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捻くれ男は傍観する。 ⑥

「けど優秀な部活を優遇するのは当たり前だと思うんだ。例えばだけど、スポーツ選手なんかでは優秀な選手により高度な施設やコーチがあてがわれるでしょ?レベルが高いからほっておいても大丈夫、なんてことはない。確かに弱小部にこそ助けが必要なのかもしれない。けれど秀でた部活を冷遇して、そうでない部活を手厚く待遇するのは少し間違っているとは思わないかい?」

「それはそうかもしれませんが、異なった部活の優劣を会長はどのようにして決めているんですか?」

「経験の面でいうと、さっき言った通り物珍しさだけが基準じゃないから同等かな。で、そうなるとやっぱり言い方は悪くなっちゃうかもしれないけど、高校の宣伝、というのもすごく大事になってくると思うんだ」

「宣伝効果なんて定規もないのに…会長は適当に上下を決めてるんですか?そもそもうちの体育会系の部活って大会に参加はしてるけれど、入賞したという話は聞きませんし。早くの段階で敗退してるとすればそれはネガティブな宣伝にもなりかねないじゃないですか。それに服飾部や山岳部のような、あまり他校にないような部活こそ受験生を増やす材料になるんじゃないですか?」

「なるけど、それは部費を減らしても同じじゃない?だったらサッカー部の部費を増やして大会でより高みに進出してもらう方が有意義じゃないかな」

「増やした部費で新しい監督でも雇うわけでもないのに。プロサッカーじゃないんだから費用が増えたところで道具を多く買うくらいじゃないですか。サッカーボールが増えたって技術はあがりませんよ。さっきから上辺の言い訳ばかりですよ」


 うわー言葉数が多い。映画の字幕だったら失格のレベル。

 それにしてもさっきからこの二人の舌戦だ。他の人が入る隙間がない。隣の玲なんてちょと楽しんでる気がする。俺と同じような傍観者にはそういった面々がいくらかいるようで、俺の前の男子生徒二人なんてどっちが勝つかかけようぜーなんてささやいている。


 どっちが勝つか。


 何度も綻びを見つけては突き刺す松戸とぬらりくらりと躱す会長。言葉のラリーというかスマッシュの応酬を聞く限りでは松戸の方が優勢に思えないこともないが、おそらく決着はつかない。そして松戸は負ける。

 今日はきっと下校時間を迎え、タイムアップということで話し合いは幕を閉じるだろう。松戸が会長にとどめをさせるほどの材料を持ち合わせているとは思えないし、会長は自ら大鉈を振るったこの部費縮小をよほどのことがない限り撤回はしないだろう。してしまえば自分の決断を否定することとなるし、妥協するならここまで言い争いを続けてはいないだろう。

 そして今日は進展もなく解散する。

 では第二回はあるのか。

 おそらくあるだろう。


 だが。


 今回と同じだけの数が集まるとは思えない。

 今はおそらくは山田部長に叱咤され半ば強制されるようにしてここにいる部長だっているだろう。発言したのが松戸と山田部長だけであるから明らかに。そして彼らはこの会議の経過を傍観し、ぼんやりとであれ要求が通る可能性が低いことは察したはずだ。ならば発言をしていない、元々積極的ではない部長達は明日も貴重な放課後を費やしてまで同じことを繰り返すことはしないだろう。だから部長軍の数は大きく減る。

 それにくらべ、会長の命令で集う俺達はそうした選択肢がない。無論さぼる連中がいないとも言えないが、欠席率が部長軍より低くなるのは明確だ。それにこちら側の欠席は相手の攻める材料にはならないが、相手側の空席は団体としての弱体化を意味するし、意地悪そうな会長がそこにつっこまないとも思えない。昨日納得してくれた部長さんたちも沢山いるみたいだなー、なんて言うだろう。

 そうして少しずつ彼らの戦力は削がれていく。


 松戸も一人できたらよかったのに。思いのほか頭が切れるわけでもないらしい。クール毒舌キャラなのに。奉仕部のまつどんと呼べるくらいには頭がいいんじゃないかと勝手に勘違いしていた。それにしてもまつどんはないよなー。太鼓の達人が待つことを宣言している画しか思い浮かばない。


 戦争は数というし、三人寄れば文殊の知恵、だから三十人寄ればもうやばい、なんて思いがあったのかもしれないが団結力がない場合は悪手だ。簡単に欠けるし、そこから崩される。

 相手の土俵にあがることなく、ちょっとしたデモとかやった方が効果はあったかもしれない。


 きっと部費は上がらない。そして会長は自己満足に浸り、部長らは収まらない不満を抱えながら今後を過ごすのだろう。

 部長さんたちには申し訳ない気もするが、俺が正義心に駆られて行動を起こすことなんてあるわけがない。そもそもそんなことをするほど力がない。力のない、影響を及ぼさない正義は自己満足の領域から脱出することはないし、より力強い正義によって捻じ伏せられるだけだろう。

 よって俺は俺らしく。ただの傍観者として、こうした出来事を記憶に留めて一人考えを巡らせる。

文字の密度が高くなってしまった…読みにくかったらごめんなさい。

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