年頃乙女は押し付ける。 ①
結局あの後、結論が出ることもなく会議は幕を閉じた。
そして会長は次の話し合いを翌日に設定したけれど、やはり空席が目立っていた。
松戸は相変わらずの調子で論争を繰り広げたけれど、団体としての勢いが衰えているのは明白で、会長がそこをつつけばあの松戸も言葉を詰まらせた。
そして第三回の際に、部長軍の数人が自ら松戸の発言を抑え、今回の削減の撤回は諦める旨を告げたことによって決着がついた。仲間割れともいえない結果だが、おそらく彼らは長引くだけの会議に望みはないと諦観していた。松戸は良くも悪くもまっすぐすぎたんだろう。
ちなみに山田部長は結局手を振り上げそうになってみんなに取り押さえられてました。
「うーん」
「どうしたんだよ。鬱陶しい」
部長達はしぶしぶながらも引き下がり、生徒会なんて、ほとんどは会長の功績かもしれないが普段の雑務とは違う、敵意を持つ相手との会議を、夢の中に思い描く生徒会らしい仕事を成し遂げたためかなんか盛り上がっていたまであるのに。いやほんと、無人探査機でも着地したのかと思っちゃったよ。
なのにあの日から玲はため息が多い。今も俺の部屋で漫画を手にベッドの上でごろごろしているわけだが、「ふぅ」とか「はぁっ」とか「うーん」だとか色々とうるさい。もしかしてかまってちゃんなの?
でも構ってほしいなら三つ混ぜてのうっふーんが良いと思います。はい。
いや、実際にやられたらちょっと引いちゃうけどね?
「いや別にー」
「…うぜぇ」
誰か玲の、というかこういう面倒くさい系のやつの取扱説明書を持ってきてくれないだろうか。
別にーとか言いながらこっちをちらちらみるのやめてほしいですほんと。ちょっとドキドキしちゃう。これがチラリズムというやつかな。もう少し桃色なのを想像してたんだけど。
「何が不満なんだよ」
「だからなんでもないって。ただ漫画読んでるだけですー」
「こ、こいつ」
なんだろうこれ。ツンツンしてるわけでもないし、可愛くない。
さりげないアピールはやはり他人から見ると煩わしくしかないのか。さりげない帰国子女アピールもこれに含まれる。ちなみにさりげなくないぶりっ子アピールも嫌われる。
にしてもこれは居心地が悪い。
普段なら自分の部屋では気ままにネットサーフィングしたり、ゲームしたりするのだけど、人の目があると思うとやはり気になってしまう。べ、別にいやらしい画像検索したいわけじゃないんだからね!
いや、ほんとにそんなことはしないけどさ。でもラノベのネタバレすら読むのも少し恥ずかしい。
「ならなんでため息ついてるんだよ」
「ついてないし」
耐えられなくなり、おそらくこれは玲の術中にはまるようなことなのだろうが、椅子を回して体ごと玲に向ける。
玲は昔から親と喧嘩をしたりして拗ねたときなどに同じようにして面倒くさくなることはあるが、小さい頃はくすぐって白状させていた。
今は…
ベッドの上に横たわる制服のまま玲はどこか艶めかしい。学校ではないということでいつもよりも派手に着崩されいるから、ちょっと露出が増えてる気がする。こんな寒そうな格好して、おばさん心配。
と、このように脳内に色気のないおばさんを登場させないとちょっと理性が危ない。
身をよじるとそれに合わせて体のラインを表す皺が捻じれ、短いスカートがなんとか頑張っているが見えてはいけないものが見えてしまいそうである。
こ、これがチラリズム一歩手前のジラシズムなのか。動悸が少しおかしい。不整脈かもしれん。
お、落ち着けよ俺。
お、幼馴染だぞ。幼馴染相手に何考えてんだ俺は!おかしいだろ!倫理的に!
-待てよ。
こういった苦悩は姉妹や可愛らしい男、それか生徒と教師のような相容れない立場の相手に対して抱えるものな気がする。いわゆる禁断の恋というやつ。
でも俺の目の前にいるのはただの幼馴染、同じ時間を過ごしてきただけの男と女。法的にもモラル的にも問題は何もないんでないの?逆に定番じゃないか。手を出したところで顰蹙を買うはずもない。
なーんだ。悩んで損したぜ!
…っておい。納得しちゃダメだろ。俺の中の天使もっと頑張れよ。
主人公に妹がいるのかいないのか…すごい悩む。




