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捻くれ男は元に戻れない。 ②

 けれどこれ以上追求しようかという気は起こらない。無駄に好奇心を発揮して険悪になるのは望まない。

 いつか彼女から話してくれるのを待つ、と言うわけではない。おそらくは知らなくていいことだろうから、そう考えると単純に興味も薄れてくる。彼女がサキュバスだろうがそうでなかろうが今の俺にたいした影響はないだろう。

 世界制服でも企んでいるのなら話は違うけれども。そうだとしたら急いで玲に対してゴマをすり太鼓を持ちお世辞を乱舞させる。

 変わらないなんてかっこいいことを言うにはあまりにも軟弱すぎる。

 今回の件を顧みても俺はあまりかっこよくはない。結果論を振りかざせばきちんと任務を遂行したわけだが、例えばあの話し合いの場で正義感に駆られてその場で会長を論破していたらもう拍手喝采、歓声とおひねりが飛び交うなんて華々しい展開を迎えられたかもしれない。

 けれどそれは結局ifの話なわけで意味をなさない。


「んま、ぼちぼちな」

「…出来るだけ早くしてほしいんだけど」

「…頑張ります」


 俺のペースだから随分とのんびりとはするだろうけど。

 そう簡単に人は変わらない。

 経験や環境によって培われた本質がちょっとしたきっかけなどで一転するはずもない。幼馴染がサキュバスだと判明しても。

 偽ることはできる。

 求められるキャラを演じて虚像を作り出して。けどそれだって現実との歪でもうストレス絶大。それにギャップは萌えるというけれど俺が急にちゃら男っぽくなってもきっと皆惹かれない。それどころか俺が引かれるまである。

 そんな精神力が必要なことは俺にはできない。変かは求めない。

 求めないけれど時間の経過とともに自然と、そして強制的に俺の形は変えられていくのだろうからわざわざアクセルを踏み込む必要はない。

 サキュバスの仕組みもわからないが、ゆっくりでいいんじゃないですかね。

 これまでどおり。

 悪魔が襲ってくるようになったわけでも、超能力が使えるようになったわけでもない。なんかでっかい会社の跡継ぎでした、なんてことも。許嫁も出で来ない。

 彼女が作れるかどうかはわからないが、今の環境を崩す必要なんてないだろう。俺が主人公ならば本気出すのも覚醒するのもまだ先だ。ほら、能ある鷹は爪かくすというし。なんなら隠しすぎて持ち腐れるレベル。


「なんなら私が彼女になってあげようか?」

「え?」


 自分の中で結論を出しているとベッドでくつろぐ玲にとんでもないことを言われた。そっぽを向いている彼女の表情は知れないけれど、細かな心情を察しようとする前に気が動転する。

 あれ?これっていわゆる告白かな?捻りのない普通の。


 つ、つまり。


 そういうことか、サキュバス云々は俺の気を引くための虚言であったわけだな。わかる、ラノベとかでよく出てくる、「やっと気づいてくれた…」なんて台詞が待ってるやつだなこれ。いつの間にか鈍感主人公を演じていたなんて。いつの間にか過ぎて今この瞬間どのように立ち回ればいいのかがわからない。普段キャラを演じてない分演技力が枯渇している。こんな時に困るとは…予想外デス。


「ま、自分の恋心は吸収できないから意味ないんだけど。それに市慶に惚れるなんてないし」


 …ですよねー。

 いや、なんとなくわかってました。

 面白いほどに鼓動は高鳴って動揺していたけれど、薄々勘付いてました。あまりにありふれた展開だもの。告白かと思ったらチャックが開いていた、なんて四コマ漫画ばりに定番。

 玲の一挙一動に反応し慌てふためく俺の思考が忙しすぎる。

 ま、俺はこうして勘違いと自責を重ねて日々を過ごしていればいい。


「だから頑張りなさい。これからも協力するから」


 玲さんの協力は生徒会に強制参加させたりとあまりあてにならないのだけど。

 今回は渦中に巻き込まれ、楽しくなかったと言えば小さな嘘になるかもしれない。ぼっちを誇れど心中では人との繋がりを欲しているようなのが俺だから。

 けど同時に疲労感もすごいし、出来るならこのようなことにはもう巻き込まれたくない。と、同時にもう一度このような経験をしたいと思っている自分もいる。友達と遊ぶ約束するのはいいけどいざ当日となると出かけたくなくなるとと同じ原理。多分。検索すればゲシュタルト崩壊みたいにそれっぽい名前がついているに違いない。ってかなんだよゲシュタルトって。無駄にかっこいい。


 ま、そんな頻繁にこういったことも起こらないだろう。

 ならこうして俺働いてる、みたいな感覚に浸りながら過ごすのも悪くはない。

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