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年頃乙女は押し付ける。 ③

「あの」

「やだ」

「…まだ言ってないのに」


 何とか言葉をさえぎることに成功した。これが阿吽の息というやつかな。

 この流れから想像できることなんて一つだ


「だって部費を元に戻せとか言うつもりだろ?」


 図星のようで、玲はさりげなく俺から視線をそらすが、それをすぐに戻す。


「ほらっ、部費を戻せば松戸ちゃんとか他の女の部長にモテるかも!そうすれば今のところ何もしてくれない市慶の彼女作りにつながるし」


 何もしてないって。生徒会に入ったじゃないですか。今のところ入っただけで出会いも何もないけれど。

 なにそれ聞いてた話と違う。生徒会って出会い系の集まりだって聞いて入ったのに!巨乳ハイスペック会長はどこだよ!

 …改めて考えてみれば内申点のため、という連中よりもよっぽど動機が不純でした。


「そりゃないだろ。松戸怖いし」


 きっと会って数秒でもうどく状態にされちゃう。そんな相手にラブコメを繰り広げようなんて勇気は俺にはあまりない。他称空気超読めない、略してKC、つまりケーシーな俺としては遭遇したらすぐ逃げるまである。

 …ポケットに入るモンスター、つまり手乗りプードル的存在の彼らのネタをつっこんでみたけれどちょっと強引でした。


「口が悪いだけだよ、きっと」


 自信がないのか最後にぼやかしを付け足すが、俺も同じような印象を持っている。

 彼女が意図的にああいった口調を選ぶほどの勇者ならもう少し違う会議の進め方があっただろう。会長の主張の綻びを訴えることには長けていたけれど、それを手に正面衝突するさまは狡猾でもなにもなく、ただ彼女の真っ直ぐな気性を現していたような気がする。

 これで松戸が部費に関してあそこまで頑なだった理由が孤児院のために洋服を作り続けたいから、とかだったら泣いちゃうよ俺。泣いてなけなしのお小遣い寄付しちゃう。


「だからさ、市慶もかっこいいとこ見せて頑張ってくれればいいのになー」


 ジトリと絡む視線をほどくようにして俺は椅子をくるくると回す。回るときによいではないかーと心の中で連呼するのはお約束。


「俺がどうあがいてもかっこよくなんないだろ」

「それもそうだけど…」

「そこは否定しろよ」


 俺に仕事をやらせたいんじゃなかったのかよ。そこはお世辞でいいのに。やる気を出させるの下手すぎるだろ。


「でもいくら市慶がそこまでのイケメンじゃなくてもピンチを救ってくれたら400%くらい美化されるから」


 イケメンになるのに400%美化補正が必要なの俺。それ救いようがないだろ。もし色々都合よく偶然が重なってご都合主義が発動して主人公補正的なのがかかって奇跡がおこり、松戸のハートをキャッチすることができても。

 冷静になってみたら俺の魅力は四分の一なわけでそれこそファストフードの広告と実物のようできっとあれは夢だったんだわ、なんて俺に愛想を尽かすだろう。クレームだってくるかもしれない。そして裁判に発展し、大金を搾り取られる可能性すらある。

 そんなアメリカンなロァヴカメディは嫌だよ俺。


「だからお願い。私は常任生徒会役員だし」


 玲が顔の前で手を合わせる。

 俺も生徒会役員なんだけどなー。


 俺がやらなければ仕事ではないために、言い訳はいくらでも思い浮かんだ。

 そりゃ俺だって思うところはある。けれど一体俺に何の関係があるのだろう。

 部費の削減で被害があるわけでもない。部長連合軍に親しい人物がいたわけでもない。

 なのに生徒会役員という肩書を裏切るような行為をするのはそれこそエゴだとしか思えない。そして自己完結しているならまだしも、満足のために他人に影響を及ぼすそれはとても醜い。

 玲の頼みを受けることによって生じる俺の損得を比べてみればいとも簡単に受理すべきではないという結論に辿り着く。


 だが。

 どうやら俺は天邪鬼らしい。

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