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捻くれ男は動き出す。 ④

※4/14 誤字修正

「ちょっと情報提供してくれるだけでいい」


 まだ作戦も何も決まってないとは言いづらい。


「そんな大した情報はないと思うけど」

「部費に関する資料って持ってるか?」

「えぇ」

「ならそれを見せてくれるか。部費の推移が知りたい」


 すると松戸の眉根が少し寄った。


「副会長ならそれくらい知ってるんじゃないの?」


 う゛っ。

 流石は一夜漬けの言い訳、ぼろがありすぎる。目敏い松戸に使うにはまだ粗削りすぎたかもしれない。

 しかし彼女がぼろを探す職人ならば俺は誤魔化す達人だ。ほこたてな感じだがどうにかして見せる。


「それが会長が俺達の動きを察知して弱みになる可能性のある書類を隠してるんだよ。だからこうして俺みたいな下っ端が情報収集に派遣されてるってわけ」

「そこまで会長の勝手が生徒会内では通るものなの?」

「あんまり表沙汰にはしたくないらしいからな。ほら、内申とかに響くらしいから」


 舌先三寸このうえないが、今はこれでしのぐしかない。


「…まぁいいわ。別に隠すようなものでもないし」


 なんとか乗り切ることはできたらしい。やはり彼女相手には感情を揺さぶるような言葉を書けるよりも、メリットデメリットや状況を整理したほうが効果的。種類別ヒロインの攻略法とかだしたらきっと売れるな。啓発本のようで役に立つことはあまりないかもしれないが、内容に沿って行動することで結果はなくとも「俺、変わってる」と感じられるだろう。

 そういった自己満足が必要な社会なんだろう。

 よって俺が今こうして玲の言うとおりに動いているのも自己満足のためであれそれは社会のせいということになるな。まったく社会は。まったくだなもー。仕方のない奴だ。


 松戸は書類をとるために、一度部屋の中へと戻った。

 ついていってもよかったのかもしれないが、室内にいる他の部員は女子のみで、そんなほんわかとした空間に足を踏み入れるのはまるで女子の部屋に入るかのようで憚られる。

 今だって訪問者が珍しいのかこちらを興味深そうに伺っていてこそばゆいのにこれでうっかり近づいて話でもかけられたら免疫ないから好きになっちゃうかもしれん。恋多きチョーローなのね俺。


「はい」


 すぐにかえってきた松戸に二枚の書類を手渡される。一枚はこの前俺が届けたので、もう一枚はどうやら去年のものらしい。

 所詮は高校の部活の部費に関する資料なので大したことは載っていなかった。部活名、主な費用の使い道、そして部費の額くらいだ。そして比べてみれば、今年の部費は去年よりも大分減っている。数万円ならまだやりくりできたかもしれないが、十万円以上だ。部長達が怒るのもわかる。

 しかし会長もよくここまで思い切ったもんだ。急に大幅カットなんて失恋でもしたんだろうか。それにしても長髪の女の子がある日急に短髪にしても良いことはないと思います!個人的には好きじゃないし、違和感しかない。ま、俺の好みとか彼女たちにしてみれば男子にとってのメニューのカロリー表示程度には必要のない情報だろう。


「これ見て顧問とかは何も言わないのか?」

「顧問ね。彼はきっと私たちのことを気にかけてないわよ。サッカー部で忙しそうだし」

「は?」

「入学パンフレットにも載ってたと思うけど、ここの高校は部活の数が多いの自慢みたいなところがあるらしいのよ。数だけが多くても仕方がないのに。だから教師が二つ以上の部活動の顧問を兼任する事が出来るようになってるの。流石に顧問無しで部費を配布するわけにもいかないでしょうからね。でも結局は紙面上だけの話で、私達の顧問はこの部室に入ったことすらないわ。まぁ甲斐甲斐しいサポートなんて端から期待してないのだけれど」


 ほうほう。一を尋ねれば十がかえってくるとはこのことだな。有難いのかもしれないが、情報処理が十倍大変だ。迷惑億兆だな。何倍だよそれ。


 つまり。


 顧問が生徒会に怒鳴り込むようなことがないということは会長は影響力が少なさそうな部活動を選んで部費カットを実行したということだ。き、鬼畜だ。想像以上に手ごわいかもしれない。

 もう誰かに美人局でもやってもらったほうが早いかも。

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