ僕。


「で、どうすんの?」

「出来る限りのことはする」


 押し切られてしまっただけのような気もするが、それでも引き受けたのだから。別に女子に頼られてうれしいとかそういうことでは決してない。寝る前に思い出してにやけたりもしない。ほら、俺省エネ主義だし。古典部だし。

 けれどやはり頼られたからには頼れる男を演出したくなってしまうよね。ここまできて実は腑抜けでした、なんてかっこ悪すぎる。かっこつけてる時点でかっこよくないのは分かってはいるがそれでもあがきたい。


 だから。


「でだ。一つ頼みがある」

「ん?」

「女子との会話ってどうすればいいんだっけ?」 

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