Level.15.5:「アカツキ カグラ」
私は、いつも1人だった。
両親は2人とも闇の業界の人間で、幼い頃はそれこそ虐待・育児放棄を当たり前のように受けていた。
必然的に他人を寄せ付けない性格へと育っていった私には友達など出来るはずも無かった。それどころか、給食費の滞納から私への給食配給は無くなり、やがて私は盗みを繰り返すようになっていった。両親の血を引いているからなのか、不思議とバレることは無かった。
だが小6の冬。私はついに盗みの現場を目撃されてしまった。育児休暇で休みになった担任の代わりとして、赴任してきたばかりの先生によって。
警察に通報される―。私はそう思った。しかし"彼女"は、私と一緒に私が盗みを働いた店に行き、深々と頭を下げてくれた。それどころか―
「ウチに、来るかい?」
私はその初老の女性の言葉に深々と頷き、手を握った。その手は、私が初めて"暖かい"と感じたものだった。
それから私は彼女に、自分のこと、両親のことについて話した。すると彼女は私を抱き締め、涙を流してくれた。
そして私はあの日から、その人の家で暮らし始めた。
叱られたり、褒められたり。そんな親子のような関係性が、私はとても心地よかった。
やがて彼女が起こした裁判により、私の実の両親の親権は剥奪され、私は正式に彼女の"娘"となった。
中学校に入ると、生まれて初めての友達も出来た。友達と食べる給食は、彼女の料理の次に美味しかった。学校生活も家での生活も楽しく、生きる意味を見出だせたような気がした。
だが、あの日―私の人としての人生は、呆気なく終わりを告げた。
学校から帰ってきた私を待っていたのは、変わり果てた彼女の姿だった。
全身から夥しい量の血が流れ、虚ろな目で虚空を見つめていた彼女。
原因は―刃物での自殺とされた。
その部屋のロックが完璧だったこと。近くの防犯カメラに誰も映っていなかったということ。そして、私を育てるのが疲れたから、との理由で。
私はそれからすぐ、重度のうつ病になった。通っていた学校も辞め、1人彼女と暮らした家に引きこもり続けた。
そして彼女の死から半年後―私は死を選んだ。天井にロープをくくりつけて、垂れ下がった先をわっかにした。そして、私のことを産んだ両親へのありったけの呪詛と、私という人間の必要の無さを散々綴った遺書を残し、輪に首を通した。
息が―苦しい。彼女が死んだ時も、こんな気持ちだったのだろうか?
「ーーーーー、ーーーーー」
誰のものかも分からない声を最後に、私の意識は途絶えた。
そして私は―この世界にやってきた。レベル20の……暗殺者として。
最初に浮かんできたのは、"母親"の記憶。だが私は、彼女の名前を思い出すことが出来なかった。
そんな私の下に、何処からかある情報が入った。
『聞いたことも無いような物の名前を話す、黒コートの男がいるらしい』と。
私は闘技場の大会などで自分を鍛えながら、その男についての情報を探った。
そしてある時。私の耳に、1人の少年の名前が伝わってきた。
私は1人、その少年の名前を呟いた。
「折原和也。レベル……1」