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年頃乙女は説明する。 ①

 久しぶりに玲の部屋に入った。最後に入ったのは小学生のころだったか。

 変な発言があったせいで多少心配していたのだが、部屋には謎の魔方陣もなかったし、壁にお札が貼られているなんてことも無かった。一般的な女子の部屋だと思う。あちらこちらにハートを模した小物があったり、あのわが県誇るあのテーマパーク、ディズニューランドのグッズがあったりする。

 ちなみにディズニューランドはThis is new landの略称なわけだが、TINL派とできのこかたけのこか、マクドかマックかというほどに醜い戦いが繰り広げられていると聞く。あとあのマレーバクはどうやらディズニューのキャラクターらしい。枕代わりなのかベッドの上に横たわる中々のサイズのマレーバクにディズニューのロゴが刺繍されている。

 女子の部屋に入る、なんて一大イベントのようでもあるが、胸が高鳴るとそういったうぶな感情は湧き上がらなかった。あの告白のインパクトが強すぎたせいかもしれない。

 玲も玲でお、男の子が私の部屋に!なんて恥ずかしさは無いようで、鞄を放り投げると、床に放ってあったハート型のクッションに腰を下ろした。そしてベッドの上からマレーバクを引きずると抱え込む。

 俺も玲に習って床に座る。


「さてとだな」


 俺がここにいる理由は無論遊びではなく、先ほどの件を整理するためだ。

 普段はからっと、あっさりとしている玲が今日に限りしつこかったのが気になった。ちなみに今の文の玲を肉に変えるとグルメブログの一文っぽくなる。


「まず俺の理解していることを言うと、お前はサキュバスで、尚且つ俺に彼女を作って欲しい」


 まとまり無いことこの上ないが、玲はこくりと頷いた。


「で、まぁお前がサキュバスかどうかはおいといてだな、まず理由が知りたい」


 俺の台詞の前半にはちょっとむっとしたようだか、玲は説明を始める。自分が突飛なことをいっている自覚があるのかもしれない。


「知ってるかもだけど、サキュバスって…その…」


 既にすべてを打ち明ける決心はしているのだろうけれど、もにょもにょと口の中で言葉を転がすさまを見れば何が言いたいのかはわかる。


「エッチだな」

「ち、違うし!」


 違った。健全男子の勘違いでした。お恥ずかしい。


「えっと…せ、精気を吸収するでしょ?」


 そのプロセスがエッチっぽいのだけど。主に漫画とかでは。

 しかし漫画と現実が違うなんてことは普通にある。戦国を舞台にしたゲームで歴史が学べないのと同じように(千利休は二重人格ではないだろうし)、創作物から未知の生物の生態を知ろうとしても無駄なことだろう。


「で、私も一応サキュバスなわけだから…やっぱり精気を吸収しなきゃで…」


 それは分かるが、そこでふと疑問が浮かぶ。


「今までも精気を摂取してたのか?」


 これまた漫画からのイメージだが吸血鬼の冷蔵庫には血液がストックされているのと似た感じかもしれない。血液と違って質量がなさそうな精気の保存方法は不明だが。

 それと幼馴染ではあるが隣で精気を吸っている場面には遭遇したことが無い。無論本人だっておおっぴろげにやることは無いと思うが、幼いのにそこまでの分別はあったのだろうか。

 単純な質問だったはずだが、玲は少々時間を費やしてから返答する。


「え、えっと。その、ほら、私は血が薄いからしないけど、普通のサキュバスって異性を誘惑するでしょ?でも小さいころはそんなことしないじゃない。だから小さいときは母親にわけでもらうんだけど。でも私くらいの年になると自分でとる必要があるの」


 なるほど。筋が通っている。

 そりゃ幼稚園児に誘惑されたところで可愛いとしか思わない。逆に誘惑されてしまったら逮捕されるまである。まさか幼い頃の方が怖いなんて…サキュバス侮れない。

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