Level45.5:「ティア=ブレイディ=ドロップディスト」
少女は、この世界に存在していた。
正しくは、何も無い暗闇という世界に、存在していた。
暗闇の中、少女は願った。
光を求め、少女はただひたすらに願った。
やがて、小さな……本当に小さな光を見つけた。
少女はその光に向かって、手を伸ばした。
少女の手がその光に触れた時、世界が、生まれた。
『辺境世界レイトノーフ』
少女によって名付けられたその世界は、水と緑に覆われた、優しい世界だった。しかし同時に、人はおろか生命一つ存在しない哀しい世界だった。
村を創り……街を創り……都を創り……それでも生命は一つとして生まれなかった。
やがて少女は悟った。生命が自然に誕生することは……失われた命が再生することは決して有り得ないということを。
だから少女は、願った。
誰かと話したかった少女は、強く強く、願った。
そして少女はある時、消えかけている儚い命があることに気が付いた。
少女はその魂に優しく語りかけ、世界へと招き入れた。
哀しみを忘れさせるため、新しい一つの生命として、世界へと招き入れた。
やがて一つ、また一つと生命が宿り、世界は少女の望んでいた世界へと姿を変えた。
少女は嬉しかった。また誰かと繋がれることが、ただひたすらに、嬉しかった。
しかしそんなある時、いつものように世界に宿ろうとしている生命に、少女は絶望……もしくは安堵した。
その生命は、少女がよく知る……少女の大好きな人物だったから。
少女はまた願った。
願って願って、生命を、時間軸を、世界そのものを歪ませようとした。
しかし、少女の願いは届かなかった。
……否。途中で少女は少しだけ願ってしまった。
『この世界が、永遠のものになればいい』と。
中途半端に歪んだ結果、出入口が崩壊し、世界が、閉じた。
誰一人としてそれを知る由は無かったが、少女はただ一人己を責めた。己を痛めつけた。己を呪った。
そして少女は、その身を隠した。
いつか誰かが……願わくば愛しい人が自分を壊してくれるように、その姿を世界の隅へと隠した。自らが最初に創造した地……《最果ての洞窟》と名付けたその場所に、己の身体を封印した。
ティア=ブレイディ=ドロップディストは、今も尚、世界の片隅で眠り続けている。




