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毒舌乙女は登場する。 ③

 生徒会役員選出を今日行ったのには意味があるようで、早速放課後に定例会があると告げられた。

 そ、そんな。今日は家に帰って猫と戯れる予定だったのに。

 ばっくれようとも考えないでもないが、俺の欠席はすぐにばれるだろうし、懲罰を受けかねない。一度引き受けてしまった以上契約と同じようにして責任はあるし、これ以上の面倒事は引き起こしたくない。大体反乱を起こす勇気もない。

 自分を抑えつけてるぶん玲への不満がつもりにつもっているわけだが、彼女は女友達のディフェンスに囲まれていて俺が近づくことを許さない。なんだあの鉄壁は、バスケかよ。でぃーふぇんすっ。

 ま、そもそも校内で俺が玲に話しかけることはあまりない。

 疎遠ということも、幼馴染という事実を隠している、なんてこともないが、なにせ立場が違いすぎる。幼馴染という事実が浸透しているために話しかけたところで「な、なんであいつが流山さんと!」等といったテンプレを経験することはないが、それでも積極的につるむことはない。


「行くか…」


 誰へということもなく小さく呟くと、俺は軽い鞄を手に取り立ち上がった。


 生徒会室は軽音楽部や家庭科部など文化部の部室が多く集う、特別棟の最上階にある。

 敷地の中央に平行に並ぶ旧校舎と新校舎は両端二つの連絡通路でつながれており、上から見ればロの字のようになっているが、この特別棟はそれらの校舎から少し離れた位置に屹立している。新校舎と取ってつけたような屋根のついた廊下でつながれてはいるけれど。

 今までは傍観していただけの部活動に向かう生徒たちの波に交わりながら特別棟に向かう。体育会系の部活はグラウンドや道場、体育館が主な活動場所なために途中で道をそれ、俺の周りは基本大人しそうな生徒達のみになった。おそらくは俺のように押し付けられただけの生徒会役員もいるんだろう。


 特別棟の最上階の一角は、生徒会室、会議室、資料室と並んでいた。

 一瞬戸惑うが、他の生徒に見習い会議室へと入る。

 会議室は一般的なもので、正面の二つならんだ白い長机の奥にスクリーンとプロジェクターが設置されていた。その脇には移動式ホワイトボードもある。あの机には会長、副会長が座るんだろう。

 そして役員用に茶色の長机がコの字に並べられており、それぞれのパイプ椅子の背中には2-Aなどとクラスがプリントされたシールが貼られている。どうやら座る場所は定められているらしい。会長席に近づくにつれ年数が上がってゆく。

 これは席選びで友達同士が集まったり、仲間はずれができたりすることへの対策なのかもしれない。まるで白雪姫ばかりのクラスや皆が一位の徒競走のような斜め上な解決法だ。そのうち公平性を極めるばかりに受験はあみだクジになるかもしれない。となると超高校級の幸運の持ち主の独壇場だね。


 2-Cは…。あった。


 窓側の列の中央あたりに位置するパイプ椅子に腰を下ろす。

 特に何をするでもなく待っていると、五分ほどした頃には俺の両隣を含めた席がほとんど埋まった。

 この高校は支給されるネクタイ、蝶ネクタイのストライプの色で学年が分かるわけだが、やはり入学してすぐに生徒会に入る生徒は少ないのか一年生は末席に数人しかいない。二年各クラスから集めてようやくそれらしい人数が集る。


「あのさ、これはどういうことでしょう?」


 クラスごとに座らせるということは、必然的に自ら生徒会役員となった玲も俺の隣にいるわけで。済ました横顔に文句を投げつける。


「どうもこうも、きっかけよきっかけ」


 視線だけを俺へとずらし、にひりと笑う玲はやっぱりサキュバス、つまり悪魔なんだなと思いました。

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